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もんじ焼き

 (サムネは「もんじゃ焼き」ですけど、私は今日「もんじ焼き」の話がしたいです。)

 私が小さかったころ、付近に「もんじ焼き」の店がありました。「もんじゃ焼き」ではありません。「もんじ焼き」です。どういう食べ物かと言いますと、子どもの食べ物です。駄菓子屋みたいな感じで、近所に「もんじ焼き」の店がありました。ちゃんと鉄板があるのですよ。かんたんにいうと、もんじゃ焼きの十倍くらい安い値段の食べ物で、もんじゃ焼きの十倍くらいのうすさの食べ物です。じつは、もんじ焼きを大人むけの食べ物にしたのが、「もんじゃ焼き」なのです。

 まず、焼くための液体を買います。十円から三十円くらいです。普通は十円かな。そして、具を入れるごとに値段は高くなってゆく。揚げ玉を入れるとそれで十円みたいな感じです。もんじゃ焼きは必ずキャベツが入っていて、「土手」を作っていますが、もんじ焼きはキャベツはマストではないです(ですからほんとに鉄板の上でペースト状のものを焼いている)。キャベツを入れたらわりと高く、三十円くらいしたかも。「ベビースター」も具のひとつでしたね。十円?三十円?あと、いろいろな具があって、さらに、たとえば、うずらのたまごも買って焼けるのでした。十円。それから、飲み物は粉ジュースで、「シャンパン・ソーダ」みたいな、水を入れると炭酸になるのがありました。十円。ですから、トータルで百円も食べませんので、たまに百円食べてるやつを見ると、あいつすげえな、という感じでした。

 それで、時間がかかりますから(ペースト状のものが焼けるのにも時間はかかり、また、それを食べるのにも時間はかかります)、おやつとしてはじゅうぶん、百円未満で、すっかりごちそうを食べた気になります。そういう、たのしい「もんじ焼き」。あるとき、東京で、お好み焼きを、教会の事務のかたと牧師先生と食べたことがあったのですが、私の地元ではそういう子どもの食べ物がある、という話をしたら、関西出身の美食家の牧師から「貧しい食文化だね」という冗談を言われてしまいましたが、たしかにそうかもしれません。でも、なくなってほしくないなあ、あの「もんじ焼き」。子どもにとっては、「鉄板で食べる」ということですでになにか特別な感じがしたものです。私にとっては、ソウルフードのひとつです。

 以上です。

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