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キューバ旅行記(2)~深夜のホセマルティ空港からハバナ、ホテルアンボスムンドスへ~

 少し古びた、赤っぽい内装の空港。あくせくと荷物検査等を受け、「何航空で来ましたか?」と聞かれながら荷物受けに着き、全く出て来ない荷物にイライラしながら、同じ自由行動のツアーで来た人と話していた。皆ホテルも旅の日数も予定も違う。キューバに加えメキシコに行く人もいる。入国管理で、「ハローは日本語で何ていいますか?」なんて聞かれた人もいたらしく、「適当だなあ」と笑っていた。

 必ず用意してくださいと言われた海外旅行保険の英文証明書の提示も結局求められず、税関カードも誰も見ていない箱に入れるだけであった。

 三十分近く待った末やっとコンベアに運ばれてきた荷物を取り、空港の出入り口付近で待っていた眼鏡をかけ、人の好さそうな、三十代くらいのキューバ人と合流。
 両替所で両替を済ませ、空港を出た。夜中でも暖かい大気が包んでくるし、ベンチのようなところでたむろしている市民もチラホラ。タクシーの運転手さんに挨拶して、ホテルへ向かった。

 等間隔の白い電灯。意外と綺麗で広い車道。丁寧な運転。(旅行を通じ、これがキューバでは珍しいことを思い知る)明かりの着くアパート。遮断機の無い踏切。野原も多く夜中で暗い中を、目を凝らして、少しでもキューバの景色を掴もうとする。やがて市街地に入る。

 ガイドさんの話も進む。今年はハバナ市ができて五百年記念とのこと。ガイドさんの仕事はバイトで、普段は大学の先生として日本語を教えている。(キューバ市民の懐事情の厳しさが伺える)静岡に大学時代に留学したことがあるという。
 
 市街に入って少しして、白い照明に浮かび上がる二人の黒枠の顔が出て来た。
「ここが、革命広場です」
「黒枠の顔は、ゲバラとカミーロですか」
「そうです。カミーロが分かる人は少ない。凄いですね。皆カストロですか?と聞きます。しかしカストロは自分の銅像等を作らないようにと遺言で、残しています。だからカストロの銅像や肖像画を作らない法律を作った。しばらくは作られないでしょう。まあ、百年後はどうか分かりませんか」
 静かに笑うガイドさん。石造りのコロニアルな街並みも薄っすら姿を現し、市民が歩いたり、屯しているのが見える。
 やがて海岸沿いの道路に着く。マレコン通り。歩く市民の後ろで歩道横の壁に波がぶつかり、激しいしぶきが上がる。通りにはいくつかオブジェが見えたが、ガイドさん曰く今はハバナ全域を会場に芸術祭を開催しているらしく、日本からも二人の芸術家が参加しているとのこと。
 
 黒い柵に囲まれた、石造りの要塞のような建物。その横でタクシーは止まり、石の床の上をキャリーバックを引き、ホテルへ向かうことになった。
 
 野犬が歩き、夜に浮かび上がる街を、更に中世風に引き立てる。野犬と猫がたくさん歩いているとのこと。日本には野良猫はたくさんいて、一昔前まで野犬もいたと伝えるとガイドさんは驚いていた。喉が渇いてきた。水は昼間は街中の店で買えば安いが、今はホテル備え付けのペットボトルを飲むしかなく、少し高いとのこと。
(後にこの水のことで、ホテルとトラブルになりかける)

 街角に姿を現した、赤っぽいようなオレンジっぽいような、お洒落な外装のホテル。作家ヘミングウェイも泊まった「アンボス・ムンドス」。バーにもなっている広々とした一階ロビー。ガイドさんと共にチェックインを済ませ、明々後日の十二時にこのロビー集合ということで、ガイドさんと別れた。
 ホテルのスタッフに連れられ、黒い格子型の扉が付いた、昔の時代を再現したような立派なエレベーターに乗り(このエレベーターは客だけで勝手に乗ってはいけない)部屋に着いた。零時を過ぎていた。

 ヘミングウェイの写真が額の中に飾られている天井の高い部屋。内装はスッキリしているが格式は高そうである。しかし風呂に入ってみると、トイレ、洗面台スペースと風呂を隔てるスライド式ドアが簡単に開かず苦労したり、よく見ると浴槽が泥のようなもので汚れていたりする。トイレットペーパーは流してはいけない。
(もちろんこういう状況はキューバに限らないだろうが)インフラが世界有数に整備された国から、そうではない国に来たのだという実感が湧いてきた。お湯もかなり待たないと出て来ない。後、ガイドさんによればハバナ旧市街全域の水道を工事中で、昼の十三~十七時は水が止まる、とのこと。

しかしこういった実感や情報は何一つとして、キューバへの後ろ向きな気持ちを起こせない。ある程度覚悟はしてたし、清潔で滞らないインフラだけが国の優劣を決める訳ではない。

 シャワーを浴び終え、パジャマに着替え、荷物をグチャグチャとまとめ、明かりを消しベッドに横たわる。こんな時間でも時折外から声が響いてくる。気持ちが少し高まる。だけど今はさすがに、寝ないとな。

※いい面もトラブル等も率直に書いたので少し迷いましたが泊まったホテル名はそのまま書きます。泊まって後悔は1ミリも無い良いところでしたし、トラブルも特に海外のホテルだとありふれてるかな、と思ったからです。万一トラブル等あったら伏せるかもしれません。

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