見出し画像

ピンク

最近ピンク色の私物が増えた。
iPadケースもピンク、手帳もピンク、ゲームの推しキャラのイメージカラーもピンク。最後はちょっと違うな。

ピンクを選ぶことに抵抗が無くなった。純粋にかわいいと思うようになった。逆に言うと昔はピンクを選べなかった。
それはいわゆる女の子らしい色というイメージだったから。先に言っておくと、私は体も心も女だし、特に疑う余地もない。だが、「かっこいい女の子」に憧れていた。小学校の昼休みには校庭で男子たちと戦いごっこをし、体力測定でたまたま握力が強かったのを今でも武勇伝のように語り継いでいる。
しかし、かっこいいは強いだけではダメだ。クールだけど優しい1面を持ってこそ最高にかっこいいのだ。その頃はまだ勉強が好きだったので苦手な子に教えたり、喧嘩やいじめがあった場合は割って入ったりした。もちろん正義感の強い性格がそのまま働いていたりするのだが、かっこいいと自分で思える行動が私らしく生きることだった。

そんな握力ゴリラで一見強気に見られたであろう私がピンク色のものを持っていたら。きっと男子にからかわれ、なよっとしたイメージが定着してしまいなめられるようになるだろう。そうしたら私のそばにいれば安心と思ってくれていた子達でさえ心許なくなって離れて言ってしまうかも。そうしたら正真正銘ひとりぼっち、非力で誰かに助けてもらう側になるのかな。なんて今思えば馬鹿なことを考えていた。
当時社会では多様性が認められてきてはいただろうが、小さなコミュニティの小さなガキンチョどもの間で多様性なんて話題はでるわけがない。少なくとも中学で鬱になるまでは私のピンクのイメージ、女の子のイメージはそうだったのだ。

小学校高学年になると中学受験をしなさいと塾に入れられる。勉強は好きだったが、無理やりやらされる感覚に強い抵抗を覚えたのはこの頃からである。授業が終わって、友達とふざけながら帰るのが唯一の楽しみであった。「戦隊ヒーローごっこしようぜ!」と男子が言い出した。経緯は不明、高学年ともなればさすがに幼稚な遊びのようにも思えるが、その時はとにかくはっちゃけたくて設定からノートに書き始めた。詳細を忘れてしまったのがすごく悲しいが、きっと何かを守るために結成されたチームだったはずだ。
戦隊ヒーローなら担当の色を決めなければ!リカは赤で、ソラは青で、じゃあみつおはピンク!と言われた。
なんだかすごく嫌だった。私はピンク色のような人間に見られてるのかな。今までかっこいいことを選んできたつもりだったけど。それでもやっぱり女の子と思われているんだ。いや女の子に違いないけど、なんだか嫌だった。
「ピンクは嫌だ、別の色がいい」ただの遊びなのにムキになった。かっこよくてクールなイメージの青は取られているし、優しさの緑ということでみつおグリーンが誕生した。けど、友達は私の反応を見てすごく不思議そうで、色のバランス的にピンクが欲しかったのか少し残念そうで。ただのイメージなのに、そんなの後でどんどん変わるのに。その一瞬場を微妙な雰囲気にしてしまったことが何故か頭から離れないのである。

ほら見てご覧。バッグの中にピンクがたくさん。完全に可愛らしいイメージが消えたわけじゃないけど、色味が明るくて気分が上がる色だからという理由で選べるようになった。そこに女の子らしいとかちょっと弱そうで可愛いとかは入ってない。幼い私よ、すぐに固定観念で判断するのが良くない時代になっていくよ。もっと色んな人がいて、それらを全て許そうとする時代が来る。そうすればかっこいい私がピンクを選ぶことは恥ずかしくないどころか、意識すらされなくなる。好きな色を好きな自分を選んでいこう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?