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stay home,leave home

「オンライン飲み」なるものをやってみたところ、夫からえらいクレームが来た。話し声がうるさい、隣の部屋に聞こえる、地震が来たのに構わず飲み続けるとは何事だ、などなど。飲んでるこっちは楽しんでいたが、夫にとっては快適な家時間の邪魔になる要素満載だったらしい。翌朝も機嫌が悪く、ひと言も口を聞かずに部屋にこもりっきりだった。私は私で、リビングで文章を書くのに集中したかったから丁度良かったのだが、二人しかいない空間で、ピリピリした空気を醸し出されると、本当に息が詰まる。STAY HOMEに耐えられず、気晴らしにLEAVE HOMEすることにした。

ここ最近、毎日のように隅田川に行っている。公園の遊具は封鎖されているが、ジョギングする人、犬の散歩をする人、ベンチで発泡酒を飲む人など、それぞれが思い思いに過ごしている様子だ。私のような気晴らし組もきっといるだろう。浅草の多くの店は閉まり、繁華街から人は減ったが、川べりにはかつてほどではないものの、そこそこ人が集まってきていた。向こう岸のアサヒビール本社ビルには、今も「TOKYO 2020」の横断幕が掛かっている。祭りの名残を見るようで、何とも言えない気持ちになる。行く当てもなく、ただ気の向くままに遊歩道をひたすら歩いた。

歩き疲れて気が済んだ頃、駅へ向かう通りに出てみたら、夫と度々行っていた焼き鳥屋さんの看板に灯りがついていた。先日まで休業中の張り紙があり、淋しく思っていたところだったので、吸い寄せられるようにお店に入った。しばらくはテイクアウトのみだが、時間短縮して再開するらしい。また、あの味が味わえるのだと思うと胸が躍った。早速焼き鳥とおつまみのセットを注文したら、「今立て続けに(注文が)入ったから、25分くらい掛かっちゃいます」と言われた。待つのなんてどうってことない。他にも再開を楽しみにしていたお客さんがいるってことだ。コロナが収束するまでに、今まで好きで通っていたお店がどうか存続していてほしい。だから、何度だって焼き鳥を買いに行こうと思う。

焼けるのを待つ間、「○○(お店の名前)」が復活していたので買って帰るよ、と思わず夫にメールを打っていた。夫からの返事はなかったが、そんなことはどうでも良かった。30分後、焼き鳥セットを持って帰宅した私が家に入るなり、夫は矢継ぎ早に尋ねるのだった。「何本買った?なに買った?混んでた?」と。お店の再開を楽しみにしている人は、ここにもいた。

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