つらければつらいだけ能力を抱きしめるしかなかったあなたへ
人の数だけ、悩み苦しみは尽きないものかもしれません。
人間関係、経済状況、あらゆる失われた物事、悲惨で悲しいニュース、蘇る過去のつらい出来事etc……誰かに話す余裕も持てずに、言葉は胸のドアを叩きながら崩れ、抑鬱感や不安が続く人も多いでしょう。
しかも忙しい人が多い社会で、胸に苦しみを秘めたまま、ありったけの能力を使い、笑顔で手足をひたすら動かし、仕事や日常の課題をクリアしていく人もいるでしょう。
人に頼れなければ、自分を削って、能力で生きるしかなかった。
胸の内にたくさんの傷を刻み、歪んだ表情。家に帰って鏡を見たら、暗い影を刻んだ顔に出会うのかもしれません。いや、鏡なんて見ることもできずに、崩れ落ちることもあるかもしれません。
蓄えられた能力では、自分を癒すことはできなかった。
それでも、今こそ、自分を癒しましょうと、私自身、鏡を見ながら言いたい。
肩の力を抜き、胸に手を当て、一度は失われた声や傷を感じること。過去は変えられないが故に、自分が為してきたことは失われないということ。過去に積み上げた能力は、自分自身という揺るぎない地層だということ。
鏡を見たら、いかにもだらっとした役立たずの自分がいるように見えるかもしれないけれど、「役立たず」でいることが、自分のためにも、いつかの世界のためにもなることをぎゅっと抱きしめて忘れないようにしましょう。自らの肩を抱くように。
小さな画面を踊る光と文字の羅列からは距離を置きましょう。地層なんて無く、天と地すらひっくり返され、結局は同じ点滅を繰り返しているだけ。
夜の公園にでも行きましょう。世界中の地層の匂いをしみ込ませた風が、様々な樹齢の木々を優しく揺らし、あなたにも届くでしょう。
誰かが鳴らし続けた重低音も風に乗り耳を揺らすでしょう。世界中の過去と繋がり自分を癒し世界へと再び開かれていく「能力」が、静かに、だけど確実に呼び覚まされていきます。