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京都の思い出と卵の科学: だし巻き定食からゆで卵まで (元教授、定年退職238日目)
「姉・三・六角・蛸・錦」——関西の人なら馴染み深いこの歌は、京都の三条通り付近から四条へ向かう際の横丁を順に数え上げたものです(追記参照)。このあたりは学生時代、昼も夜もよく遊びに行った思い出の地です。蛸薬師か六角通りだったでしょうか、すき焼きの名店「翁亭」(暖簾を下されて久しいですが)の近くにお気に入りの定食屋がありました。大きな看板もない、いわゆる昔ながらの店で、最初は京都の友人に連れて行ってもらいました。
<追記> 三条通り付近、北から姉小路通り、三条通り、六角通り、蛸薬師通り、錦小路通りと、歌の順で続きます。
思い出のだし巻き定食
そこで勧めてもらったのが「だし巻き定食」でした。卵焼きは大好きでしたが、一人では絶対に頼まない定食でした。出てきたものは、出汁にひたひたに浸った卵焼きで、箸で持てないくらい出汁が染みて柔らかく、申し分のない存在感でした。それまで卵焼きをメインにした定食など想像もしていませんでしたが、この一皿で考えが変わりました。
ちなみに、京都には学生が多いためか定食屋が多く、「よく焼いて」「ネギを抜いて」「大盛りで」など、少しのわがままは聞いてもらえます。ダメならダメと言われますし、常連になると黙っていてもそのように調理してもらえたりしました(皿洗いで食事代が無料になる店もありました)。面白いことに、注文時に自分の名前を告げるスタイルの店も多く、時には芸能人の名前を名乗る客で店内が沸くこともありました。
「チコちゃんに叱られる」で知った卵の科学: 構造とゆで方
さて、今回の話は「卵」です。NHK の番組「チコちゃんに叱られる」で、「ゆで卵の上手なむき方」という興味深い話題を特集していました。答えは、卵の鮮度により、古い卵は剥きやすく、新しい卵は剥きにくいというものでした(タイトル写真、下写真:注1)。番組では、その理由と機構から新しい卵でも剥きやすくする方法までを紹介していましたが、私はそのノウハウよりも、卵の殻の構造や茹でた時の反応について大いに興味を持ちました。
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まず卵の構造を知るため、番組では新しい卵と古い卵をお湯で温める実験を行ったところ、新しい卵から多量の泡(二酸化炭素(炭酸ガス))が発生しました。この二酸化炭素は、卵が鳥の体内にあった時に欠かせないもので、卵の内部を守る重要な役割を担っています。卵の殻には約1万個も「気孔」と呼ばれる微小な穴が開いていて、これを通じて空気の取り込みと二酸化炭素の排出が行われています。普段、この二酸化炭素は白身に溶け込んでいます。(下写真もどうぞ)
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熱を加えてゆで卵を作ろうとすると、加熱によりその二酸化炭素が膨張し、白身を膨れ上がらせ、卵殻膜の外に出てきます。この時、白身が殻に密着して固まるため、新鮮な卵ほど殻が剥きにくくなるのです。(下写真もどうぞ)
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新鮮な卵でも綺麗に殻を剥く方法
つまり、白身内の二酸化炭素を取り除けば、新しい卵でも殻が綺麗にむけるはずです。市販のゆで卵がきれいに殻剥きできている理由は、約1週間の冷蔵保管で二酸化炭素を抜いているからだそうです。
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1週間待てない人用の別の方法も紹介されていました。卵には丸い側と尖った側がありますが、その丸い側にスプーンで軽くヒビを入れます(卵の丸い側には「気室」と呼ばれる空間があり、スプーンでヒビを入れても白身は出てきません)。二酸化炭素は気室に多く留まっているため、茹でている間に多くの二酸化炭素が抜けていきます。その結果、非常に綺麗に剥けるようになります。
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<追記> スプーンでヒビを入れるのが嫌な人は、ゆで上がった卵を少し水の入ったタッパーに入れ 10 秒ほど振ります。すると、亀裂から入った水が殻と白身の間に入り込み、剥きやすくなります。ただし、これは後片付けが面倒ですね。
料理は、実は科学の視点から見ることで、様々なことが理解でき、楽しくなります。私は料理はほとんどできませんが(汗)、科学実験だと思ってやれば意外と楽しいかも知れません。
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注1:NHK番組「チコちゃんに叱られる(11/15)」より