「となりのイスラム」本を読んだ感想
「となりのイスラム 世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代」 内藤正典(著者)
日本におけるイスラムおよび多文化共生研究の第一人者である内藤正典先生によるイスラームの入門書。
現在、世界人口の4分の1にあたる16億人がイスラム教徒(ムスリム)であり、その数は近い将来3人に1人まで増えると言われている。
過激派テロばかりがよく報道され、「イスラム教って危ない、怖い」と思う人が多いだろう。だがこの本では実際にヨーロッパ・中東で約40年間ムスリムを見つめ続けてきた著者が、その誤解と偏見を分かりやすく解いてくれる。
日本で暮らしていると、西欧社会(キリスト教圏)のバイアスがかかった情報が流れてくることがほとんどだ。でもそれが本当に正しい情報なのか疑う人は少ないと思う。
実際イラク戦争のときのアメリカの言い分がでっち上げであったことや、フェイクニュースが最近問題視されているように、誤った情報、もしくは恣意的に切り取られた情報が溢れているのが今の世の中なのだ。そしてその情報を丸呑みし、誤解・偏見をもち、その対象を差別・攻撃をしてしまうのは本当に悲しいことだ。
「差別は無知からうまれる」という言葉があるが、何かを否定する前に、その対象の立場に立った情報を集めること、そして可能であれば実際に目で見て感じることが必要なのではないだろうか。
否定するだけでは生産性がなく争いのもとになるだけ。お互いのことを理解し、尊重することで平和な未来まではいかなくとも、今よりはマシな未来になると思う。
僕も実際にイスラム圏を旅したことがあるが、ムスリムは決して「暴力的で危険な人々」ではない。むしろその逆で、この本に書いてある通り、旅人を快くもてなしてくれるし、人と人との間に線引きをせず、弱者に対して優しい。そんな人達だ。
もしも暴力的で危険な宗教なら16億人もの信者に広がるはずかなく、そこには魅力的な「救い」があるはずなのだ。
是非この本を手にとってムスリムがどんな人々なのかを知ってほしいし、可能であればコロナがおさまった日にはイスラーム圏に行ってみてほしい。