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ニコレのシューベルト、シューマン

さて、まただらだらとクラシック音楽オタク話を書きますか。(本日の午後6時半には通常の数学ブログが予約投稿されます。音楽に興味のないかたはどうぞそちらをお読みくださいね。)学生時代から持っているCDの話を書きますね。フルートのオーレル・ニコレとピアノの小林道夫によるCDで、シューベルトのアルペジオーネ・ソナタ、シューマンの幻想小曲集op.73、同じくシューマンの3つのロマンスが収められたCDです。

これは、いつから持っているでしょう。駒場の大学生協で買ったことを覚えています。このCDは定価が税込み1,000円でした。そして、駒場の生協は、CDは1割5分、引いてくれました。(3枚以上だと2割、引いてくれるので、よく仲間が、一緒にCDを買おう、と誘い合っていたものです。)したがって私はこのCDを買うのに、850円しか払っていません。しかし、もとを取って余りあるCDです。

ニコレというフルーティストは、私のフルートの先生の先生でした。私の先生はかなりニコレから影響を受けた証拠に、レッスンではひんぱんに「ニコレはこう言った」というような話が出て来ました。なにより先生の音はニコレにそっくりでした。私にとってニコレは特別なフルーティストのようになりました。

このCDの特徴は、3曲ともフルートのオリジナル作品ではないことです。シューベルトの作品は「アルペジオーネ」という楽器のための作品です。もっとも現在ではおもにチェロで演奏されるのですが、ここではフルートで演奏されています。ランパルは基本的にフルートのために書かれた作品を演奏するようにしていたようですが、著書に「これはもともとアルペジオーネという楽器のために書かれたのだ。チェロで弾いてもオリジナル曲ではない。フルートで吹いてなにが悪いのだ」と書いていたと思います。私はゴールウェイのリサイタルでもこの作品を聴きました(ゴールウェイのリサイタルの記事を書いたことはないと思いますね。いずれ書きたいですね)。ともあれ、ここでニコレもこの作品をフルートで演奏しています。

シューマンの幻想小曲集はクラリネットのための作品で、シューマンの3つのロマンスはオーボエのための作品です。しかし、いずれもいろいろな楽器でやります。3つのロマンスは、ペーター・ルーカス・グラーフのリサイタルでも聴きました(これも記事にしたことのないリサイタルだと思います。いつか書ければ)。

じつは、(おそらくこのCDの購入よりあとですが。私が東大オケをやめた直後、)私はこの「3つのロマンス」をレッスンで習っています。そのころ私はようやく念願のヘインズのフルートを手にしました。H足と言われる、低いシの出る機能のついていない楽器でしたので、この「3つのロマンス」は、シの出てくる前後でオクターヴを上げるように習いました。ここでニコレはオーボエのために書かれた楽譜通りに吹いています。

このCDの聴きどころはなんといっても、ニコレの深い音でしょう。冒頭の、アルペジオーネソナタの、小林さんの前奏(これもシューベルトらしい美しい和声進行に満ちたものですね)が終わった直後に出る低いAの美しいこと!私の先生によく習った「のどを広げる」というときに出る音です。普通のフルーティストに出せる音ではありません。やはりニコレはすごいフルーティストであったのだ、と思わざるを得ません。

録音は1978年3月20、21日、石橋メモリアルホールにて、です。日本で録音されたCDですね。当時はLPレコードだったでしょうね。

30年近く前、たった850円(税込)で入手したCDですが、私の「家宝」のようになっているCDです。つくづく、こういうのは値段ではないなあ、と感じますね。

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