元教授、カバーの魅力にはまる(その4): 徳永英明、桑田佳祐、八代亜紀 (定年退職162日目)
今回は、日本を代表する大物歌手である徳永英明さん、桑田佳祐さん、八代亜紀さんのカバーアルバムを取り上げます。カバーソングの話題もこれで4回目となり、少し長くなりましたので、ここで一度区切りをつけることにします。次回は、尾崎豊さんらのトリビュート・アルバムについて触れたいと思っています。
徳永英明さん - 女性ボーカルの新たな魅力を引き出す
彼は「Rainy Blue」「壊れかけのRadio」などのヒット曲で知られるシンガーソングライターで、1980年代から2010年代にかけて10年ごとにアルバム首位を獲得するという偉業を達成しています。私と同世代で、TBSの「スーパーサッカー」のメインパーソナリティーを務めたり、関西弁で「ダウンタウン」と共演するなど、私にとっては親しみやすい存在として印象に残っています。
2005年から2015年にかけて、徳永さんは女性ヴォーカルの曲をカバーしたアルバム「VOCALIST」シリーズを6作リリースしました(下写真)。当時、男性歌手による女性歌手のカバーは珍しく、徳永さんは「ヴィンテージ」を除くすべてのアルバムで女性歌手の曲のみを歌い上げています。彼のハスキーで穏やかな声は、ささやくように心地よく響きました。女性の歌声とは異なるその優しさに、私は思わず涙することもありました。
桑田佳祐さん - 昭和歌謡を「桑田ワールド」に染め上げる
彼は「勝手にシンドバッド」で鮮烈なデビューを飾ったサザンオールスターズのボーカルで、ソロ活動も行うシンガーソングライターです。私にとってはドンピシャの世代であり、大学時代は彼の曲を「スナック」でよく歌ったものです。長距離ドライブの際も、半分以上の時間はサザンか桑田さんの曲が車内のカセットから流れていました。好きな歌は山ほどありますが、最近のお気に入りは「ほととぎす[杜鵑草]」ですね。
今回はカバーソングの話に絞ります。それまで桑田さんにカバーのイメージはあまりありませんでしたが、2008年に「昭和八十三年度! ひとり紅白歌合戦」を開催、その様子を2009年に Blu-ray・DVD で発表しました(下写真は第2回)。それ以来、5年ごとに昭和の歌謡曲、グループ・サウンズ、フォーク、ニューミュージックさらには平成の J-POP までを、「温故知新」の精神でリスペクトを込めて歌い上げています(このシリーズは完結したという噂もありますが、次があると嬉しいですね)。もちろん、彼独自のサウンド満載で素晴らしい DVD で、(馬鹿馬鹿しい演出もありそれも含めて)まさに「桑田ワールド」でした。彼のカバーの中で印象的な曲は(このシリーズではありませんが)「ヨイトマケの唄」です(タイトル写真と下写真(注1))。名曲です。
八代亜紀さん - 演歌の枠を超えたジャズへの挑戦
彼女は国民的歌手なので、説明は不要でしょう。「雨の慕情」「舟唄」など、数々のヒット曲で人々を魅了してきました。私個人としては「花水仙」や「ともしび」といった、静かに歌い上げる曲が心に染みました。残念ながら昨年末に逝去され、非常に寂しい思いです。
2012年頃から、八代さんはジャズやブルースなども本格的に取り組むようになり、コンサートでも演歌・ジャズ・ブルースを組み合わせたプログラムを披露するようになりました。同年発表されたカバーアルバム「夜のアルバム」では、「スタンダード・ナンバーと流行歌。わたしがナイトクラブで歌い始めた頃を思い出して作りました」という本人の言葉通り、ジャズの名曲を八代さんならではの声と表現力で歌い上げています(下写真)。
さらに翌年には、アメリカの名門クラブでジャズライブも成功させました。その様子は「演歌の女王がジャズを歌う」というドキュメンタリーで、「八代亜紀・ニューヨークでの挑戦」として NHK 総合テレビで放送されました。
今回は、徳永英明さん、桑田佳祐さん、八代亜紀さんというビッグネームのカバーアルバムをご紹介しました。もちろん、素晴らしいカバーアルバムを発表しているアーティストは他にもたくさんいます。女性歌手では、島津亜矢さん、岩崎宏美さん、BENIさん、樹里からんさん、手嶌葵さん、Uruさん、男性歌手では、大友康平さん、岡林信康さん、斉藤和義さん、さだまさしさん、中西保志さん、福山雅治さんなど、挙げればきりがありません。また機会を改めて、ご紹介したいと思います。
それでは、また。
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注1:NHK Music Special「桑田佳祐:JAZZと歌謡曲とシャンソンの夕べ in 神戸」より
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