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オードリー若林、司会で導いたマグロの血合い新名称「茜身」: 所ジョージも唸る美味 (元教授、定年退職310日目)

オードリー若林が会議をプロデュース!

先日、NHK で放送された「本日の司会はオードリー若林!」という一風変わった番組があり、そこでは若林正恭さんが一般企業の会議や選考会に司会として派遣され、その場を回す様子が描かれていました。この番組は、若林さんが芸能界で培った司会進行の技量を、一般のビジネスシーンに応用する形で、非常に興味深い内容でした。(下写真、<追記> もどうぞ)

芸能界で培った司会進行の技量を、一般のビジネスシーンに応用する(注1)

<追記:若林さんについて> 若林さんといえば、その飾らない人柄と鋭い観察眼が特徴です。お笑い芸人としての活躍だけにとどまらず、ラジオパーソナリティやエッセイストとしても才能を発揮しています。また、芸能界活動の傍ら、自ら Uber の配達もしていた時期があり、以前の  note (7/1) で取り上げました。


今回は、神奈川県三浦市で行われたマグロの「血合い」に代わる新しい名称を決める選考会が取り上げられました。選考委員は 10 人で、マグロの流通や飲食店の関係者、水産研究所の研究員など多岐にわたります。彼らは事前に司会者が誰か知らされていなかったため、若林さんが現れて大変驚いていました。血合いの新名称公募の応募総数は 2,500 件以上あり、今回の選考会では事前に厳選された 10 個の候補名称から最終決定を行うという選考プロセスが、若林さんの司会のもとで進められました。(下写真もどうぞ)

マグロの「血合い」に代わる新しい名称を決める選考会(注1)
厳選された10個の候補名称から、最終決定が行われた(注1)


司会若林が見せたMC術 ―「茜身」命名会議の舞台裏

議論は、最初に挙がった 10 個の候補から最終的に3つに絞り込むプロセスから始まりました(最終案はその中から投票で決定)。若林さんの司会で特に印象的だったのは、以下の3点です。

・場の雰囲気づくり:  会議の冒頭に短いアイスブレイクを挟むことで、参加者の緊張を解きほぐし、自由で活発な議論が行われやすい雰囲気を作り出しました。

・全員参加を促す進行:  参加者一人ひとりが積極的に議論に参加できるよう、発言を促しつつ、質問を巧みに投げかけることで、多様な意見を引き出していました。質問の順番も良く練られていると感じました。

・明確な理由付けによる絞り込み:  候補を絞り込む際には、それぞれの候補に対する賛否の理由を明確化し、参加者の納得の下で議論を成熟させていきました。

これらの丁寧な進行が、会議を円滑にし、最終的に全員一致で「茜身(あかねみ)」という名称が選ばれる結果に繋がりました。


<追記:マグロの「血合い」を新たな食文化に>     一般に「血合い」と呼ばれる部分ですが、これはマグロの背中と腹の間にある赤みを帯びた筋肉部です。この部位は高タンパク、低カロリーで、さらに鉄分や DHA や EPA を豊富に含んでいます。残念なことに、しばしば「血の塊」と誤解され、敬遠されることも多いのが現状です。しかし近年の研究によって、この血合いには抗酸化作用のある「セレノネイン(追記参照)」が多く含まれていることが明らかになり、生活習慣病の予防やアンチエイジングの効果が期待されています。問題は、血合いは酸化しやすい成分が多いため、鮮度がとても落ちやすいことでした。ただその血合いを美味しく調理する技術が新たに見いだされたことで、今回の名称公募になったわけです。(下写真もどうぞ)

マグロの「血合い」を新たな食文化に(注1)

<追記:セレノネインについて> セレノネインは、2010 年に報告された新規化合物で、その化学構造を見ると、エルゴチオネインのチオケトン基がセレノケトン基に置き換わったイミダゾール化合物です。セレンを含んでいるため強力な抗酸化作用があることが示唆されます。なんと水溶性ビタミンE の約 500 倍のラジカル消去活性を示します(注2)。


テレビで繋がる「茜身」の物語 ―若林の司会から所さんの絶賛まで

「本日の司会はオードリー若林!」の放送から約一か月半後、MBS/TBS の「所さん お届けモノです!」という番組で、この「茜身」が紹介されました。この回は、相模湾を舞台に、レポーターが三浦市の特産品や新名物を見つけて、所さんに紹介するという内容でした。美味しくないものは素直に指摘するのが所さんの魅力の一つなので、レポーターも真剣です。


元宝塚の女優、真飛聖(まとぶせい)さんがレポーターを務め、マグロで有名な三崎漁港を訪れました。地元のゆるキャラの三浦ツナ之介や地元の方々に新名物を尋ねると、推しはマグロの「茜身」とのこと(下写真)。最初は、真飛さんもスタジオの方々もその部位がどこなのかわかりませんでしたが、アンチエイジング効果が高いと聞き、大変興味が湧いていました。

「所さん お届けモノです!」:真飛聖さんが新名物を教えてもらう(注2)


漁港の加工場にて、冷凍された天然本マグロを解体して茜身の部位とその特徴が詳しく説明されました。保存から運搬に至るまで徹底した温度管理のもとで、その鮮度が保たれ、美味しく食べられる技術があるとのことでした。真飛さんやスタジオの方々がきれいなあかね色の刺身を味わってみると、全く生臭みはなく、まるでお肉のような噛み応えがあり、魚特有の良い香りと脂が口の中に広がると大喜びでした。その後、漬け焼きも味わった所さんが「なんだ、この柔らかいジャーキーは!」と感激していました。私も、ぜひ機会を見つけて三崎を訪れ、この新たな味覚を堪能してみたいと思いました。(タイトル写真、下写真もどうぞ:注2)

三崎には「茜身」を美味しく食べられる技術がある(注2)
「茜身」を使った料理(注2)

       

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注1:NHK 番組「本日の司会はオードリー若林!」より
注2:wikipedia「セレノネイン」より  https://ja.wikipedia.org/wiki/セレノネイン

原著:Y. Yamashita and M. Yamashita; Identification of a Novel Selenium-containing Compound, Selenoneine, as the Predominant Chemical Form of Organic Selenium in the Blood of Bluefin Tuna, J. Biological Chem., 285, 18134 (2010). (DOI: 10.1074/jbc.C110.106377)

注3:MBS/TBS 番組「所さん お届け物です!」より


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