書評:『世界ウィルス戦争の真実』 (日高義樹)
共和党に近い米国シンクタンクであるハドソン研究所の主席研究員日高さんのコロナウイルス事件後の初の本。
相変わらず過激に聞こえる米国共和党寄りのハドソン研究所の日高さんの主張であるが、これはこれで聞いておくのが良いと私は思っている。
本の内容
新型コロナウイルスであるが、これは、生物兵器として開発されたものではない。だけれども、それを生物兵器のように使ったのは習近平。2019年11月よりウイルスの各種報告は上がっていたのに、それを隠しておいて、WHOのテドロス事務局長にパンデミック宣言と移動制限を遅らせ、世界中にコロナ感染者を中国人生物兵器ミサイルとしてばらまいた習近平。おかげで世界は大混乱である。CIAとかFBIが機能していれば、こんなものは察知できるはずが、米国の情報機関が弱くなり、大統領など内政を向いてしまっていることで、察知できず、米国は中国の不意打ちを食らった。冷戦終結後の米国の情報機関の弱体化を嘆いている。
第2章。杞憂というのは、杞という国で、空が落ちてくるという心配している人の憂の故事出そうだ。これがコロナウイルスで現実になったという話。米国の大楽観論は突如として消えた。
米国の政治は完全に分裂し、バイデンが墓場から這い上がってきた。ここで、米国民主党の話。民主党は、労働組合の金をウォール街に預け、そのあたりの権益がペロシ下院議長を代表とする老人に集まり、ほぼ独裁ババアになっている。それとは別に、いうこと聞かないサンダースなどがいる。さらに、中国マネーも入ったハリウッド、シリコンバレーの勢力も取り込み、民主党という勢力がある。民主党は、中心がペロシのような金にまみれた独裁老人と、サンダースみたいな社会主義者で分裂している。
マスコミは、民主党寄りなので、米国のマスコミの報道もあてにならない。これは、トランプが当選した4年前と同じ。米国は、30%が共和党支持、30%が民主党支持、40%が浮動票。
まあ、しかし、ズブズブバイデンこと、バイデン君は大統領の資質ではない。主義主張や政策もないただの風見鶏。副大統領にしたオバマ大統領でさえ、このノンポリぶりは、大統領としては使えず、自分の後継者にしなかった。素質がないのに、他がいないため、直前にクオモNY州知事を大統領候補にあげるような勢力さえあるのではないかという予測がある。
原油20ドルは米国にとって意外だった。裏にはサウジと米国の利益相反がある。米国は産油国になったので中東を守る必要がない。サウジの原油は原価が安い。サウジが増産して、ロシアも増産すると原油がやすくなる。米国のシェールは原価が高いので、ここで、サウジと米国は利益相反する。米国のコントロールが効かなくなって、原油が20ドルまで下がった。昔なら、米国の力が強くて、価格はコントロールできた。
第3章。米国の今年のGDP厳しい。
トランプは米国の石油産業を守るべく、中東で戦争する。戦争になると原油価格は上がるので、すでに、イランのごちゃごちゃしている艦艇などがいれば、討ち取れという命令を下しており、原油価格が上がった。イランはビビって、何もしないでいる。
中国は海上の基地を作って、空母と運用する。地上空母と空母のセット。空母は1台で運用するよりも二台で運用する方が相互に防衛できて、指揮も楽になり、3倍4倍の効果があるらしい。というわけで、南シナ海は、中国が支配する可能性があるということ。中国としては、石油を中東から運んでくるシーレーンの確保は大事になり、その動きは強くなるのでは。そうなると、米国としては、グアムに戦略爆撃機をおく方針もやめるかもしれず、横須賀以外の艦艇は、全部ハワイに引き上げちゃうかもね。基本、米国が日本のために中東の石油を守るという戦略自体が消えているから、日本はどうすんだろうね。まあ、中国の空母では、太平洋で運用するには小さすぎるから、小さい海である南シナ海ぐらいがちょうど良い。太平洋ではなく、小さな海である南シナ海であれば、中国の可愛い空母も使えるかもねという話。
第4章。大統領選挙の課題は中国になった。ズブズブ・バイデン君は中国に近いので(お金借りたりしてる)、そういうCMがガンガン米国で流れている。武漢に感染者がいないというのも嘘で、感染者を他の州に動かしてお祭りしていただけ。そもそも、レントゲンもちゃんとない医療で、患者数が正確であるとも思えない。
中国はコロナウイルスで世界から孤立した。(米国の情報機関の弱体化が激しいので、)米国商務省が一番早くコロナの情報を掴んで、それを中国の経済封鎖に使うことにした。中国への物流封鎖が進み、飛行機も飛んでいない。
親中だったアフリカも、コロナをばらまかれて中国離れが進んでいる。人がたくさん死んだ、米国・欧州も中国を恨んでおり、中国の立場はない。WHOにいち早く報告しなかったことは、中国の法律にも違反している。
第5章。中国共産党体制は終焉する。資本主義を取り込んだふりをしているけど、結局中国共産党の仕組みは制度疲労が来ている。民間の活力を取り込むように見せつつ、悪くなると全部国営企業に援助がされ、民営企業が淘汰される仕組み。出世も能力ではなく、政治的なコネで選ばれるので、国営企業には優秀な人が集まらず、運営効率は悪く、潰れていく運命にある。ファーウェイなどが国営企業の代表だが、破綻した。米国の締め付けにより、中国経済はもはや破綻している。また、独裁制なので、中国は資本主義にはなれない。
第6章。ウイルスではなく習近平が世界を変えた。米国はウイルスに勝つだろう。また、米国のGAFA的な大企業はウイルスの影響を受けておらず相変わらず強い。短期的に日本は、米国のコバンザメしているのでどうにかなる。政策も米国を真似ているだけ。言葉まで同じにしている。
ここから3つ引用。
現在の日米共同路線と言うか、日米安保条約のもとにおける経済協力体制とは、安倍首相がトランプ大統領の政策の後追いをしていることで、それなりの安定した効果をあげているが、日本独自の国家をあげての政治的な決定、あるいは戦略というものが見当たらない。
この問題に限って言えば、日本の戦略専門家やジャーナリスト、学者なども日本の戦略についてまったく検討を行っていない。このため安倍首相が独断で行動している印象を与えている。
安倍政権に戦略はない。日本の戦略に関する助言機関も見当たらない。
巨大なオリンピック設備も、そして電通を中心とする不毛な宣伝戦もひとまとめにして捨てて、日本を活性化するための新しい目標を見つけなければならない。
オリンピック設備と電通というのが日本で捨てるべきもの。新しい目標というのは戦略だから、結局戦略が必要。
しかしながら世界の目から見たアベノミクスの実体は、金融緩和に基づく円安政策に他ならない。オリンピックに象徴される観光、サービス業に頼る、いわば浮草的な経済政策である。
アベノミクスは浮き草。言葉を変えればただのバブルで実体がない。
と安倍政権に厳しい言葉でこの本を日高さんは結んでいる。
感想
米国のシンクタンクというのは政策を考える機関である。ハドソン研究所は、共和党への影響力が強い。まあ、トランプ政権の政策解説および立案をしているところである。
そこが完全に中国との戦争状態になっていることがよくわかる。大統領選挙の前とはいえ、民主党の腐敗体制、オバマ前大統領への攻撃、ズブズブバイデン君への攻撃がすごい。が、納得させられるものがある。
世界の安全保障を考えたときに、日本人の意識と、日本政府の認識が甘いところは、石油である。米国はもはや産油国で、中東を欲していない。
ここから考えると、
石油あるから中東いらない
→ 南シナ海・インド洋いるんだっけ?
→ グアムもう少し手を抜いてもよくね?
→ 韓国も金かかるし、わけわかんないからいらね
→ あれ、日本もいるんだっけ。ハワイで守ればいいんじゃね?
ということになる。これが、日本の安全保障環境に大きな影響がある。
要するに、米国からしてみれば、「日本は日本で独自に守れよ」になる。
一方、米中の対立は激しくなっており、それを含めてアメリカの本音を言えば、「中国はオレが潰しておくからさ、お前、南シナ海・インド洋のあたり自分でどうにかしとけよ。そう言えば、お前さ、経済構造終わってっから、どうにかしろよ。観光と飲食って、お前んとこベルルスコーニのイタリアかよ。いい加減にしろよ」ぐらいなものであるかと思われる。
まあ、しかし、日本の戦略レベルの政策のなさというのは呆れる。安全保障戦略もなく、経済に関する戦略もない。まあ、政策立案のシンクタンクが、キヤノン戦略研究所じゃなー、という気がプンプンするわけだ。
安全保障面で思ったこと
過去の日高さんの著作からすると、大きな変更点は、南シナ海の防衛。ちょっと前までは、フィリピン・インドネシア・台湾・日本あたりに地対艦ミサイル配備して、もはや南シナ海の中国軍は海の藻屑、であったはず。が、今回は、中国の空母と南シナ海の地上基地で米国軍撤退するかもね、に変わっているのが、すごく気になるところ。米国の攻撃型潜水艦からミサイルぶっ混んで、全部壊せるんじゃなかったっけ?ロシアのミサイル防衛網を買って、中国が強くなっちゃったのかな?
日高さんはほぼ米国共和党のプロバガンダ要員と考えても良いだろうから、米国としてみれば、日本には再軍備して、南シナ海とか守って欲しいのだろうと思われる。
もしくは、中東いらないという戦略を描くトランプ大統領からすると、南シナ海を守れるけど、守る必要がなくなった、むしろ、南シナ海で中国が、どんぱちやってくれると、石油の価格が上がり、日本に石油を輸出できるからそっちの方が米国の国益だよね、という話かもしれない。
こうなると、日本のエネルギー安全保障としては、こんな感じになるか?
(1) ロシア・中東・米国・インドネシア界隈といった多方面からの石油の供給先を分散しておく
(2) 風力発電・原子力などエネルギー源の分散をする
(3) 石油使わない。ガソリン車とか減らして、電気自動車を増やす
国防としては、こんな感じか。
(1) 南シナ海まで睨めるように
1−1: 軽空母+F35の数を揃える
1-2: ミサイルが大量発射できる大型潜水艦の開発と配備
(2) TPP加盟国を抱き込んだ対中国の地対艦ミサイル網の整備、ミサイル高度化に向けたセンサーネットワークの整備、宇宙開発
ポスト中国共産党
個人的には、アフターコロナという話題は小さく、ポスト中国共産党という不確定要素の方が、大きな問題だと思っている。
米国による経済の締め付け、コロナにより世界中に嫌われる習近平、国内経済の失敗・失業率の増加、国営企業の運営効率の悪さと破綻、などから、中国共産党が持たない、少なくとも習近平体制の終焉は近いのだろう。その後の中国は一体どうなるのか?
米国とここまで対立した中国が、鄧小平の体制に戻れるとも思えない。李克強で収まれば一番平和だろうが、それでそうするのか。分裂内戦か(香港やウイグル地区など、一部地域の分離独立は避けられまい)、もっとアグレッシブに、民主化して、台湾が中国になるのか。
私は、そのシナリオが全然読めない。
中国共産党の発する中国語や、人事の深読みではなく、こういうシナリオとその実現性を精査するのが国家戦略専門家の仕事だと思うのだが、誰がこういう研究をしていて、ちゃんと答えを知っているのか、私は知らない。
少なくとも、日本のジャーナリズムでは見当たらない。
米国大統領選挙はどうなるんだろうね?
しかし、米国大統領選挙の行方が私にはさっぱりわからない。NHK、日経新聞をはじめとして、日本のマスコミを見ている限り、限りなくトランプ大統領が落選して中国ズブズブ・バイデン君が勝つような報道がされているわけである。しかし、共和党寄りの日高さんが言うには、それは事実ではなく、きっとまたトランプ大統領だと言う。
まあ、米国のマスコミが、全部現金で買収されており、中国の世論操作であるとか、民主党応援の西海岸の大手IT企業の世論操作にまみれていそうなのはよくわかる。facebookなどを見ていても、その世論操作に見事にかかっている輩も簡単に見つけることができる。もはや、スパイの主戦場は、SNS上の世論操作なのかもしれない。
とはいえ、前回の大統領選挙も、実際選挙をやって勝ったのは、クリントンではなくトランプなのである。今回の選挙も、トランプも確かにひどいが、それ以上にバイデンはまずい気がする。そして、知れば知るほど、オバマ大統領というのは、史上最悪の大統領である。
私の今のところの予想は、未だトランプである(2020年1月時点より随分と形勢は悪くなって入るけれど、まだ勝つ水準であるし、何しろ、バイデンがやばすぎるし、弱すぎるのである)。
日本の経済面で思ったこと
安全保障もそうだけど、日本の経済に関する戦略がない、もしくは、お粗末であるというのは、日高さんの言う通りである。これは、安倍首相がどうこうというレベルの問題ではなく、日本の政策立案システム、日本レベルでの安全保障を含めた戦略を立案する組織や国全体としてのシステムが弱い。
具体的にいうと、国家レベルの戦略に関する助言機関が弱すぎる。
日本のIT界隈と似た構造だ。日本人は、個人でいうとP2P開発しちゃった人とか、Rubyという言語を開発しちゃった人とかすごいエンジニアがいるんだけど、IT企業となると楽天とかソフトバンクといった、IT関係なしのただの営業万歳会社とか、投資が極端にうまいハゲたおじさんの会社になってしまう。これは、AWSとか作ったamazonとか、Azureで復活したナデラのマイクロソフトとは全然違う。
日本で国家戦略立てる人といえば、例えば、大前研一御大などがいる(過去の人だけど)。この人は、シンガポールの国家戦略とか作るときに呼ばれている人だから、まあ、個人としては、国家戦略を考えられる人は、探しゃいるんだろう。でも、組織として自民党に政策を助言しているとか、政府に助言しているかというと、そういうことではない。シンクタンクという名のサラリーマン集団である「なんとか総研」が、国の補助金を蝕んで、ただの英語調査代行をしているだけである。これをシンクタンクと言ってはいけない。で、国家戦略の立案を、縦割りで給与の安い官僚に頼るから、高級官僚は定年後に外郭団体に移って大儲け的な汚職構造が出来上がり、その人事に影響する政治家と高級官僚の癒着が出来上がるのだと思われる。無論、その様な汚職構造から、各分野を統合した国家戦略など出てくるはずがない。
そうではなくて、米国みたいなちゃんとした国家戦略を立てるシンクタンクというものを作る必要があるんだろう。財界とか、上場してうまくいった企業の経営者とかが協力して、経団連ではなくて、ちゃんとこういうシンクタンク機関を作らないものだろうか。
で、経済面で思うのは、日本の産業の弱さである。
もう、誰の目にもモノづくりなどをしていてはいけない。いや、製造業をやるのは良いし、自動車を作れるのは立派だから捨てる必要はないが、製造業が日本の産業の中心ではいけないことは、もういい加減気づいていて、わかっているだろうと思う(ボケた老人以外は)。製造業しかわからないボケ老人はともかく、経団連の会長でさえ、昔ながらの工場の製造業やっていてはダメなのがわかっている人がなっているわけで、産業をソフトウェア中心にしないといけないのはわかっているだろう。
昔は、半導体産業が日本にあって、ひたすら工場への設備投資を突っ込めばお金が返ってきた時代があった。強い産業というのはそういうものである。
じゃあ、今、それがどういう産業かといえば、クラウドである。クラウドといっても、AWSやGCPやAzureのそれである。彼らがソフトウェア産業かといえばそうなんであるが、絶大なる設備投資産業でもあることに気づいていないのが、世の中に多い。
amazon, google, Microsoftの3社はすごい量のCPU、ストレージ、メモリに設備投資をして、データセンターを作って、それをサービス化して売っている。そのマネジメントにソフトウェアが必要なのであり、便利に使ってもらうためにAIなどの各種ソフトウェア部品をサービス化して売っている。大量のソフトウェア開発をサービス化して売っている面もありつつ、結局は、世界のITインフラを寡占しているのである。米国企業という目で見れば、独占をしているのである。
メーンフレームコンピューターというのは、似たような構造であった。メモリを作ったり、CPUを作る研究投資開発と工場への多額の設備投資が、大きな利益に結びつく産業構造だったのだ。今は、コンピューター産業の産業構造が変わって、市場を米国企業に全部取られた。日本は負けたのである。
自動車も、電気自動車とサービス化される自動運転車になる今(こっちはトヨタさんに頑張ってもらうしかない)、日本にこういう設備投資を大量に突っ込んで、大きな利益が転がり込んでくる産業がなくなっている。資本が資本を呼び込む産業がないのである(古くは鉄鋼業がそうだったけど、今ではどうでも良い産業である)。
富国強兵、逆を言えば、金があってこそこの国防であるのだから、国家戦略としては、こういう構造の産業を作り出さねばならない。
じゃあ、日本のIT企業にそれがあるのかと言えば、ない。yahoo! Japanが何に投資をすれば、AWSのように伸びるのか?その間、amazonは大量にコンピュータの部品に投資をかけて、収益を伸ばしている。yahoo!Japan(Zホールディングす)が買っているのは、日本ローカルのEC企業ばかりで、AWSのように設備投資がほぼ無限にスケールする類のものではない。親玉の孫さんは血迷って、WeWorkなどの価値のない不動産会社に集めた大金を投じてしまったのである。
ちゃんと、情報技術の技術者を増やし、設備投資産業を作りに行かないと、日本の将来というのはないのである。
んなことを、ワシントン生活が長くて、心はすっかりアメリカ人であるだろう日高さんが、共和党系のお金を啜りつつ、ワシントンに体を置きながら書いた本を読みながら、考える日曜日の朝であった。
(と言って、日高さんを否定しているわけではなく、こう言う方がいらっしゃるから、米国の政策情報が入ってくるわけで、私などにもわかるように日本語で本を出してくれるのは非常にありがたいし、日本の国益にも叶っていると思うので、ぜひ続けていただきたいし、ここまで読んでくれた皆さんもぜひ、日高さんの本を買って欲しいわけである)