詩 モノサシ
人間の精神を測るモノサシはなかなか無い
あぜ道を50歩歩く重い老婆の足取り
コンクリート舗装を50歩ヒョイヒョイ歩く私の足取り
私の精神は退屈なほど短い長さで測れるかもしれない
しかし苦労と汗滲む皮膚の向こう側の精神は
生きてきた時代と屈強さで測り切れない大きさかもしれない
憂鬱な仕事場で
要領よく脳みそをかき混ぜて出てくる彼の100語は
彼の1ミリ程度の精神から発射される省エネ品かもしれないが
どんなに俯いて考えて顔をしわくちゃにしながら話しても
下手くそな喋りにしかならない別の彼の1語は
大地を横断できるほどの距離から湧き出ているのかもしれない
封建主義も軍国主義も民主主義も資本主義も
そして最後に私達を苦しめる生産性も
全てのモノサシがひび割れながら私達を調教している最後の時代を歩いている
荒れた砂地に小さな円を描き
「僕はここで満足だもん」
と言いながら大地の全てを覆い尽くそうとするくらい我が儘な距離を持つ精神も、最後の時代の表れだろう
次の時代はあらゆる大きなモノサシが壊れていく中で
僕のモノサシと君のモノサシを見せ合いっこすることとなるだろう
目盛りの感覚も
単位の名前も
否定し合わずに見せ合えればいい
そんな「僕と君」の近くに「まだ見せたくない人」が佇んでいて
「いつか見せたい日」をじっと待っている
そんな景色もいいと思う
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