「よっ」
9月に、某都市に滞在していたころの話です。ある牧師先生ととても親しくなりました。
ある日、教会の向かいにある食堂で、昼食をすませて、居候している家に戻ろうとしたときのことです。
向こうから、道の反対側を、先生が歩いてきました。先生は、携帯電話でだれかと話しながら、教会のほうへ向かっていました。
さきに気が付いたのは、先生のほうです。私の目をしっかり見て、私だということをはっきり認識なさったうえで、顔色一つ変えず、電話を持っていないほうの手を、下のほうで、ちょっと動かしました。
「よっ」という感じです。もちろん、電話でしゃべっていますから、「よっ」とも言っていませんけれども。
それが、私には、すごくうれしかったのです。この、顔色ひとつ変えない、不愛想なあいさつは、すごく親しいあいさつだと認識できたからです。「仲間だ」と思われているあいさつです。
私がどのようにあいさつをお返ししたかはまったく覚えていません。
そのあと、本来、私の住む都市に戻ってから、所属教会の牧師先生に、満面の笑顔で、ハイタッチのようなあいさつをお受けし、それはそれでうれしかったですけれど、あの、某都市で親しくなった牧師先生の、不愛想な、「よっ」というあいさつは、うれしかったなあ。
私、幼少のころの「友だち体験」が、貧しすぎるんですよね。こんな、不愛想で親しいあいさつって、空前だったのです。
ほんの一秒の、瞬間的なできごとですが、忘れられない体験になりました。
本日は、以上です。お読みくださり、ありがとうございました。
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