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僕の困難なフェミニズム エッチなものは、エッチじゃないか!

“If you stand for equality, then you’re a feminist. Sorry to tell you.”
 人権平等を支持するなら、残念だけれど、あなたもフェミニスト

  これは女優のエマ・ワトソンが2014年に国連で行ったスピーチの抜粋である。
 僕は人権思想こそ唯一、万国共通の正義だと思っている。
 何人も国籍、人種、宗教、年齢、性別、外見によって尊厳を踏み躙られることはあり得ない。
 人権を踏み躙ることは蛮行である。この思想が生まれ、大切に育まれ、国連を中心に世界に発信されるに至るまでの先人たちの長く苦難な歴史を侮辱している。そういう連中は想像力が欠如している。
 例え実現困難な綺麗事でも、この理念の旗を掲げる世界は美しい。
 エマ・ワトソンのこの言葉は、すべての人間がフェミニズム(女性の人権問題)の当事者であることを、力強く端的に示している。
 僕も彼女の言葉を聴いてフェミニストの自覚を持った次第である。

 近年は文化面においてもフェミニズムの潮流が著しい。
 僕は韓国小説の「82年生まれ、キム・ジヨン」を読んで女性への無理解さを痛感した。
 フェミニズム(女性の人権問題)は、政治・経済の参加権だけではない。男性による女性への性搾取の問題もある。
 そして、それは性犯罪や風俗問題だけではないことを思い知った。
 男性から受けるスケベな眼差しに、女性が性別以前の"1人の人間"としての尊厳を奪われている事実。
 いくら仕事を頑張っても容姿を判断材料にされる苦痛。可愛くても、不細工でも。
 そういう苦痛を文学を通して疑似体験した。ありゃ嫌だわ。

 ハリウッドでも"ワインスタイン事件"以降、フェミニズムの潮流が顕著で、多くのフェミニズム映画が頻出している。
 「スキャンダル」という作品はアメリカの大手テレビ局の会長が、長年に渡り女性社員に性行為を強要していた事実を描いている。

 僕はこれを劇場で鑑賞した。

 会長の糞ジジィはマーゴット・ロビー演じる女性社員を自室に呼び出し、性行為を強要する。

「視聴率を稼ぐには生脚を見せるのが効果的だ。スカートは短ければ短いほどいい。」

 醜悪な顔のジジィはそう説き、彼女にスカートの裾を上げるように命令する。
 女性社員は戸惑いながらも自身のキャリアが傷つく事を恐れ、ゆっくり裾を上げていく。
 カメラはそれをじっとりと捉える。マーゴット・ロビーの艶かしい素脚が徐々に露わになる。

 僕はそれを

エッチだなぁと思った



 はっ!イカン!

 このシーンは糞に糞を塗りたくった汚ねぇ面した最低のスケベ糞ジジィが、若い女性の尊厳を剥奪する卑劣な場面なのだ。
 女性に同情することはあれど、エロい目で見るなんてもっての外。スケベ糞ジジィと同属になるじゃないか!
 しかし僕の理性はさらに掻き乱される。彼女は手を止めることなく、さらにスカートを捲るのだ。
 マーゴット・ロビーの細くも肉感のある生脚が画面いっぱいに広がり、裾は脚のつけ根まで到達しようとしている。

 僕はそれを

おぉぉおおお!!!パンツ見えるじゃん!!!

と思った。


はっ!イカン!イカン!


 別にパンツなんて見たくねぇし!見えなくていいし!見えない方がエロいし!!

 あ!違う!そうじゃなくて!!なんて卑劣なジジィだ!!最低だ!!!そう思うんだ!自分!そう思え!!

 そしてついにマーゴット・ロビーはパンツを露わにした。

見えちゃったー!!!

 う、嬉し、、、、、


く、、、


ない、、、


のか!?!?

でも

エッチなものは、エッチじゃないか!!!!!

 僕の心はぐちゃぐちゃになった。

 それ以来、自分はフェミニストとだと胸を張って言えなくなった。

 フェミニズムは困難である。

 僕には"人権の旗"が眩しくて目に入らない。


↑エマ・ワトソンの国連スピーチ全文

↑「82年生まれ、キム・ジヨン」の公式HP

↑世界に波及した#MeToo運動のきっかけ。ハリウッドの一大スキャンダル「ハーベイ・ワインスタイン事件」のあらまし

↑僕を狂わしたマーゴット・ロビーのパンチラシーンがある映画「スキャンダル」の公式HP

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