sky beyond the Skaai

幕張メッセの大きなステージに立ったSkaaiを見たとき、本当にもう、どうにかなってしまいそうだった。
なんなら、わたしにとってPOP YOURSに行く大きな目的の一つだったSkaaiに備えて、NEW COMER SHOT LIVEを前にお手洗いに行ったとき、その列に並びながら聴いたサウンドチェックの、微かなPeriod.のイントロの時点で、もうどうにかなっていた。

トイレからお姉ちゃんにLINE送ったなあ

興奮のあまり今自分が何を思っているのかもわからないような状態で迎えたライブ。その始まりは機材トラブルと共にあり、それを＂持っている＂と言い切ってしまうにはどうしたって悔しさの残るものだった。
わたしは昨年のラップスタア誕生をきっかけにSkaaiを知った。ずっとメタルを聴いてきたし、HIPHOPに関してもトラップやメタルの系譜を感じるようなものを好んで聴いてきたなか、そんなわたしをここまで連れてきてくれたSkaai。きっとみんなも好きになるから知って欲しい、私はもうSkaaiが最高だってわかっているから、他のみなさん、どうかこの、あまりにも素晴らしい音楽に出会ってください、そんな気持ちでいっぱいで迎えたライブで、だからこそ悔しかった。本人やチームの気持ちを慮れば、一ファンに過ぎない私がこう言ってしまうことはあまりに無粋であるけれど、それでもやっぱりもっと聞かせてくれたら、と思わずにはいられなかった。

しかし、それでもあの状況下で間違いなかったのは、彼の音楽そのものと、一曲半でも伝わったであろう魅力である。後日のインスタライブでは、マイクの入るそのタイミングの良さに演出を疑う声まで出るのだから痺れてしまう。
POP YOURSの大舞台で披露したのはPeriod.とNectar.の二曲。本人が二曲で一つ、と言うように、その流れは本当に美しく、ショーとして洗練されていた。被せなしのその場勝負。圧巻の歌唱力でPeriod.を切なく歌い上げて間違いないスキルを見せつける一方で、Nectar.で見せたのは等身大のSkaaiの姿。トラブルをものともしない、ように見せるその心臓の強さで圧倒したステージだった。

ここで考えるのは、勉学に傾倒していた青年がラップを武器に幕張のステージに立つということの尊さである。ラップ歴からは想像もつかないような成果を上げたラップスタア誕生。優勝こそ逃したもののその名を全国に轟かせ、放送終了からおよそ半年でこのHIPHOPの祭典にブッキングされた。とんとん拍子でスター街道まっしぐら、に見えるかもしれない。あまりに順調な道のように思えるかもしれない。しかし、決してそう言い切るべきことではないのだ。捨てないことは完璧なまま変えずに残すことと同義ではないし、何かひとつを大切にすることは、それ以外のものを蔑ろにすることと同義でもない。変化には常に希望と不安が付き纏うものである。そこにあった葛藤や苦しさは全て曲に落とし込んでくれた。急激に変わる景色は、見上げるわたしたちからすれば輝かしいものかもしれないが、当人からすればそんなに美しいものではないのかもしれない。そのかけがえのなさは確かであっても、だ。だからこそ、わたしはSkaaiのこの活躍を見ても突き放されたようには感じないし、むしろどれだけ輝いても、その奥にあるものの煌めきは全く変わらないから、ただ信用できるのである。

今やもう、なんでもできるところにいる。ラップは聞くけどやるものではないと話していた彼が、ラップで掴んだ大舞台。世界を見据える彼を通して、我々も広い世界を見ることになるだろう。私も今、どこか諦めかけているものをしっかりと掴んで、その手を固く結んでいたいと、そう思わせてくれるパフォーマンスだった。
たった一人でステージに立ち、大勢の観客と対峙する姿。孤高と言うにはあまりにも人間らしい彼の後ろには、大きな空が際限無く広がっている。Skaaiの今後のキャリアを物語っているような晴れやかな空。今度はどんな大きいところで見られるのか。どんな曲を聴かせてくれるのか。学術の届かないところを、如何にして表現するのか。楽しみは全く尽きることがなくて、わたしは、そんな「いつか」に思いを馳せずにはいられない。

追記: Skaaiくん、読んでくれてありがとうございます！🙇✌️(2022.7.13)