(本当に)キレてないですよ
昨今いわゆる「トーンポリシング」が話題になっているシーンを目にすることがあります。
トーンポリシングとは、
主張している内容そのものではなく、主張する態度に問題があることを指摘して内容を聞こうとしない威圧的態度の対話姿勢の問題を取り扱った語です。
・話を聞く前にまずは態度が気に入らない
・話を聞いて欲しかったら、まずは態度を改めなさい
そういった態度に潜む
ともすれば既得権益への阻害と考えられる意見を無自覚に矮小化することで限りなくノーコストで差別の再生産や強化を図っているのではないか
という政治的態度について問題定義をする言葉です。
最近の事例で印象に残っていたのが
ラッパーのZeebraさんが(女性)ラッパーの椿さんのセクハラ問題言及について
「そんなに怒んなくても良くない…?」
という発言をした例がいろんな意味で直球だな…と感じて印象的でした。
トーンポリシングにおいて
「何をそんなに怒っているの?」
といった、これに類するフレーズが決定的にひとつのキーワードになっていると言えます。
一般によく言われる論調が
「怒るのは当然だ(だから対話をするべきである)」
というものです。
そうですよね。それもそうだと思います。
ただ上記の論調に対しては私は根本的に疑問があります。
それは
「怒っている」という指摘が前提として当たり前のように受け入れられているけど、果たして本当に「怒っている」のか
というものです。
なんだか、自分からすると「怒っている」とは思えないのでずっと違和感がありました。
・本当に怒っているのか
私自身も実際に(上記のような文脈で)
「何でそんなに怒ってるんですか?」
と言われた経験があります。
これは自分の体験を踏まえた経験則ですから一般に当てはまるか分かりませんが、これを前述のような文脈で言われるのは
「立場や考え方、価値観の違う相手に対して自分の目線で捉えた違和感を(価値観の違う人にも伝わるよう自分なりに出来るだけ親切に)説明している時」
です。ほぼコレ。コレオンリーと言って差し支えない。
私の例では、
一緒にグループワークをしていた方が作成した資料が内包する偏った価値観を指摘した際に、相手の方に
「なぜあなたがそこまでキレているのか分からないのですが、私としてはこのような考え方を持って取り組んでいます」
といった内容のことを言われて
「少々感情的になってしまいすみません。ただ私としては…」
と返答をしたことがあります。
これは、「キレている」ともう前提のような感じで言われると、とりあえずはその前提を一旦受け入れないと話が先に進まないし、まあ別に怒っていると思われるかどうかはこの場面においては正直かなりどうでもいいのでとりあえず「怒っている」ことにして少なくとも話を先に進めようとしているのですが
実際、なんだろう。
損。
怒ってないですね。やはり。
そりゃあ、
誰かが坂道を下っている人がいて、反対側からその坂道を登ってきている人がいて、坂道の中間でばったり出会ったとします。景色は隠れていて、お互いの足元は見えません。そうしたら下っている方の人は
「何でそんなに大変そうな感じなんですか?」
と思うかもしれませんが、それは単に坂を登っているから大変そうなだけであって。「感じ」を出すことに重きを置いているとかではない。
今回のケースにおいても、そもそも私自身は
なるべく伝わるように、伝わってほしいという気持ちを込めてなるべく自分なりに考えたことを自分なりに詳細に言語化しているだけで
怒っていたらそうはなりません。
むしろ相手のこと、考え方や立場をイメージして想像しているから説明ができるのであってどちらかというとかなり親切な行為をしていると思います。
・そもそも
かなり根本的な話になってしまうのですが、
誰がどう見ても「怒っている」ことが明白であった場合
「何を怒ってるの?」
とは聞かないと思います。明らかにそんな悠長なことを確認している場合ではない。
空気を読むとかいう習慣が全くないというか、全方位バカ正直に生きる能力しかない私ですら、流石にめちゃくちゃキレている人に
「何を怒っていますか?」
と聞いたら火に油をそそぐ最悪の結果になるのは予想がつきます。
ですから、改めていうまでもありませんがその話法は
「怒っているのかどうか」
と質問をしている訳ではありません。
(当たり前)
・じゃあ何を伝えようとしているのか
よろこびます