元教授のシンガポール滞在記(1): 博多山笠とチキンライス(定年退職143日目)
これまでにヨーロッパからアメリカ、アジアの滞在記、そして日本国内の旅(8/19、笑)をお届けしてきました。最近のものから20年程前のものまでさまざまですが、お楽しみいただけているでしょうか。今回は、十数年前のシンガポール訪問での出来事をお話しします。直前に九州への出張があり、福岡空港からそのままシンガポールに向かいましたので、その辺りから始めます。
九州大学への出張は比較的多かったのですが、意外にも博多山笠の時期と重なることがなく、それが残念でした。しかし、その時はなんと山笠の直前で、駅前には十五番飾り山笠が設置されていて、街全体が熱気に包まれていました。当時は、福山雅治さん主演の NHK 大河ドラマ「龍馬伝」が大人気だったためか、「龍馬が奔(はし)る」というテーマで、龍馬はもちろん、お龍、桂小五郎、西郷隆盛、そしてペリーまでが飾りつけられた豪華絢爛な山笠でした(下写真)。
九大の先生から「山笠の時期だから、櫛田神社に顔を出してみるといいよ」と勧められ、夕食がてらホテル近くの櫛田神社へと足を運びました。櫛田神社は、1200 年以上の長きにわたり博多の町民文化や伝統行事を支えてきた由緒正しき神社です。境内では幸運にも、「櫛田入り」のための「追い山笠」の稽古が行われていて、真っ白の衣装に締め込み姿(山笠の参加者が着用する儀礼装束)の男衆たちが、勇ましく舁き(ひき)山笠を舁き回していました。観光客はほとんどいなかったのですが、多くの地元の人々がその様子を見守っており、特に、身内の人のために祈るように手を合わせる女性たちの姿に胸を打たれました。
さて、九大での仕事を終え、福岡空港からシンガポール航空でシンガポールに無事到着。シンガポールドルだけ用意してほとんど予備知識なく訪れたのですが、近未来的な街並みに驚きました。下写真のように高層ビル街が立ち並び、反対側には新しい形態の「マリーナベイ・サンズホテル」や世界最大級の観覧車「シンガポール・フライヤー」が見えました(下写真)。一方で、軍事パレードの準備も行われていて、街中に戦車や機関砲などが多数見られ、頭の中が少し混乱してしまいました(下写真)。
シンガポールでは、英語と母語の二言語政策が取られており、英語は問題なく通じました。ただ、タクシーでホテルに向かう際、運転手からその英語が少し違うと教わりました。シンガポール特有の英語は、シングリッシュ(「Singapore+English」をあわせて「Singlish」)というのだそうです。語順が異なったり、単語が省略されたり、発音に特徴があるとのことでしたが、あまり違和感なく生活はできました。まあ、私も日本語英語で十分になまっているのでお互い様ですね。
到着が夕方だったため、初日の夕食はホテルで済ませることに。シンガポールに来たら絶対に食べるべきと聞いていた「チキンライス」を注文しました。ゆでた鶏のぶつ切り、鶏のゆで汁で作ったスープ、鶏油で炒めた白米が出てきて、とてもあっさりとした上品な旨味がありました(タイトル写真)。その後も、滞在中にさまざまな店でチキンライスを楽しみました。お店によって、揚げた鶏であったり、付け合わせが違ったり個性がありましたが、すべておいしかったです。帰国後も、大阪なんばの専門店を探し出して食べに行ったほどですw。
疲れ果てたので寝ようかと思った矢先、外から「ドーン、ドーン」という轟音が・・・昼間に戦車を見たことを思い出しこれは何事かと飛び起きると、外で大きな花火が打ち上げられていました(下写真)。どうやら何かの記念日だったようです。いろいろなことがありすぎた、シンガポールの初日でした。
続きはまた次回。お楽しみに!
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注1:「博多祇園山笠」博多祇園山笠振興会(千年書房)より