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北海道・釧路湿原に息づくタンチョウの世界: 「鶴になった男」の見返しと、愛の追い立て (元教授、定年退職259日目)

再び「鶴になった男」を観て

先日、懐かしい映像と再会しました。1987 年の NHK 特集「鶴になった男~釧路湿原 タンチョウふれあい日記~」です(下写真)。この番組は高橋良治さんが、北海道・釧路湿原の野鳥タンチョウ保護に取り組んだ記録です。長年探していたこの番組を NHK オンデマンドで見つけ、夜中に思わず月額 990 円の見放題プランに加入してしまいました。これを機に、NHK の過去の映像との出会いを楽しみたいと思っています。

1987 年の NHK 特集「鶴になった男~釧路湿原 タンチョウふれあい日記~」(注1)


高橋さんは釧路丹頂鶴自然公園で 30 年にわたり、タンチョウの保護に尽力するとともに、親鳥が放棄した卵の人工ふ化と飼育を行い、育て上げた雛を数多く野生に戻すことに成功しました。その過程で、高橋さんが歌うとタンチョウが一緒に踊ったり、言葉さえ通じ合えるようになったといいます。(下写真もどうぞ)

高橋さんが歌うとタンチョウが一緒に踊ったり、言葉さえ通じ合えるようになった(注1)


特に注目すべきは、後半部分です。人工ふ化したタンチョウの雛を熱心に育て、最後に飛び方を教える場面が感動的です。親鳥の飛行を見たことのない雛は、最初、高橋さんと一緒に走るだけです。高橋さんは汗だくになって走り回り、手で羽ばたきの動作を示します。雛は徐々に高橋さんの手の動きを真似するようになり、やがてふわりと浮き上がります。最初はぎこちなかった飛行も、次第に堂々とした羽ばたきへと成長していくのです。長年教壇に立ってきた私にとっても、学生たちが飛び立つ瞬間を何度も見てきた経験と重なり、涙が出そうになりました。

親鳥が放棄した卵の人工ふ化と飼育を行う(注1)
高橋さんは汗だくになって走り回り、手で羽ばたきの動作を示す(注1)
やがてふわりと浮き上がります(注1)


「ワイルドライフ」の「厳冬釧路湿原 タンチョウ 雪原に舞う」より

続いて、NHK 番組「ワイルドライフ」の特集「厳冬釧路湿原 タンチョウ 雪原に舞う」を視聴しました。遅ればせながら、タンチョウについて簡単に紹介します。タンチョウは鶴の仲間で、日本では北海道だけに見られ、国の特別天然記念物にも指定されています。その美しい姿から縁起の良い鳥とされ、翼を広げると2メートル 40 センチにも達します。タンチョウは漢字で「丹頂」と書きますが、「丹」は赤を意味し、頭のてっぺんが赤いことから名付けられました。ちなみに、赤く見えているのは皮膚で、興奮するとこの部分が広がります。たとえば、他の家族に警告する時など、赤い部分が大きくなるのです。(タイトル写真、下写真もどうぞ:注2)

厳冬釧路湿原(注2)
タンチョウの群れ(注2)

タンチョウは魚類を好む雑食性で、冬季でも凍結しない河川で採餌します。明治時代の乱獲で一時絶滅の危機に瀕しましたが、1950 年代から冬の食料を補うためにトウモロコシを与える活動が始まり、2014 年には個体数が 1500 羽以上にまで回復しました。釧路湿原にはキタキツネやオジロワシなどの天敵が多く、家族や仲間と群れることで外敵からの攻撃を避けています。これらの天敵が現れると、親鳥は子を守るように間に割って入ります。幼鳥は親の保護なしでは生き延びるのが難しいのです。


親は半年以上にわたって子供に食べ物を与え、天敵から守ります。しかし、2月下旬になると子育ての大きな節目を迎えます。子供が食べ物をねだっても、親は無視し始め、時には子供を蹴るような行動も見られます。この一見残酷に映る行動は、実は幼鳥の自立を促すための必要な過程なのです。この時期を境に、親子はそれぞれの生活を始めます。

時には子供を蹴るような行動も(注2)

<追記> 興味深いことに、親鳥が子離れを促す背景には、新たな繁殖期の到来があります。成鳥たちは求愛ダンスを始め、頭部の上下動作から始まるこの優美な儀式は2週間以上続き、双方の動きが完全に調和するまで続けられます。これは、先日 note に書いたフラミンゴの高速ダンスにも通じるものがありますね。

成鳥たちの求愛ダンス(注2)


一方、親元を離れた若鳥たちは同世代の群れを形成し、約1年間を共に過ごします。この期間は、将来のつがい形成に向けた重要な学習期間になるのです。厳寒の釧路湿原で繰り広げられるタンチョウたちの壮大な生命の営みは、世代を超えて受け継がれていきます。

若鳥たちは同世代の群れを形成する(注2)


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注1:NHK 特集「鶴になった男 ~釧路湿原 タンチョウふれあい日記~」(1987 年)より
注2:NHK 番組「ワイルドライフ:厳冬釧路湿原 タンチョウ 雪原に舞う」より

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