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外山雄三を讃えて⑨:リヒャルト・シュトラウス「アルプス交響曲」

 2005年3月8日、すみだトリフォニーホールで、仙台フィルの東京公演を聴きました。第200回定期演奏会記念ということで、第200回定期演奏会と同じプログラムを、東京でも披露するということです。私の学生時代の、最後の「外山参り」となりました(このあと、2回だけ、外山雄三のライヴは聴いています)。

 まず、プログラムに、今回の演奏会は、録音してCDにすると書いてありました。迷いましたが、もしかしたら限定販売かもしれず、これを逃すと二度と買えない可能性もあると思い、申し込みました。よく、まだ演奏される前の演奏会を、録音して売ることを考えたと思いますが、じつはフォンテックから一般発売されるのでした。しかし、おかげでこの演奏会のもようは入手することが出来、二人の指揮者、梅田俊明と外山雄三のサイン入りのCDが手に入りました。

 この日のプログラムは、北方寛丈・菅原拓馬:コラーゲンⅡ、リヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはこう語った」、リヒャルト・シュトラウスの「アルプス交響曲」でした。指揮は、梅田俊明と外山雄三のふたりであり、「コラーゲンⅡ」は、ふたりの指揮者を要する曲で、「ツァラトゥストラ」は梅田の指揮、「アルペン」が外山の指揮でした。(そのころ、仙台フィルの指揮者は、このふたりでした。)

 いまでは珍しくなくなりましたが、外山雄三が、プレトークをしていました。「コラーゲンⅡ」は、ふたりの指揮者を要する曲ですが、それは、アイヴズの交響曲第4番くらい珍しいことであるとか(アイヴズの4番は、レオポルド・ストコフスキーが初演しました。最初の録音では、三人の指揮者を要しています)、舞台上に、かみなり(サンダーマシーン)が目立っているので、それはあまり気にしないでくださいとか、アルペンでは大量のホルンのバンダ(別動隊)が必要になるけれども、かつてN響でやったときは、ひとを集められなくてテープを流したとか、きょうはちゃんと本物が吹きます、とか、そんな話を覚えています。

 「コラーゲンⅡ」は、北方寛丈と菅原拓馬というふたりの作曲家の合作で、ふたりの指揮者を要し、さらに「Ⅱ」という曲名で、かなり「Ⅱ」にこだわった作品ですが、私が強烈に覚えているのは、ついに自分より若い作曲家の作品を聴くことになった!ということですね。いまでこそ、私も45歳になってしまい、私より若い作曲家、私より若い演奏家は当たり前になっていますが、当時の私は、それだけでも驚いたものです。ふたりとも、北爪道夫門下の作曲家でした。

 「ツァラトゥストラ」は、梅田俊明の指揮。きびきびした指揮が印象に残っています。第100回定期演奏会での、レスピーギの「ローマの噴水」でも(これもCD化されています。円光寺雅彦の「ローマの松」と外山雄三の「ローマの祭り」をあわせての演奏会の記録です)、映像で見て、そのはっきりした指示の出しかたに感銘を受けたことを思い出します。梅田俊明の指揮を生で聴いたのは、このときが私にとって唯一です。

 休憩後、外山雄三の指揮する「アルプス交響曲」が始まりました。これはストコフスキーがアメリカ初演した曲です(録音は残っていません)。「交響曲」とは言っているものの、単一楽章の長い作品であり、アルプスを登山するさまを描いた、大きな交響詩のような作品です。もっとも外山雄三も、作曲家として、なんにでも「交響曲」という曲名をつける傾向にありますので、ちょっとした外山雄三の仲間(?)です。何度も、ウルトラセブンの「セブン、セブン」という音型が聞こえる曲です。ウルトラセブンの作曲をした作曲家は冬木透(ふゆき・とおる)と言い、クラシック畑の作曲家ですので、ちょっとリヒャルトから借りたのでしょうか。ウルトラセブンの最終回には、シューマンのピアノ協奏曲の出だしが使われています(テレビで観ました)。なお、冬木透は、蒔田尚昊(まいた・しょうこう)という名前で、キリスト教の教会音楽を作曲しており、讃美歌「ガリラヤの風かおる丘で」はその代表作です。脱線しましたが、プログラムを見ていますと、バンダには、都響のホルンであった笠松長久さんの名前など、東京の有名プレイヤーの名前がずらっと書いてありました。曲の後半、激しい雷雨に襲われる場面では、例の「かみなり」も大活躍で、この曲を生で聴けるという大きな楽しみでした。このころには、もう私は数学で食っていく道をあきらめており、生で外山雄三を聴けるのも最後かもしれないという思いで聴いていました。終演後、バンダがずらずら出てくるのを期待していましたが、出て来ませんでした。おそらくみなさん、私服で吹いていたのでしょう。生で「アルペン」が聴けた、またとないチャンスでした。そして、その日の演奏は、録音され、CD化されたのです。

 ところで、外山雄三が指揮するアルペンというのは、じつは、あと2種類、録音が残されています。ひとつは、2012年に、音楽大学フェスティヴァル管弦楽団という、東京の8つの音大の選抜メンバーからなる学生オケの演奏会があり、それを外山雄三が指揮し、メインにリヒャルトのアルペンを演奏したのです。これはNHKで放送され、私も録画して見ました。このときは、バンダもちゃんと正装しており、終演後に、ぞろぞろと出て来ました。この日の演奏会については、生で聴いたわけではありませんが、極めて印象に残っているので、いつかご紹介できれば、と思っております。それから、NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)で聴ける、1966年のN響での演奏。このころから、外山雄三の、この曲へのアプローチは、一貫したものがあると感じざるを得ません。もしかして、これが、バンダはテープだったという、N響での演奏でしょうか?この録音は、とてもありがたいことに1つのトラックであり、トラックとトラックのあいだにギャップが生じるNMLでは、アルペンなどが細かく分かれていると、いちいち途切れて不愉快でありますので、これはありがたいです。

 やはり、外山雄三は、こういった、「20世紀ロマン派」みたいな作品がとくに得意なのであって、ラフマニノフもそうですし、リヒャルト・シュトラウスも得意なのです。外山雄三のことを「ザッハリヒ」という言葉で表現する人もいますが、外山雄三は、そのように一筋縄ではいかない指揮者・作曲家です。私のつたない言葉で、外山雄三の魅力がどこまで伝わるのかわかりませんが、なんとか感動を分かち合いたく、この記事を書いています。

 以上です!

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