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サイエンスが解き明かすヒラメの秘密: 緑色LEDが養殖ヒラメの成長を加速! (元教授、定年退職324日目)
先日、関西テレビ制作の実験バラエティー番組「かまいたちの机上の空論城」で興味深い特集が組まれており、私はついついその内容に引き込まれてしまいました。今回のテーマは「寿司と蕎麦の作法」。この特集には、旧皇族の竹田家出身で明治天皇の玄孫でもある政治評論家の竹田恒泰さんがゲスト講師として登場しました。日本古来から伝わる作法を叩き込まれた竹田さんが、かまいたちの2人とタレントの渋谷凪咲さんに対し、寿司と蕎麦の頼み方や食べ方などに関するクイズを出題しました。ただし今回のテーマは、伝統的なルールを重んじるというよりも、いかにおしゃれでかっこいい、すなわち「粋」な食べ方ができるかをチェックする面白い内容でした。(下写真もどうぞ)
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寿司の粋な頼み方を探る: 竹田恒泰さんの意外な指南
番組の中で、寿司屋で最初に何をオーダーするかという質問に差し掛かりました。私自身、長年の習慣で「ヒラメ」か「鯛」の白身魚を最初に選ぶと思っていたのですが、竹田さんが選んだのは「玉子」でした。確かに、一部の寿司屋では卵焼きに大変こだわっていると聞いたことがありますが、それを最初に頼む人に会ったことはありませんし、大将から勧められた経験もありません。竹田さんによると、玉子には「口の中の雑味を取り除く」という効果が期待できるとのことでした。玉子以外の選択としては、酢で締めたものが食欲を増進させるため「粋」であるとされていました。しかし、私としては数十年にわたって白身系でスタートすることにこだわりがあったので、少し納得がいかない部分も残りました。このあたりは、まさに意見の相違ですね、それとも私が「粋」でないということか・・・。
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「サイエンス ZERO」が探る日本の魚食文化の未来
さて、私が寿司屋で最初に頼む「ヒラメ」についてですが、近年、その養殖技術に劇的な進展が見られています。この技術革新について、NHK の「サイエンス ZERO」で紹介されていたので取り上げたいと思います。番組では最初に、近年の漁業における動向が説明されており、天然魚の生産量が横ばい傾向にある一方で、養殖が急速に増加し、2年前には養殖の割合が天然魚を上回ったとのことでした。海の資源を大切にしつつ、魚食文化も絶やさないためには、新しい養殖技術の導入が不可欠だと強調されました。(下写真もどうぞ)
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緑色の光が秘める驚きのチカラ
その中でも特筆すべきは、大分県のヒラメ養殖場での驚くべき進展です。この養殖場では、緑色の LED ライトを使用しており、水の色が無色透明ではなく緑色でした。代表に聞くと、この明かりをつけただけでヒラメの成長が倍違うとのことで、その理由については詳細が分からないということでした。それを解明すべく、北里大学の高橋先生の研究チームは、そのメカニズムの解明に取り組みました。ちなみに、太陽の光は多くの光(波長の違う光)を含んでおり、プリズムを通すと虹のような七色に分かれます。光が水中をどのように通るかを調べると、波長の長い赤い光はあまり深くまで届かない一方で、緑や紫の光はより深くまで届くことが明らかになりました。(タイトル写真、下写真もどうぞ:注2)
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緑LEDで激変するヒラメの行動
一方、ヒラメの目の網膜を調べたところ、興味深い特徴が発見されました。色を感知するタンパク質(視物質)が6種類あり、そのうち3種類が緑色の光に反応するというのです。すなわち、ヒラメにとって最も見やすいのが緑色の光であることがわかりました。実際に緑と赤の光を当てた二種類の水槽でヒラメを観察しところ、挙動には顕著な違いがありました。緑の水槽では活発に餌を探し回っているのに対し、赤の水槽ではほとんど底に沈んだままでした。これらの結果から、ヒラメは緑色の光が豊富な環境で視界がクリアになり、餌を見つけやすくなるため活動が活発になり、その結果成長が促進されると考えられます。(下写真もどうぞ)
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養殖技術の未来
こうした研究により、緑 LED ライトを活用することでヒラメの成長を促すことが明らかになりました。番組では、科学技術を活用したその他の画期的な養殖方法も紹介していました。特に驚かされたのは、宇宙での養殖や完全養殖の試みでした。この自給自足の養殖システムと生殖幹細胞を利用したシステムは、非常に興味深い技術として注目を集めています。これらの技術についても、機会を見つけて報告させていただく予定ですので、どうぞお楽しみにお待ちください。
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注1:関西テレビ「かまいたちの机上の空論城:日本人がまだ知らない 粋な寿司・蕎麦の食べ方がある!・・・ハズ」より
注2:NHK E テレ「サイエンス ZERO:養殖x科学 の最前線」より