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トリビュートアルバムへのいざない (その4):「吉田拓郎」が切り拓いた音楽(元教授、定年退職166日目)

前回は井上陽水さんをご紹介しましたが、今回は同じ1970年代初めに登場した吉田拓郎さんのトリビュートアルバムについてお話しします。陽水さんが「静」のイメージだとすれば、拓郎さんは「動」でしょうか。「人生を語らず」や「人間なんて」などの強いメッセージ性を持つ曲がある一方、「夏休み」や「旅の宿」といった日常や恋愛を歌い上げたことも拓郎さんの魅力でした。こうした幅広い楽曲と、テレビに出演しないという、当時のミュージシャンとしては異例の姿勢は、多くの若者を魅了しました。独特のファッションも相まって「普通の若者」の代弁者として絶大な支持を集めたのです。

<追記1> 以前、この note で、拓郎さんがコンサートで中島みゆきさんと「永遠の嘘をついてくれ」の素晴らしいデュエットをしたことについて書きました(6/27)。拓郎さんファンの方には、お読みいただけると嬉しいです(タイトル写真:注1)。

拓郎さんが切り拓いた功績と音楽シーンへの影響は、計り知れません。拓郎さん以前のフォークソングは、反戦などのメッセージソングが主流で、難解な言葉が使われていることも少なくありませんでした。しかし、拓郎さんは、日常的な言葉を使い、フォークをポップス界のメインストリームに押し上げました。

故小林亜星さん(作詞家)は、拓郎さん独自の作詞法について、「言葉の達人たち」(阿久悠 編, 扶桑社, 1993年)の中で、次のように明確に述べています。「日本語の扱いが随分変わりました。(中略) 吉田拓郎や井上陽水がやった革命なんです。(中略) 日本語でロックやポップスを歌ってもかっこよくなりました。ですから拓郎さんなんかの努力で、歌謡曲が非常にカッコよくなりました。(中略) 日本語の発音は英語風になっているんですよ」

<追記2> 私よりも一回り年上の拓郎さんの名前を初めて耳にしたのは、中学 1年の夏休みでした。近くの高校生が歌っていた「結婚しようよ」を初めて聴いた時のことを鮮明に覚えています。歌謡曲とは全く異なる、不思議な魅力に満ちた音楽だと感じ、徐々にハマっていったのです。


そんな拓郎さんは、2022年に惜しまれつつも音楽活動を引退しました(もちろん、復活を望む声は多く聞かれます)。


拓郎さんのトリビュートアルバムは、2008年と2022年にリリースされました。いずれも、拓郎さんの音楽に影響を受けたバンドやアコースティック系、女性ボーカリストなど、多彩なアーティストたちが参加しています。

私の iPhone から:1

2008年の「吉田拓郎トリビュート~結婚しようよ~」では、つじあやのさんの「加川良の手紙」、Jake Shimabukuroさんのウクレレが奏でる「大いなる」、ホフディランの「となりの町のお嬢さん」などが、私のお気に入りです。

私の iPhone から:2

2022年の「今日までそして明日からも、吉田拓郎 tribute to TAKURO YOSHIDA」は、拓郎さんの古希を祝して企画されたそうです。奥田民生さんの「今日までそして明日から 」、ポルノグラフィティの「永遠の嘘をついてくれ」、寺岡呼人(w.竹原ピストル)さんの「落陽」など、聴きどころ満載のアルバムです。他にも、井上陽水さん、一青窈さん、鬼束ちひろさん、髙橋真梨子さん、德永英明さん、Mrs.GREEN APPLE、THE ALFEEなど、ベテランから新進気鋭のアーティストまで参加しています。

2022年版トリビュートの一部

これらのトリビュートアルバムは、拓郎さんを知らない若い人たちにも楽しめる、世代を越えた作品になっていると思います。「今」を代表するアーティストたちが、リスペクトしつつ、拓郎さんの曲を新たな角度から蘇らせていて、とても楽しめます。

実は、私も2022年のトリビュートアルバムをこのたび購入し、繰り返し聴いています。拓郎さんと同じ時代を生きた者として、感慨深いです。


さて、次回はどなたについてご紹介しましょうか。お楽しみに!

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注1:https://www.youtube.com/watch?v=9Fe0p_qDmhA より



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