チーズ沼にハマる: 帯広農業高校の若者たちの情熱と挑戦 (元教授、定年退職241日目)
海外に行くまで、私にとってチーズといえば「雪印 6Pチーズ」などのプロセスチーズのことでした(下写真)。居酒屋のメニューにあっても種類の違いはよくわからず、買うのはせいぜい「チーズバーガー」くらいでした。
ところが、約 30 年前のアメリカ滞在中に訪れたグロッサリーストアのチーズ売り場では、その種類の豊富さに圧倒されました。パーティーで酒の肴として供されるチーズも、こだわりの品が多く、「これは○○産のブルーチーズで、カビの状態が○○で、かなりハードなタイプです」といった具合に、詳細な説明を受けました。そんな経験を通して、フィラデルフィア・クリームチーズ(ベーグルとの相性抜群!(note,10/29)、下写真)など、私自身の好みのチーズを徐々に見つけることができました。
チーズへの関心が本格的に高まったのは、その後何度かドイツやフランスを訪れたことがきっかけです。現地のホテルの朝食ビュフェでは、日本のホテルほど料理の品数は多くありませんでしたが、チーズの種類の豊富さには驚かされました。今思えば、どんなチーズを食べたのかメモしておけばよかったと後悔するばかりですが、当時は名前もよくわからないまま、いろいろなチーズを少しずつ試していました。当時、とりわけ気に入っていたのは、オーソドックスなブリーチーズでした。
先日、NHK Eテレで放送された若者向けバラエティ番組「沼にハマってきいてみた」で、チーズの特集がありました。番組では、お笑い芸人ラランドのサーヤさんとミュージシャンのハマ・オカモトさんが司会を務め、帯広農業高校の生徒とOBがゲストとして出演していました。(下写真もどうぞ)
ラクレットから始まるチーズの世界
番組は、ラクレットチーズの紹介から始まりました。私が初めてラクレットを口にしたのは、あるレストランで提供されたリゾットでした。具体的な場所は忘れてしまいましたが、目の前で大きなラクレットチーズの断面を温め、熱々のリゾットの上にかけてくれたことを覚えています。味も美味しかったのですが、その豪快な演出に驚きました。番組では、茹でたじゃがいもに溶かしたラクレットをかける定番の食べ方を見せてくれました(タイトル写真:注3)。
帯広農業高校生が作る絶品チーズ
帯広農業高校の生徒が休日に学校施設を利用して、チーズ作りに励む様子が紹介されていました。彼女は、なんと朝の5時半からチーズ作りに取り組んでいました。番組では、その工程も詳しく解説していました。発酵、固める、水分を抜く、成形という4つの基本工程があり、特に重要なのがミルクを固める工程です。酵素を入れるタイミングや混ぜ具合、温度管理などに細心の注意が必要です。毎回条件が異なるため、この工程での失敗も多いとのことです。(下写真もどうぞ)
続く水分を抜く工程では、ゆっくりと混ぜながら余分な水分を出し、チーズの元となる豆腐状の「カード」を作ります。このカードの加工方法により、カマンベール、ゴーダ、チェダー、ゴルゴンゾーラなど様々なチーズが出来上がるそうです(上写真)。番組では、モッツァレラと、手でさけるストリングチーズの製造工程が紹介されていました。
ホエイから作る「ブラウンチーズ」への挑戦
そして、私が最も興味を持ったのは、帯広農業高校のOBと共同で行っていた「ブラウンチーズ」作りです。チーズ製造時に出る上澄みの乳清「ホエイ」を活用した、ノルウェー発祥の乳製品です(私は初めて知りました)。ノルウェーでは国民食として親しまれており、キャラメルのような香ばしい香りと、チョコレートやピーナッツバターに似た味わいが特徴だそうです。通常はチーズ作りには必要なく廃棄されてしまうホエイを活用し、途中で生クリームを加えるそうですが、基本的には煮詰めるだけのシンプルな製法です。出演者たちはカラメル風の香りと、キャラメルとチーズケーキの中間のような味わい、そして滑らかな食感に感動していました。私は昨日、何軒かのスーパーを巡りましたが、残念ながら見つけることができませんでした(KALDI にあるとの情報を得たので、入手できましたらご報告いたします)。(下写真もどうぞ)
チーズ作りの魅力は、単にデータ通りの作業では成功しないところにあるようです。様々な要因を考慮しながら追求する過程には、まさに職人技としての面白さがあるのだと思います。化学実験にも似た楽しさがあるのかもしれません。
−−−−
注1:「雪印メグミルク 6Pチーズ」ホームページよりhttps://www.snow6p.jp/
注2:注2:「森永乳業」ホームページより
https://www.happy-philly.jp/product/
注3:NHK Eテレ番組「沼にハマってきいてみた:チーズ」より