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退職後の社会人大学生活の振り返り「逃げとAIと新しい道」~卒業ではなく退学という選択

1. 人生の「逃げ」と社会人大学という「選択」


「ようやく、ここまで来た!」
2024年4月に芸術大の新設された
食文化デザインコースに入学してから
ずっと、オンラインで学び続けた日々。
卒業要件の単位数62単位のうち
40単位まで取れた時の気持ちです。
「とりあえず、ここまで来た…。」
その安心感は、表現に尽くし難いものでした。

でも、その直後から感じ始めた
どうしようもない違和感。
「私、何やってるんだろう?」
「還暦を迎え、人生の後半戦に入って
 これが、自分の本当にやりたいこと?」
そんな気持ちが湧き上がって来ました。

・ずっとアートやデザインに憧れていた
・いつかデザインを勉強したいと思っていた
・元家庭科教師の経験が活かせると思った
・新設コースの1期生の特典が何かありそう
・このコースを卒業すれば人生が変わりそう

こんなふわっとした理由で3年次編入を決めたのは
2024年3月。ちょうど還暦になる誕生日の月でした。
当時は、意欲もやる気もあって
「アラカン女子大生になる!と
浮かれてさえいたと思います。
だって、大学生の学生証を持っていると
いろいろ使えるんだなって
ワクワクしていたから…。

でも、今思うと、この社会人大学生という
「選択」は「逃げ」だったのだと思います。
「何からの逃げか?」
空っぽな自分を満たすための逃げ。

遠距離介護を覚悟して退職したはずが
実母の急逝で突然向き合うことになった
実家の整理と処分。
これらの大変な時期が終わった後に
残った空しさと自分の役割の喪失。
この辺りのことは、こちらのブログに
少し書いているので、よろしければご覧下さい。


そして、今思うと
学校で家庭科教師として働いていて
大学で学ぶという選択は
慣れた安心出来る場で
傷つかずに過ごせる大義名分を得る場
だったのかもしれません。

2.AIとの学びの日々


退職後の社会人大学生の学びというと
のんびりと学びを楽しむというイメージを
持っている方もいらっしゃるかもしれません。
でも、生成AIが広まった今、学びのスピードは
そんな悠長なものではありませんでした。

このスピード感は、生成AIをかどうかで
全く違うと思います。
私の場合は、最初は面白半分で使ってみて
その後は、もう手放せなくなってしまいました。


情報収集も、アイデア想起も
文章の構成や、書いた文章の校正も、
何もかもがスピーディで
驚くほどの速さで進んで行きます。

もちろん、大学のカリキュラムがとても
良く出来ていて学習意欲がそそられたことも
動画での講義を担当して下さる先生方が
一流の方々ばかりで、よそでは聞けないような
素晴らしい内容の講義が聞けたということも、
「もっとはやくたくさんのことを学びたい!」
というモチベーションになりました。

最初は、その速度を面白がる余裕があったのに、
合格した科目数が目に見えて増えると
卒業を意識し始め、
2年目は出来るだけ卒業製作に集中したい!
だから1年目でAIを使って出来るだけ
たくさんの科目に合格したい!
という欲が出て来ました。
この辺りのことはこちらのブログに少し
書いていますので、よろしければご覧下さい。


3.「卒業」への迷い

一度、そんな思いにとらわれると
もう、後には戻れません。

入学当初のコースに描いていた
キラキラした素敵なイメージは消え去り、
「とにかく、前に前に進まなければ!」
と必死に課題に取り組む日々を
過ごすことになりました。

幸か不幸か、単身赴任の夫の世話は不要で
子ども達も社会人になり家を出ていて
ほぼ一人暮らし。
だれも、自分を止めるものがない状態で
とにかく課題の提出に自分を
追い込んだ日々を過ごすことになりました。

ふと気づくと、後数科目で
卒業制作をのぞけば
卒業要件を満たせるところまで来ていました。
その時、初めて気づいたのです。
「私は何のためにここで学んでいるのだろう?」と。

そして、その頃、食文化デザインコースで
出会ったお店や人や取り組みなどが
自分にとって大切なものになっていることにも
気づき始めます。
さらに、今の日本の食が抱える課題などが
どれだけ深刻で、今すぐにでも
何とかしなければならないことにも気づきます。
「私は本当に学び続けたい?」
「今の自分にできることは他にあるのではない?」
そんな思いが湧き上がって来て
大学卒業への迷いが生じてきたのです。
この辺りのことは、こちらのブログに少し書いています。
よろしければご覧下さい。

ただ、学生のままで、学び続けることは安全地帯に
身を置き続けること。
何にも所属せずに、自分一人で何かを始めることは
足がすくむほど怖いことでした。

4. 挑戦としての「退学」の決断


学生でいつづけることは
退職後で、ほぼ無職の自分にとっては
経済的な負担も問題になります。
初年度の学費は、幸運にも実家が処分出来て
そのお金でまかなえましたが、
継続した次の年の学費はそうは行きません。
さらに、食文化デザインで学んでいると
完全オンラインなので、
通学などにお金は不要だけれども
他に必要なお金がかかることも分かりました。
常識で考えるとここまで来て
退学するのはもったいない。

「せっかくお金と時間と労力を払って
それだけ頑張ったのに!」
となるかもしれません。
でも気づいてしまったのです。
「学ぶことを続けるのではなく、
実践することに踏み出す時がきた!」と。
もう、人生は後半戦、
残りの時間がどれだけ
残されているかは分かりません。
学び続けることで安心を得るのではなく、
「やりたいこと」に挑戦する。
安心出来る学びの場からの卒業の時が来たと
心から納得できたのです。
オンラインの退学手続きは
クリックと退学理由の記入でおしまい!
あれだけ悩んだのに
あっけないものでした。
ただ、3月末までは学生です。
まだ、取り組める課題も残っているので
今は、そちらに時間を割きながら
個人で始めることの準備もしていこうと思います。

5. 「学び」と親としての公開


「学びは大切。でも、学ぶだけでは人生は変わらない。」
今、ものすごく実感している言葉です。
いつまでも、学ぶ側の人間でいるのではなく
動く側の人間になりたいと思います。

もし、今、退職前後の生き方に
悩んでいる方がいらしたら、
伝えたいことがあります。
リスキリングやリカレント教育など
いろいろな学び直しの必要性が
情報としてありますが、
「学び直しもいい。でも、いつかは
“実際に動く”決断をする必要がある。」
ということです。

そのためのビジョンやライフプランを持って
学び直しをすれば、
私のようにふらふらと迷うことなく
学びを楽しめ、それを今後の人生に
思う存分活かせるのではないかと思います。


それから、私と同じように、
学びの安心感に浸っている人がいるならば
いつかは、学びからの卒業が必要で
その後にも、人生は続くという事実です。

学びを何かの形で社会に返して行ければ
最高です。それが、何か自分の仕事、
というか、ライフワークのようなものになれば
とても幸せな人生を送れるかもしれません。

今の時代、自分で仕事をつくることは難しくない
と思います。
でも、きっと、一歩踏み出す勇気が必要となります。
この一歩を踏み出すことをサポート出来るような
場づくりが出来ればと考えています。

そして、今思い出すのは、息子のことです。

もう数十年前のこと、いろいろなことが重なって
大学を中退したいと切望したのに
「もったいないから、卒業だけは!」と
卒業を強いた息子の思いが分かります。

「俺の人生を台無しにした!」と
今ではほとんど交流がなくなってしまいましたが、
なぜ、もっと早く気づいてあげられなかったのかと
ものすごく後悔しています。
「始めたら、必ず終わらせなければならない」
という常識に囚われすぎていた過去の自分との決別も込めて
この記事を書きました。
長文をお読みいただきありがとうございました。(終わり)