書評:『サピエンス全史(上)』(ユヴァル・ノア・ハラリ,柴田裕之)その3
続いて、「第4章 史上最も危険な種」について
この章の主旨はシンプルで、他の動物から見たときに、「ホモ・サピエンスほど他の動物を絶滅に追いやってきた最悪の種はない」が主旨。
ギルティ、有罪、という話。
マンモスの絶滅は、サピエンスが食べきった結果と言うのは、有名な話。
サピエンスが未知の大陸に上陸するたび、その大陸の生物は絶滅した。その痕跡はあらゆる大陸で見られ、サピエンスの大罪は言い訳のしようがない。サピエンスのオーストラリア大陸で、体重50kg以上の哺乳類が、100属から50属まで減った。属は種の上の単位だ。大陸にいる哺乳類を、人類レベルの属単位で、半分も絶滅させたのが、サピエンスと言う単一の種である。
サピエンスが様々な生物を絶滅させたことを否定する学説を打ち立てる学者が多いのは面白い。この手の学説は全て否定されているらしい。あーだこーだと言い訳し、ヒトの罪を認めない人がいる。様々なバイアスの影響だろう。
現在、絶滅危惧種は多岐にわたる。外来種による種の絶滅が多い。
この数百世紀において、史上最悪の最悪の外来種は、我々ホモ・サピエンスである事は間違いがない。現在、人間に邪険にされている外来種たちからすれば、「サピエンス?どの口がそんなこと言うのかね、ケッ」だろう。
地球環境を変更するほどに、サピエンスの認知革命は強烈なだった。これが、農業革命も実現していない狩猟採集時代の成果なのだから、サピエンスはすごい。
私は、イルカが好きだ。生物の絶滅は避け、生物の多様性を維持したい気持ちがある。しかし、自らの外来種ぶりを放置しつつ、ヒアリと言う外来種がどうだと騒ぎ、勢い余って昔からいるアリを駆除し、ますますヒアリを繁栄させやすい環境をとるような行為は、どうかと思う。
キリスト教の定義とは異なるが、数多くの種を破滅させてきた「原罪」が、人間にはある。だからこそ、絶滅危惧種は保護せねばならない。また、環境への影響が少ない技術を開発して生きて行くのだがと思う次第である。