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未来のために台所から出来る事 ~サステナキッチンリテラシーを高めよう~

「こんな自分にできることなんてあるんだろうか?」と自問する日々。親の介護を理由に学校現場を去ってから3年以上が経つ。介護するはずだった親は他界し、子どもたちは巣立ち、夫は職場近くに部屋を借り、平日はほとんど家にいない。かつては、家庭科講師として多忙な日々を過ごし、自分の時間を心底欲していた。それが今では自由な時間を持て余していた。

そんな時に目にしたのが「食文化デザインコース新設」の広告だった。オシャレで素敵なキッチンの写真に惹かれ、還暦を迎えた春、私は芸術大学への編入学を決意した。オンライン講座中心の学びは、教師として生徒に課題を出していた自分が、学生として課題に取り組む立場になり、その難しさを痛感する日々だった。

しかし、学生生活を送る中で最も強く感じたのは、食に関する問題の深刻さだった。ジャック・アタリの『食の歴史』を参考文献として読み進めた際、胸に押し寄せる絶望感を覚えた。それまで教壇で生徒に教えていた食生活の授業が、いかに表面的で、本質から遠いものだったかを痛感したからだ。

そんな折、『進化思考』という本を通じて知り合った仲間と協働ワークに取り組む機会があった。テーマは「年金」。その中で、年金生活に関わる食料問題や農業の後継者不足等がよりリアルに感じられるようになり、退職後世代が社会に貢献できることはたくさんあり、そのためには時代に応じたフードリテラシーを個々で高めることが必要だと気づかされた。

生成AIによる食料や農業の後継者不足問題のイメージ

個人ができることは一見、些細なことに思えるが、年金に関するワークや食文化デザインの学びを通じて、台所から未来に繋がる多くの可能性を感じた。台所で扱う「食」は、体調管理や健康維持、家族や友人との絆、家計管理といった家庭内のことだけではない。食材やサービスの選択が社会全体に影響を与え、環境問題やSDGs、サスティナブルな社会の実現といった大きなテーマも、台所から始められる。

生成AIによるサステナキッチン

だからこそ、台所での持続可能な社会の実現に向けた知識やスキルの習得と実践、すなわちサステナキッチンリテラシーを高めることが、未来を変える一歩だと感じている。このリテラシーを共に学び、実践する場をつくること。そして、次世代に少しでもウェルビーイングな未来を繋げること。それが私にできる、未来のためのアクションだと思っている。