#書いたら忘れない 1
The Worst of You and Me / LANDMVRKS
忘れもしない日、高校2年生になったばかりの春、4月12日。LANDMVRKSが、日本に、仙台に来た。その日の授業に全く集中出来なかったのは、決して週末を控えた金曜日だったからではなく、はたまたそもそも勉強嫌いだからでもなく、普段は一万キロ弱も離れたところにいる憧れのバンドがすぐそばまで来ているということが、あまりにも信じられないことだったからだったと思う。
いつだってガツンと殴られるような衝撃が大好きなわたしが、彼らの音楽を好きにならないはずもない。音楽の趣味が合う数少ない女友達が教えてくれたLANDMVRKSをはじめて聴いたときも、それはそれは大きなものを受け取った気持ちだった。ミズキちゃんが好きそうな曲あるよ!と教えてもらってはじめて聴いたのも、いまだにダントツに大好きなのも、このThe Worst of You and Meである。
当時のわたしといえば、メタル大好き!と言いながらもラップが聞こえるとふらふらついていってしまうような危うさがあって、そんなところに流れたこの曲。冒頭のラップパートで、良いかも?と思っていた心は、Get upの時点で大好きの内側にいるのである。とても複雑なこの曲は、4分強の中で色々な表情を見せてくれる。
この曲をいつか生で聴けたら、という願いは4月12日に案外あっさりと叶った。ライブは圧巻という言葉がぴったりの異世界空間、文字通り規格外で、あの瞬間、仙台MACANAは世界だった。緩急をつけながら進んでいく映像を終始ぼんやり眺めているような感覚と眼前に広がる景色があまりにも夢のようで、そしてLANDMVRKSが目の前にいるのがなんだか信じられなくて、ただ呆然とステージを見つめるわたしは、側から見れば全く楽しそうではなかったかもしれないが、それでも世界の広さを強烈に味わっていた。あの時の景色は、今でも鮮明に思い出すことができる。
あくまでライブ終演後も良い思い出である。マーチを買って、彼らと話す機会もあった。が、話すことは出来なかった。かろうじて聞き取れたのは、その時買ったキャップにサインを入れて良いか?ということだけ。わたしが言えたのはありがとうの気持ちとThe Worst of You and Meが聴けて嬉しかったということだけ。あとは全部Paleduskのダイスケくんが通訳してくれた。
あの瞬間の、切なさと言うべきか情けなさと言うべきか、とにかく、自分の思っていることを伝えたい相手に伝えられない苦しさは生まれてはじめてのものだった。わたしが今英語科にいるのは、あの日の甘く苦い思い出が忘れられないからかもしれない。し、難易度を度外視して二外を迷わずフランス語にしたのも、同じように彼らが所以だろう、と思わずにはいられない。
The Worst of You and Meのなかには様々な顔がある。だから聴くたびに"今日のお気に入り"が決まる。飽き性のわたしが長く大好きでいられる理由である。
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