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【シナリオ】 「約束まで」
<人物>
田代誠(29)会社員
芦原恵(23)田代の恋人
向井真紀(25)田代のアシスタント
◯夜景の見えるバー(夜)
窓際のカウンターにスーツ姿の田代誠(29)が駆け寄る。
田代「恵、ごめん!!」
両手で拝むようにする田代。
華やかな装いの芦原恵(23)が、席から立ち、田代に伝票を押しつける。
恵「もう、誠さん、何回目?!
次、遅刻したら、今度こそ別れるから!」
恵、謝る田代に目もくれず、ヒールを鳴らして店を出て行く。
慌てて後を追う田代。
◯台東商事・オフィス内(朝)
電話が鳴り響くオフィス。
田代がパソコンを覗き込み、乱暴にキーボードを叩いている。
田代「ちょっと向井さん! これ、また間違ってるよ!」
電話とキーボードの音、大きくなる。
◯台東商事・オフィス内
壁の時計が1時30分を指している。
田代のデスク脇に、制服姿の向井真紀(25)が俯いて立っている。
田代、机を左手の人差し指で叩きながら、
田代「何でこのタイミングで、出来ないって言うのよ、向井さん。
昨日進捗聞いた時には、問題ないって言ってたよね?」
真紀、親指の爪を弄りながら、
真紀「昨日は、できると思ってたんです…」
田代、右手で額を覆い、こめかみを抑えながら大きく息を吐く。
田代「…で。4時までにどこまでできるの?
とりあえずデータ作成までは、向井さんがキッチリ終えてくれる?
後、自分でやるから…」
真紀「はぁい」
田代「データ! 完璧に頼むよ。
3時半に一度チェックするから持ってきて」
真紀「はぁい」
真紀、髪を弄りながらのんびりとした足どりでデスクに戻って行く。
田代、唇を噛み拳でデスクを叩く。
◯台東商事・エレベーターホール
観葉植物の陰に立つ田代。
窓の外を眺めながらスマホを耳につけている。
恵の声「芦原です。ただいま、電話に出られません。
メッセージをどうぞ」
ピーッという電子音が流れる。
田代、スマホを覆うようにして早口でしゃべリ出す。
田代「恵? 今日、やっぱりちょっと遅れるかもしれない。
ごめん、また連絡するから…」
再度、遮るように電子音が鳴る。
田代、持っていたスマホを振り上げ、握りしめる。
◯台東商事・オフィス内
壁の時計が3時20分を指している。電話のベル音。
真紀の声「田代さぁん、南雲部長がお呼びでぇす」
田代「え! 今から? なんでよ?」
田代、抽斗に読みかけの書類を放り込むと大きな音を立てて閉める。
◯台東商事・オフィス内(夕)
夕日の差すオフィス。
壁の時計が4時10分を指している。
田代「向井さん! まだいる?!」
丸めた書類を手に、田代が駆け込んでくる。
デスクの上に、書類が乗っている。
その上に、「よろしくお願いします 向井」というメモ。
田代「くそっ」
田代、手に持った書類でパソコンを引っ叩く。
◯台東商事・オフィス内(夜)
田代が腕時計を睨みながら、スマホで電話をかけている。
田代「恵? ホントごめん、今日…」
遮るように恵の声が聞こえてくる
恵の声「あー、今かけようと思ってたとこ。
誠さん、どうせ遅刻でしょ?
私、友達と映画に行くから、今日はもういいわ」
プツリと電話が切れる。
田代、スマホを床に投げつける。
以前に、「最初から最後までひたすらイライラしてる人を描写する」というお題で書いたものに手を入れました。
現在、新しいチーム&初めてのテレワークを手探り体験中な私。
同僚とタイミングを合わせて業務を進めるのが、ちょっと難しいなぁ、と感じた時に、ふとこのシナリオのことを思い出しまして。
あまり心和むお題でもないので、公開するならシリアスな見出し画像にはしたくないなぁ…と迷っていたら、chiyoizumoさんの可愛いイラストを発見☆
「みんなのフォトギャラリー」に背中を押していただいての公開です…(^_^;
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