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100カメ「ボートレース女子戦」で見えた、弱肉強食の迫力と「がむしゃら新人」の挑戦: 元教授、定年退職174日目

これまでNHK番組「100カメ」の印象的な放送回をご紹介してきましたが、今回は「水上の格闘技」とも呼ばれるボートレースの女子レーサーたちに密着した回をお伝えします(タイトル写真、下写真:注1)。100台のカメラが捉えた、勝負の世界に生きる彼女らの鮮烈な姿と本音に迫ります。


私はこれまでボートレースを生で見たことがありませんでした。競馬などとは異なり、人間と機械の競技であるため、何となく敬遠していました。しかし、今回の番組を通じてその魅力を知り、一度レース場に足を運んでみたくなりました。


舞台となったのは静岡県の「ボートレース浜名湖」で、日本最大級の水上面積を誇ります。その一角に関係者以外立入厳禁の競技エリアがあり、番組では主にバックヤード、ピットとその裏、整備室などの様子が映し出されました(下写真)。そこには、私がこれまで見たことのない世界が広がっていました。

日本最大級の水上面積を誇る「ボートレース浜名湖」(注1)
100台のカメラが捉える競技エリア内(注1)


レース前日、選手たちは大きな荷物と共に集合し、身体測定や整備を行います。持ち込める荷物は制限され、金属探知機を通った後、全員が同じ宿舎で共同生活を送ります。まるで、携帯電話を取り上げられた高校の部活合宿のようでした。参加レーサーの年齢層は幅広く、若手が多い中、50歳以上のベテランも多数。中には60歳で生涯獲得10億円以上のレジェンド「ヒダカ」さんの姿もありました(下写真)。

そうそうたる生涯獲得金額(注1)


会場に入ると、まずボートとモーターの抽選が行われます。個体差が勝負の行方を左右するため、選手たちは勝率が高く、回転数の高いものを望みます。その後、試運転やプロペラの調整を行います(下写真)。特にプロペラの調整は重要で、選手自らが直接叩いて角度を微調整します。例えば、わずかな角度の違いが水のつかみ方やモーターの回転数に影響し、スタートに強い「出足型」や直線が早い「伸び型」など、自身の戦術に合わせるのだそうです。長年の経験と勘が求められるため、ベテランの技術力が際立ちます。

選手自らが直接叩いてプロペラの微調整(注1)
調整は続く(注1)


そして、600mのコースを3周するレースが開始されます。スピードは80kmくらいですが、水面すれすれなので、体感速度は120kmにも達するとのこと。この速度では水がまるで固体のように硬くなり、命の危険と隣り合わせです。「負けず嫌いが最大のエンジン」と言う選手たち。レース直前の控室は緊張感に包まれ、誰も会話を交わしません。水上では先輩後輩関係なく、純粋な実力勝負が展開されます。(下写真をどうぞ)

緊張感に包まれるレース直前の控室(注1)
いざ実力勝負の乗艇へ(注1)
レース開始(注1)


この厳しい世界に、1年目の新人「オサカベ」さんが挑んでいました。毎朝一番に会場入りし、番組のカメラが回っている間は、ほとんど走り回っています(下写真)。しかし、成績は87戦でわずか1勝、ほぼ毎回最下位とのこと。今回のシリーズでも 6, 5, 3, 5, 6, 6 着と、ほとんど勝負に参加できていない状態でした。新人でもハンデなしの、あまりにも厳しい勝負の世界なのです。

1年目の新人オサカベの挑戦(注1)

彼女が常に走り回っているのには理由があります。それは、自分の準備だけでなく、先輩のサポートも積極的に行っているからなのです。先輩への献身的なサポートを通して信頼を得て、技術や知識を教わるのだそうです。実際、オサカベさんも後半には先輩から練習に誘われ、プロペラの仕上がりやターンのタイミングなど、アドバイスをもらえるようになりました(下写真)。

先輩からのアドバイスをもらうオサカベ(注1)

そして、いよいよ最終レース。オサカベさんはそのアドバイスを活かし、最高のスタートを切ります。そして、インコースに切り込み、空いた内側を強襲して見事1位を獲得しました。地元開催ということもあり、多くのスタッフや先輩から祝福の拍手を受けていました。(下写真をどうぞ)

オサカベの最終レース(注1)
オサカベ見事1位を獲得(ただ、まだ2勝目)(注1)


しかし、彼女はその後も相変わらず走り回っています。このようにして彼女は強くなっていくのですね。「縦社会、今はどうなの?」と司会のオードリーは疑問を呈していましたが、個人的にはこういう時期も必要な気がします(ご批判は甘んじて受けます)。 


やはりドキュメンタリー番組は楽しいですね。また過去の番組も探してご紹介させていただきます。どうぞお楽しみに!

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注1:NHK テレビ「100カメ」(約2年前)より


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