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私のお仕事|小説を漫画にするまで

私は現在、ノベルのコミカライズを仕事にしています。
連載が始まってあっという間に2年経ち、ようやく慣れてきてアシスタントとの連携や効率化を考えようという段階までこれました。
その中で感じたこととかを稚拙ながら書いてみようと思います。


コミカライズって何?

メディアミックスの一つで、小説や映像作品などを漫画にすることです。

小説を漫画にするまで


私が原稿に入るまでの流れがこちら!

原稿にするまでの流れ

原作を読み、連載のために切りがいいところで区切った構成を考えます。
各話ごとに構成とネーム、原稿を繰り返し1冊分を終えたら最初に戻ります。

さらっと見るとそこまで大変そうじゃないと思うんですが、大切なことがたくさんあるので解説したいと思います。



原作を読む

一度全体を読んで楽しみます。
『どこでどういう気持ちになったか』を漫画に反映していくのが大事だと思っているので、ここではただの読者です。

とはいえ付箋とか貼りながら読んでます。
「ここすき!」
「この台詞いい!」
「この描写はいいな!」
の3つが中心で、絶対描きたいシーンは目立つ付箋にしたりします。


全体の構成を考える

長編だと1冊分で旅で訪れた国を救ったり、大きな事件を解決したりのような区切りになります。連載ではその1冊を1話単位で区切る必要があるのですが、小説とまったく同じように各章や幕間を収めることはページの関係上とても難しくなります。
小説でも小さな山場を繰り返し大きな山場を迎えるように漫画も1話ごとで見せ場や盛り上がりを作らなくてはいけないので、まずは全体で何話分になるかを考えながら見せ場の配分をします。

これ、とても、大変です…。
引きも大事なのでどこで切るべきかとか、どのシーンを引きにすると印象的かめっっっちゃ悩みます。
(私の場合月1だから次までワクワクして待っててもらえるにはを考えるようになりました)

この辺は編集さんと相談してみるようになり、のちのネーム作業がとってもやりやすくなりました。
やっぱり全体像が見えているほうが捗ります。


各話構成を考える

ここからそれぞれのお話のネームを作る作業に入ります。
全体の構成を組みましたが原作の文章をそのままやるわけではありません。
詳しくは後述しますが、情報の濃度調整をしないといけないのが大きな理由です。
濃すぎるところは別の回にまわしたり、薄いところはちょっとオリジナルで盛ったり…。
漫画全体の流れをよくするために切らざるを得ないところも多いです。
(幕間など、正直描きたかったなってところはたくさんありました。)

私の場合「セリフ抜き」という作業をします。
原作から必要な情報や会話を抜き出して調整し、メモも交えた台本のようなものを作る作業です。
以前は絵コンテ描いてたんですが、いまいち効率が上がらないのとめくりのタイミングがずれてしまうので文章ベースに移行しました。
文字量で大体のページ数を把握して調整します。
これは気持ち少なめに作っておいてます。削るシーンが個人的なお気に入りシーンだと悲しくなるので…。


ネームに起こす

ここからネーム作業です。
私はクリップスタジオを使用して作業しているので、ストーリーエディタにセリフ抜きのデータをつかってめくりにしたいセリフを割り振っていきます。
ここでも、やっぱり大きく取りたいというセリフがあれば調整や修正をして大体のページ数が決まります。
あとはザクザク絵を入れてネームの完成です。
最初のネームだけで原作のその部分を2~3回は読み直します。


電話打ち合わせののちネーム修正

担当さんが台詞の修正や演出案を書いてくれたPDFを見ながら電話で打ち合わせます。
初期よりだいぶ成長したと思うのですが、まだまだジャンルに合った演出ができていないのでここはとても助けられています。
どこを描きたかったかもちゃんと拾ってもらえるし、足りない部分は話しながら補って補強できるように相談します。
私はいわゆる無駄ゴマやナチュラルなセリフを好むのでガンガン削られて「今日はメンタルがもう無理です…」って打ち合わせがあった日は作業しないこともしばしばです。
その方が読む人にはいいので割り切って直します。


メール連絡でのネーム修正を2~3回繰り返す

まだまだ完成しません。
細かいセリフの違和感をのぞいたり、直してみた際のテンポ感の調整をしたりを何度か繰り返します。
わりと細かく同じような作業をするのでへこたれそうですが、踏ん張りどころです。


編集長チェック・原作側の監修

やったー!おわったー!なんてことはなくここでも指摘がある場合があります。
私は原作者ではないので、いくら読んでいても私の感覚というものが入ったり理解不足であったりしてしまいます。
たくさんの視点から見てもらって、OKをもらえて初めて商品(原稿)にしていいよ!になるわけです。


作画開始

作画はネームで時間がかかることもあり、私がキャラクター作画を済ませてから背景や基本的なトーンのベタ張りをアシスタントに振っています。
余力があったりどうしても自分で演出したいところは自分で作画と仕上げをするので、まったくやらないということはあまりないように思います。

あ!ちなみに原稿でき上ってからの修正とかもあります!

うわーーーーーってなります!!!


原作あるから楽じゃないの?


これ!これ思う人もいると思うんですが、オリジナルもチャレンジしてた私的にはYesでありNoです!

確かに「ネタがない…どうすれば…」はないかもしれません。

ただ私は考えすぎる性格のためものすごく神経をすり減らします。
(キャラクターにのめりこんで新シーン追加したりするので、そのテンションのアップダウンでもやられます)

原作ファンの人、漫画からの人、イラストレーターのファンの人…たくさんいます。一人でも多くの人に原作まで手を伸ばしてほしい、全員楽しんでもらえたら最高!なんですけど、いろんな人がいる分それは難しいです。
雑誌の読者層を考えてこういうシーンがあったほうが…とかもあるだろうし。
私はバトルシーンでのパンチラのようなことは興が醒めるから苦手なんですが、場合によっては必要になることだってあると思います。

最近は「私より多くの作品を見てる担当さんが言うんだし任せちゃえ!!」「監修入るし違ったら原作の人が教えてくれるよね!!」と思って、原作ファンとして描きたいシーンを描くことを優先しています。全部通るわけじゃないけど。

そんな感じでどっちにしても違った苦労があります。


媒体が変わるということ

各話構成の所で書いた情報の濃度調整については、媒体の違いというのを一番意識させられた部分でした。

伝わるか少し不安ですが以下のような感じかなというのが、現在の考えです。
小説は文字という情報のすべてを追っていきます。謎解きなら、引っかかった部分を戻って読み直してまた考えたりするでしょう。
書いてある情報以上のものは、その1冊からではきっと得られません。
これは目的地まで宝の地図を持って探索しながらたどり着くようなものに思います。結構ワクワクしますよね。飽きたらどんどん進めばいいです。

漫画は文字に加えて視覚情報が加わります。
目的地に行くまでに「こっちには~があります!」と案内が付くようなかんじでしょうか。小説同様戻ってふらふらすることもできますが、案内の人がだらだらと長話始めたらあきちゃいますよね。
これが媒体が変わる大変さです。
飽きさせないように事を運ばないといけない。文章そのままは、もしかすると地図をそのまま細かく解説されて案内されて、ワクワクする余地がなくされてしまうことになりかねません。

映像ならバスに乗りっぱなしで連れていかれる感じなのかな。
速度を考えないと見過ごしたり置いて行かれがちって意味で。

それくらい見る側の自由度(?)が変わってきちゃうように感じます。

どんなに素晴らしい文章も、案内という演出一つでぶち壊しがあり得るのが媒体が変わるということのように、今は思います。

あとこれをだれかしっくりくるように言語化して!!
と思います…。


さいごに


連載当初、「オリジナルで描く人の方が大変」のような感覚がありました。今でもその気持ちは残ってはいますが、コミカライズの大変さは違うベクトルでありました。
「オリジナルでやっていきたい!」という人は一度勉強のために、好きな小説作品の漫画化をやってみるのがおすすめです。

学生時代、課題で「畜犬談」という太宰治の作品を限られたページ数で描くというものがありました。
ベースがあれば楽だろうと思いきやそんなことはありません。
ページやコマ配分、間の取り方も少し間違えると信じられないくらいつまらなくなるんです。
これは体験してみないとわからないと思うので、ぜひ試してみてください。

また、文章を漫画にする過程で「プロットがつまらないのは仕方ないのでは」とも思うようになりました。
書き方の問題はあるかと思いますが、小説みたいな量のプロット書きませんよね。というかそれが面白いなら小説家になったほうがいいでしょう。
絵で見せたり、演出ってすごく大事なんだと思います。

これから漫画を描きたいなって人は、絵のうまさでも設定の凝り方でもなく、「どうやったらこの一文を面白いと思ってもらえるか」をぜひ考えて鍛えてみてください。

私も絶賛鍛え中です。

自分の作品ではないけれど、自分が描いたもので原作を手に取るきっかけになったり、作品の設定やストーリーを面白いと思ってくれる人が増えることが私はとてもうれしいです。
それはオリジナルでは得られない、貢献できてる感なのかもと思ってます。まだ未熟ではありますが、作品と読者とつなぐ架け橋のような役割をこれからも担っていけるといいなと思います。


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