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「ガイアの夜明け」が映し出すボストンキャリアフォーラム: 米国発「令和の就活」 (元教授、定年退職321日目)
情報が多すぎる時代に“考える”就活を
就職活動は人生の大きな転換期であり、特に大学院生(修士、博士課程)にとっては、研究活動と並行して行うこともあり、その重要性は一層増します。将来を左右する選択だからこそ、時間をかけて慎重に考えるべきです。ここで強調したいのは「考える」ことの本質です。学生たちに話を聞くと、就職活動に多くの時間を費やしているものの、実際には情報を前にただ悩んでいるだけで、深く考えていないケースが見受けられます。
喫茶店でメニューを選ぶ場面を想像してみてください。喉が渇いたのか、空腹を満たしたいのか、それとも甘いものが欲しいのか。目的が明確であれば、自然と選択肢は絞られ、スムーズに選択できます。就職活動も同様で、自分が何を求めているのか、どのようなキャリアを築きたいのかという「軸」を定めることで、情報過多の現代においても、自分に必要な情報を見極め、効率的に活動を進めることができるはずです。
「ガイアの夜明け」の特集「令和の就職戦線!異常アリ」
さて、先日、テレビ東京の「ガイアの夜明け」で「令和の就職戦線!異常アリ」という特集が放送されました。この番組では、日本での就活に焦点を当てるのではなく、アメリカで開かれる世界最大級の就職イベント「ボストンキャリアフォーラム」に注目し、海外で勉強している日本人学生の就職活動の現状を伝えていました。(タイトル写真、下写真もどうぞ:注1)
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<追記> 私が留学していた 30 年前には、インターネットもほとんど普及しておらず、海外での情報収集は非常に困難でした。特に、アカデミックなキャリアを目指す日本人学生(特に日本の大学への就職希望者)にとっては、狭き門であり、多くの学生が将来を嘆いていました。
企業も学生も覚悟の3日間: ボストンキャリアフォーラムのリアル
近年はグローバル展開を加速させる日本企業が増加し、国際的な舞台で活躍できる人材への需要が高まっています。「ボストンキャリアフォーラム」は、そのような背景のもと、日本企業と海外で学ぶ日本人留学生・留学経験者を結ぶ大規模な就職イベントです。ハーバード大学や MIT などの大学が集まるボストンに、アメリカ全土からバイリンガルの学生が集結します。参加企業には、学生が憧れるグローバル企業が名を連ねており、その多くがわずか3日間で内定を出すという、まさに「スピード選考」の場となっています。(下写真もどうぞ)
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企業側も、海外では日本のように企業名だけで応募が集まらないため、事前の準備に余念がありません。そして、いよいよ企業と学生の真剣勝負が幕を開けます。特に、近年の売り手市場を反映し、企業側も優秀な人材を獲得するため、積極的にアピールを行っています。
リクルートスーツで世界へ挑む: 日本人学生のボストン就職戦線
当日、会場にはリクルートスーツ姿の学生が多く見られ、日本の就職活動と似た光景が広がっていました(ボストンという土地柄、もう少し多様な服装を予想していたため、やや違和感を覚えました)。学生たちは興味のある企業のブースを回り、説明を聞き、エントリーシートを提出します。企業側は、その場で有望な学生に連絡を取り、別フロアで面接を実施します。このスピーディーな展開が、ボストンキャリアフォーラムの大きな特徴です。そして、面接を通過した学生には「招待ディナー」への招待状が届きます。これは、このフォーラムの名物とも言える、内々定を意味する特別なイベントです。(下写真もどうぞ)
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夜になると、会場周辺のレストランは日本人学生と企業関係者で溢れかえります(下写真)。1人あたり3万円前後の豪華なコース料理が振る舞われ、企業は学生に熱心にアプローチします。ディナーは1日1社限定であるため、企業にとっては、自社への志望度が高い学生を見極める貴重な機会となります。食事中にはお酒も入り、人事担当者が学生の隣に座り、1対1でじっくりと話をします。そして、3時間にわたるディナーを通じて、総合的な判断が下されます。
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翌日、内定を手にした学生たちの表情は晴れやかです。3日間で約半数の学生が内定を獲得すると言われていますが、複数の企業から内定を得る学生もいるため、企業側は最後まで気を抜けません。(下写真もどうぞ)
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このフォーラムからは、企業にとって優秀な人材の確保が企業の成長を左右する重要な課題であることがよくわかりました。一方、就職活動は学生たちにとって自分自身を見つめ直し、将来について深く考える絶好の機会です。この経験を通じて、学生たちが大きく成長することを願っています。
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注1:テレ東「ガイアの夜明け:令和の就職戦線!異常アリ」」より