元教授が語る、最も景色の良いエスカレーターは?: 定年退職189日目
前回、エレベーターについて、日本と海外の違いや会社でのエチケットなどについてお話ししました。今回は、エスカレーターに目を向けてみたいと思います。ちなみに、エスカレーターという言葉は、「エレベーター」とラテン語の「階段(スカラ)」を合わせた造語です。言葉の歴史はまだ 100 年余りと比較的浅く、「言い争いが『エスカレートして』喧嘩になった」など、私たちが日常的に使う表現も、実は最近になってからのものだそうです。
エスカレーターの作法: 右か左か、立つか歩くか
私は現在大阪に住んで 25 年ほどになりますが、それ以前は関東に住んでいました。当初は関西と関東の違いに驚かされました。その最たる例が、エスカレーターで左に立つか右に立つかという習慣の違いです。大阪では明らかに右に立ちます。名古屋以東は左側が普通ですが、京都では曖昧で、何となく左が多いように感じます。その辺りが境界線なのかも知れません(あくまで私の印象です)。公式な掲示や放送では、片側ではなく横に並び、歩かないでくださいと注意喚起されていますが、長年の慣習はなかなか変わらないようです。
名古屋市では約1年前から、エスカレーターでは立ち止まって乗ることが条例で義務づけられました。これは事故防止を目的としたもので、市の調査によると、違反数は以前の3分の1に減少したとのことです。NHK 名古屋のホームページによると、地下鉄の伏見駅では AI を搭載したカメラとセンサーのシステムを導入して、違反を9割減少することに成功したそうです(注1)。このシステムは、人の動きを AI で検知し、「条例違反です。歩かないで下さい」と、やや不快感を覚えるような音声でアナウンスします。三次元情報をとれるセンサーを用いることで、リアルタイムなチェックが可能となっています。また逆に、2列になり立ち止まって利用すると「ご協力ありがとうございます」とお礼のアナウンスが流れるそうです。この試みは素晴らしいものではありますが、監視されるのは少し不安に感じますね。
梅田スカイビルの空中エスカレーター体験
これまでで最も景色がいい(高所恐怖症の私にとっては「怖い」)と感じたエスカレーターは、梅田スカイビルの空中展望台へと続くエスカレーターです(下写真:注2)。研究室の OB 会を最上階で開催した際、学生たちは「まるで空を散歩しているような気分だ」と喜んでいましたが、私はニコニコしながらも完全に恐怖で足がすくんでいました。エスカレーターを使わざるを得なかったため、幹事を少し恨めしく思ったものです(帰りは夜だったため、外の景色が見えずに済みました)。ちなみに、「エスカレーターマニアの移動の記録」というサイトによれば(注3)、このエスカレーターは世界の「死ぬまでに一度は見るべきエスカレーターランキング」で第8位に選ばれているそうです。
この機会に、大阪の名所「梅田スカイビル」についてもう少しご紹介します。タイトル写真や下写真(注2)のように、東棟と西棟2棟からなり、その頂上部を円形の空中庭園展望台が連結しています。この構造により、地震、風、振動への耐性が強化されているそうです。また、この空中庭園が地上で組み立てられ、その後吊り上げられて設置されたエピソードも有名です。展望台は屋上にあるため、梅田の高層ビル街や淀川、六甲の山々などが一望できる絶景スポットになっています。
海外からの観光客が特に多いのも特徴です。2017 年には空中庭園の入場者 150 万人のうち、113 万人が外国人観光客で、全体の約3/4を占めました。この人気の背景には、梅田スカイビルが世界的に有名な建築物として、イギリスの雑誌 DK 社が選ぶ「TOP 20 BUILDINGS AROUND THE WORLD」の一つに選出されたことも影響していると考えられます。アテネのパルテノン神殿やローマのコロッセオなどと並んで選ばれているのは驚きですね。
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注1:NHK名古屋放送局「名古屋のエスカレーター 歩く・走る人激減の伏見駅 なぜ?」より https://www.nhk.or.jp/nagoya/lreport/article/006/15/
注2:梅田スカイビル 公式ホームページより https://www.skybldg.co.jp
注3:エスカレーターマニアの移動の記録 「死ぬまでに一度は見るべきエスカレーターランキング」より
https://blog.tokyo-esca.com/entry/2017/10/01/211948
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