詩 沈みゆく船の上で小さな船をもう一隻浮かべ、旅をしよう
いつもの蒸し暑い空気と黒雲を塗した空。陰鬱な演出。
コンクリの道が二つに分岐している。
私は道を選ぶ前に、間違った方向に進んだと思い込む。
実際に歳を取る前にもう歳だと思う。
そして君は始まる直前に終わった気でいてため息を付く。
だが黒雲と逆の方向に全力で走る人の苦しそうな顔を笑う。
ビルに絡みつき鼻から粘つく愚かさを正面から見る人を罵倒する。
黒雲の下でわざわざ立ち尽くし首を垂れる人を気にしている。
似たような分岐はこれからも度々現れて
私はその度に負けた気になるのだろう。
でももう全てを抱きしめよう。
行ったことも無い国に行く前。
準備をしながら
電車に揺られながら
ヘッドホンを握りしめ離陸を待ちながら
まだ見ぬ他者の前で
決して旅が終わった気持ちにはならない
皮を被っていた島国がドロドロの首を露わにし
泥の涙を垂らしハラスメントを叫びあらゆる過去に
寄りかかりそのまま海へ沈もうとしている時に
最悪地図と船があれば生き延びられると知ろう
そして、旅を目のまえにして
胸を張ろう
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