昭和と令和の正月番組を振り返って: 元教授も挑戦した格付けチェック (定年退職280日目)
昨日、久しぶりに科学に関する話を書いたせいか、疲れてしまいました。まだ頭は正月気分が抜けていないようなので、今日は正月用の話題に戻りたいと思います。先日、恒例の正月番組「芸能人格付けチェック!」を視聴し、さらに昨年の放送分も併せて観ました。昨年の放送は、北陸地方の地震と羽田空港での航空機事故の影響で数日延期されていたため、私にとっては今回が初めての視聴となりました。
昭和の正月番組: 家族で楽しむテレビの黄金期
昭和時代、特に高度経済成長期以降、お正月はこたつでみかんを食べながら、家族揃ってテレビを囲むのが定番の過ごし方でした。
当時の年末から正月にかけての番組編成は、まるで一連のストーリーのように構成されていました。大晦日の夕方には「輝く!日本レコード大賞」が放送され、その後「NHK 紅白歌合戦」へと続き、最後は「ゆく年くる年」で新年を迎えるという流れが確立していました。レコード大賞の受賞者が紅白に間に合うのか、今年の紅白はどちらが勝つのか、「ゆく年くる年」で今年も雪景色が見られるのか、などドキドキしながら年末を過ごしたものでした。多くの日本人にとって、それは年末年始の儀式の一部と言えたでしょう。
昭和時代の正月番組は、家族みんなで楽しめる内容が中心でした。娯楽が少なかった当時、家庭にテレビは一台しかなく、子供から大人まで楽しめる番組作りが求められていたのかもしれません。午前中には、各地の中継を交えたお笑い番組が放送され、正月らしい華やかな演出が施されていました。海老一染之助・染太郎の伝統演芸・太神楽(染之助が傘の上で駒を回すなど曲芸を見せ、染太郎が話術で観客を沸かせるスタイル)や、江戸家猫八の動物の鳴き真似など、正月に見ると心が和む芸人たちが多く登場しました。
午後から夜にかけては、「新春スターかくし芸大会」が特に印象的でした(タイトル写真左:注1)。毎年好評で、途中からは2日連続で放送されることもありました。調べてみると、1980 年代初頭まで毎回 30% 以上の驚異的な視聴率を記録し、1980 年には 50% 近い視聴率を達成したこともあったそうで、現代のテレビ界では考えられないほどの人気でした。高橋圭三と芳村真理の名コンビによる司会も記憶に残っています。堺正章のテーブルクロス引きや、ハナ肇の銅像の扮装などもよく覚えています。その他、「欽ちゃんの全日本仮装大賞」や「新春なるほど!ザ・ワールド」なども人気番組でした。
令和の正月番組がもたらす新たな楽しみ方
時代は変わり、テレビの視聴スタイルも大きく変化しました。人々がスマートフォンやタブレットで手軽に動画を楽しむようになり、家族で同じ番組を観る機会は確実に減っています。それでも「箱根駅伝」と「芸能人格付けチェック!」(タイトル写真右:注2)は、今でも家族で楽しめる正月の定番番組として根強い人気を誇っています。
特に「芸能人格付けチェック!」は、視聴者参加型とも言える独特の魅力を持っています。高級ワインの飲み比べ、高級食材の食べ比べ、最高級の楽器と初心者用楽器の聞き比べなど、二択(時に三択)でありながら予想以上に難しい問題に芸能人が挑戦する姿は、視聴者の知的好奇心を刺激します。出演者がチェックを終えると、司会の浜田雅功が正解を発表し、正解すれば大喜びしますが、実際には多くの出演者が間違えてしまいます。(下写真もどうぞ)
今回は、まず昨年見られなかった「格付け」の再放送を楽しみました。ほとんど全員が間違える難問があったり、最終的に多くの出演者が「映す価値なし」と画面から消されてしまったりする展開は、見応えがありました。また、個人連勝を続けていた GACKT が、メンバーの失態(マグロとカツオを間違えた)によって「映す価値なし」となってしまったのも印象的でした(今年も同じ展開!)。ここ数年、私たちも一緒に考えながら見るのが楽しく、視聴を続けている理由の一つです。(下写真もどうぞ)
納豆の格付けに挑んだ私
実は5年前、私が教授をしていた頃、学生たちが還暦パーティーの際に「教授格付けチェック」という企画を用意してくれました(下写真)。目隠しをした状態で、高級納豆と普通の納豆の食べ比べを行い、さらに混ぜる回数の違い(50回と424回(最適とされる回数))を当てるというものでした。「この程度の問題は簡単すぎる」と豪語したものの、実際に試してみると予想以上に難しく、苦戦しました。
食材を目で確認しながら食べるのと、目隠しをして食べるのとでは、難易度が全く違うことに驚きました・・・結局私は間違えてしまいました。納豆の種類はすぐ判別できたのですが、混ぜる回数の違いを見極めるのが難しかったのです。パーティーでは私が正解を導き出すと期待される方が多かったのですが、期待に応えることはできませんでした(後で考えると、自宅であまりかき混ぜずに食べていたのが原因かもしれません(笑))。この体験を通じて、「格付けチェック!」に出演する芸能人たちの苦悩がよく理解できました。(下写真もどうぞ)
昭和から平成、令和へと時代が移り変わり、テレビ番組の在り方も大きく変化しました。しかし、家族や仲間と楽しむという正月番組の本質的な魅力は、形を変えながらも確実に受け継がれています。最近では「格付けチェック!」のように五感を使って考える楽しさも加わり、今後のテレビの進化にも期待したいと思います。
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注1: YouTube「22 かくし芸 83年」よりhttps://www.youtube.com/watch?v=4P9EWTlAwfE
注2:ABCテレビ「芸能人格付けチェック!」より