ラローチャというピアニスト
(以下の記事は、クラシック音楽マニア話のようで、なるべくクラシック音楽に接点のないかたにも楽しんでいただけるように努力して書きたいと思います。それから、以下の話は、憶測を含んでいます。ライターとしてはあるまじきことですが、ちゃんと調べて書いているわけではありませんので、この話を丸飲みにしないようにお願いしますね。)
アリシア・デ・ラローチャという有名なピアニストがいました。日本では「ラローチャ」と言われていたのでそれにならいますね。スペイン出身の女性のピアニストです。私が学生時代はまだ生きており、あるとき図書館で、ラローチャのロングインタビューを読みました。印象的だった言葉は「私の夫は辣腕であり、あの夫がいなければ私はこんなに有名なピアニストになっていません」というものでした。ラローチャの夫という人がどういう働きをしたのかはわからず、ネットで検索してもわかりませんので、以下の話は憶測を含みます。
ラローチャの生を私は聴いたことがありません。とにかく小柄な人であるというのはラローチャのリサイタルを聴いた人の一致した第一印象のようです。手も小さく、たとえばショパンのピアノソナタ第3番は、レッスンで弟子に教えたことはあるけれども、人前で弾いたことはないそうです。そういうハンデもあるピアニストでした。そのラローチャが世界的になったのは、「夫のおかげ」だと本人は言っています。ここまでは憶測ではありません。
じつは、ラローチャはスペインのピアノ曲で有名です。アルベニスやグラナドスといったスペイン系のピアノ曲のレコードやCDがたくさん売られていました。リサイタルでもよくやっていたようです。だいたい、「出身国の曲」というのは歓迎される傾向にあります。フランスのオーケストラはフランスの曲を録音させられ、ロシアのオーケストラはロシアの曲を録音させられます。それが売れるからです。ここまでも憶測ではありません。ここからが憶測です。じつは、その辣腕な夫という人が、ラローチャ(スペイン人)にアルベニス等を弾かせて、ラローチャを「スペインのピアノ曲の権威」みたくしたのではないか。ラローチャは、モーツァルトやシューマンと言ったスタンダードナンバーも得意です。しかし、あえてアルベニスやグラナドスばかり録音したのは、「作戦」ではないのか。もちろんこんな短い文章で、しかも憶測の話ですからなんとも言えないのですが、少なくとも私の学生時代、「ラローチャといえばスペイン」「スペインのピアノ曲ならラローチャ」という看板がすでにできていました。「モーツァルト」と「アルベニス」との一般的知名度を考えても(モーツァルトのほうがはるかに有名)、これは「アルベニスが得意です」と言えたほうがお得であることが容易に想像できます。そのへんが彼女の夫という人の辣腕なところではなかったのか。とにかく、ラローチャ自身に本当の実力がなければあり得ない話ではあります。ラローチャには本当の実力がありましたが、それを開花させる人が必要だったのです。それが彼女の夫だったわけです。
というわけで、もっと身近な有名ピアニストでこういう例を挙げることもできたのですが、身近すぎて身バレするのを防ぐために(バレてるか)、あえてラローチャを例に出しました。その夫という人は、ピアノの才能があったわけではないと思いますが、ラローチャをこれだけ世界的に有名にするという能力のある人でした。身近に「才能を開花させてくれる人」がいるかいないかだけで、これだけ違うのです。もう少し別の例も出そうかと思っていましたが、長くなるのでこのへんまでにします。繰り返しになりますが、この話は信用しないでくださいね!憶測を含んでいます!