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これは現代の「サンダーバード」だ! ブルガリアの超巨大カリスマ重機 (元教授、定年退職299日目)

子どもたちが胸をときめかせた「サンダーバード」

1960 年代にイギリスで制作された特撮人形劇「サンダーバード」をご存じでしょうか。国際救助隊の活躍を描いたこの SF 作品は、日本でも 1966 年から繰り返し再放送され、私たちの世代の心を捉えて離しませんでした。革新的な特撮技術、魅力的なストーリー、個性豊かなキャラクターはもちろんのこと、高度な技術と国際協力によって人類の危機を救うというメッセージは、幼心にも深く響きました。「タンタカターン」で始まる印象的な音楽も、子どもたちの間で大流行しました。

「サンダーバード」は、太平洋上の秘密基地・トレーシー島を拠点する国際救助隊「インターナショナル・レスキュー」の活躍を描いています。彼らは、最新鋭のメカを駆使し、世界各地で発生する災害や事故から人々を救出します。中心メンバーは、トレーシー家の5人兄弟で、それぞれが「サンダーバード」と呼ばれる個性豊かな特殊救助メカを操縦します。超音速救助機サンダーバード1号、様々な救助装備を搭載する大型輸送機2号、宇宙ロケット3号、小型水中艇4号、宇宙ステーション5号と、いずれも独創的なデザインと機能を有していました。

サンダーバード1号と2号(注1)


私の憧れ: サンダーバード2号とジェットモグラ

特に憧れたのは、大型輸送機の2号でした。緑色の巨大な機体にコンテナを搭載し、現場へ急行する姿は今でも鮮明に記憶に残っています。発進前のコンテナ換装シーンや、現場での展開時に伸縮式の着陸脚で機体をリフトアップするシーンは魅力に溢れていました。6つのコンテナには、ジェットモグラ、高速エレベーターカー、磁力牽引車、小型水中艇(4号)などが格納されており、中でも心を奪われたのは、地中を掘り進み、地震で閉じ込められた人々を救出するジェットモグラでした。

サンダーバード2号(注2)


ブルガリアの鉱山で出会った、現代版サンダーバード

書き始めると昔の思い出が止まらなくなってしまいました。長文失礼しました。今回ご紹介するのは、NHK BS の番組「ウルトラ重機」で特集されていたブルガリアの広大な石炭鉱山で働く超巨大重機です。番組を視聴した瞬間、その圧倒的なパワーと迫力ある姿に、「これは現代のサンダーバードだ!」と感じ、懐かしい思い出がよみがえってきたのです。きっと、同じように感じた方も多いのではないでしょうか。(タイトル写真、下写真もどうぞ:注3)

ウルトラ重機:超巨大重機がひしめく大地(注3)

番組では、1952 年に創業したブルガリアの鉱山が取材されていました。東京ドーム 5,000 個以上、広さ 240 平方キロメートルというヨーロッパ屈指の広大なこの鉱山では、低コストで大量の石炭が採掘されています。ここで活躍する2つの巨大重機こそが、「ブルガリアの超巨大カリスマ重機」と呼ばれる存在です。


120m の氷土を削りかき出す「バケットホイールエクスカベーター」

まず、石炭層の上にある厚さ 120 メートルの氷土を取り除くために活躍するのが、全長 172 メートルの「バケット『ホイール』エクスカベーター」です。1時間に 8,000 トン以上もの土砂を処理するこの重機の最大の武器は、直径 15 メートルの巨大なホイールに備えられた鋭い爪付きのバケットです。回転するバケットが土砂を削り出し、ホイール横のベルトコンベアに乗せて、数キロ先まで伸びる別のベルトコンベアへと運び出します。チェーンで作られたバケットは隙間が多い構造ですが、削り取られた土の塊がチェーンにかかることで隙間が埋まり、細かい土砂もこぼれにくくなるという巧妙な仕組みになっています。また、チェーン式であるため、軽量でメンテナンスも容易とのことです。(下写真もどうぞ)

「バケットホイールエクスカベーター」全容(注3)
石炭層の上にある厚さ 120 メートルの氷土を6度に分けて取り除く(注3)
便利なチェーンで作られたバゲット(注3)


石炭層と粘土層を掘り分ける「バケットチェーンエクスカベーター」

石炭層に到達すると、2つ目のウルトラ重機、「バケット『チェーン』エクスカベーター」が登場します。この重機は、石炭層の間に挟まれた粘土層を掘り分けるために、この土地に合わせて特別に設計されたものです。象の鼻のように伸びたバケット部分には6つの関節があり、上から吊るされたワイヤーで自在に操作することで、粘土層の部分は斜面から浮かせ石炭層だけを効率的に採掘します。すべての操作は一人のオペレーターによって、モニターを見ながら行われます。掘り出された石炭は、次々と列車に積み込まれ、数キロ先の発電所へと運ばれていきます。(下写真もどうぞ)

「バケットチェーンエクスカベーター」全容(注3)
粘土層は斜面から浮かせ石炭層だけを効率的に採掘(注3)


ここで採掘される低コストで大量の石炭は、ブルガリアの電力の実に 40 %を賄っているそうです。厚さ 120 メートルの凍土と、石炭層の間に入った粘土層という2つの難題を、これらのカリスマ重機たちは見事に克服していました。そして、人々の生活を支えるために、今日も 24 時間体制で稼働を続けているのです。まさに圧巻です。


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注1:「THUNDERBIRDS 55TH |サンダーバード55周年特設サイト」よりhttps://www.tbjapan.com/index.html#tb1
注2:YouTube「Thunderbird 2 Launches From Tracy Island - Thunderbirds」より
https://www.youtube.com/watch?v=qdTBZhNVxco

注3:NHK BS番組「ウルトラ重機:超巨大重機がひしめく大地」より

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