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元教授、趣味の落語のはなしを少し(その2、小三治さん)定年退職54日目
昨日は枝雀さんについて書かせてもらいました。この調子だと、落語の連載が長くなりそうなので、残念ですが上方落語の話は次の機会に延期いたします(米朝さんの落語や米朝一門会の話もその時に)。今回は、私が落語の趣味を再燃したきっかけについてお話しします。
それは、タイトルにも書いた通り、柳家小三治さんです。小三治さんは、柳家小さん師匠の弟子で(小さん師匠はお味噌汁「あさげ」のCMなどで思い出される方も多いかもしれません)、昔は二枚目の落語家としてテレビに時々出演されておられました。私もお顔はよく存じていましたが、落語は聞いたことがありませんでした。
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しばらくテレビで見なくなってから、ある時、「マクラ」の面白い落語家がいると話題になり、それが小三治さんだということがわかりました(「マクラ」とは、落語の本題に入る前の導入用の短い話)。彼のマクラだけを集めたCDを手に入れ聴いてみると(下記写真など)、ぶっきらぼうな話し方なのですが、非常に面白いのです。それを書き起こした書籍も出版されていました。ただ個人的な感想としては、話すペースがゆっくりで、私には少し合わないかな、と最初は感じました。
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その後、しばらくして神戸で開催された「東西落語名人選」という落語会に小三治さんも出演されました(平成21年9月19日:下写真)。そこで、初めて生の小三治さんの高座を聴くことになりました。高座に出てきて、何をするのかと見ていますと、ゆっくりと準備をして、お茶を飲んでひと言「あー」と。その「間」がスゴい。お客さんはそれだけで大爆笑! なぜ? どこが? 面白いのかわからないですが、とにかく最高に面白いのです。 これは参った!! 私は完全に引き込まれました。マクラは期待に応えてタップリ、つっかえながら飄々と話すのですが、これが絶妙! わざとなのか? と。(これは、CDではわからないわ)
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落語の本題に入ると、その時は「禁酒番屋」という古典でしたが、観客は完全に引き込まれていました。目の前が江戸時代の世界でした。特に、途中で役人が小便を飲まされる場面では、お客さんから悲鳴が上がっていました。
その後、十回近くは聴く機会がありました。もちろんいつも絶好調というわけではないのですが、それも含めて大好きな小三治さんでした。私のおすすめ噺は、「船徳」、「百川」、「死神」などです。マクラだけで終わった出番もありましたが、もちろんその長いマクラも大好きでした。
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その後、落語協会の会長を務められ、人間国宝にもなられましたが、3年ほど前に鬼籍に入りました。個人的には、お忙しくない状態でゆっくりと長生きしてもらい、もっといろいろな噺を聴かせてもらいたかったと残念でなりません。ご冥福をお祈りいたします。
落語のはなし、次回ももう少し続けます。よろしければお付き合いください。
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注1:別冊太陽スペシャル「十代目 柳家小三治」、平凡社(2018)
注2:「どこからお話ししましょうか」、岩波書店(2019)