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アメリカ人のサプライズ好きと珠玉のサプライズ体験:元教授、定年退職104日目
前回、講演会でサプライズにうまく反応できなかった話を書きました。今回は、それとは対照的に、私が留学時代にアメリカ人の高いコミュニケーション力に驚かされた思い出と珠玉のサプライズ体験を紹介します。
留学前は、アメリカ人は世界で最も明るくコミュニケーション能力の高い国民だと思っていました。しかし、実際に滞在してみると、その認識に少し誤解があることに気付きました。確かに日本人と比較するとはるかに明るい印象ですが、アメリカ人自身は必ずしもそう考えていませんでした。彼らによれば「世界にはもっと明るい国が多く(イタリアや南米の人達でしょうか)、アメリカは真ん中くらいだ」と言います。実際、私の周りにも真面目な人々や敬虔なクリスチャンが多く、いわゆる「オタク」系の人たちも少なくありませんでした。1年ほどの滞在でしたが、彼らの言葉の意味がよく理解できました。
しかし、そんな真面目な人々でさえ(偏見かも知れませんが)、驚くほど高いコミュニケーション能力を持っているのです。その理由は定かではありませんが、多様な人種が共存する社会で生きていくために、自然と培われた能力なのかもしれません。特に、サプライズへの対応力は、見ていて気持ちがいいほどです。
アメリカ人は頻繁にサプライズイベントを企画し、その対応も非常にスマートです。タイトル写真は、私が所属していた研究室での典型的な一場面です。あるポスドクが他大学に就職することが決まったので、近くのカユガ湖畔でお祝いの野外パーティーをしました。スポーツをし、バーベキューが終わって一息ついたところで、グループのリーダー役のドイツ人ポスドク(以前私にスカッシュを教えてくれた彼です (note, 7/5))が、こっそりと白い布で覆ったプレゼントを準備しました(タイトル写真、左)。そして彼女を呼び、温かいスピーチをします。周りからはヤンヤの拍手、そして布が取り払われます(タイトル写真、右)。プレゼントは新居の庭に飾る置物だったのですが、彼女は大喜びをしていました(下写真)。そして、その自然な笑顔に他のメンバーも幸せな気持ちになりました。
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日本でも、印象的なサプライズを経験しました。私の兄弟子であるS教授の定年退職パーティーでのことです。大きなホテルで開かれた大人数のパーティーで(下写真)、私はサプライズ直前の挨拶を頼まれていました(サプライズの内容は知らされていませんでした)。ただ「絶対に時間厳守でお願いします」と何度も念を押され、違和感を覚えましたが、理由は分かりませんでした。
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私の挨拶の後、S教授と親交の深い外国人教授がお祝いのビデオメッセージを述べ始め、その様子が会場の大スクリーンに映し出されました。「そうか、アメリカからのライブ中継か、これはすごい!」と出席者は大喜びでした。「だから、時間厳守だったのか」と私も合点がいきました。
ところが、途中から違和感を覚えます。彼の背景がどこかで見た景色なのです。スピーチが終わりかけると、突然後ろの扉が開き、その教授本人がパーティー会場に登場したのです! 一瞬の静寂の後、大歓声が沸き起こりました。彼は、このサプライズのためにわざわざ日本にやって来てくれた?ようです。
S教授だけでなく参加者全員がサプライズされたのです。流石のS教授も驚愕していましたが、そこは国際派の先生のことなので、見事に笑顔で対応していました。現れた教授とハグを交わし、その喜びを表現していました。それまでの参加者の素晴らしいスピーチは(私のもw)全て飛んでしまう、見事なサプライズとなりました。
本当に壮大な演出でした。「日本人でもやればできる」と感じました(今考えると、その教授はサプライズ好きのアメリカ人だからこの案に乗ったのですね)。私はサプライズを受ける側でしたが、これまでで最も感動したパーティーの一つになりました。