知っておきたい入札用語:地域要件

公共工事の一般競争入札に参加するためには、さまざまな資格要件を満たす必要があります。その中でも特に重要な要素の一つが「地域要件」です。本記事では、地域要件の概要、適用理由、そして建設会社が注意しなければならない点について詳しく解説します。

地域要件の概要

地域要件とは、公共工事の入札において、特定の地域に拠点を有する企業のみが参加できるようにする制約のことです。この要件は、地方自治体や特定の公共機関が発注する工事においてよく見られます。地域要件の具体的な内容は、発注者や工事の種類によって異なりますが、一般的には以下のような条件が含まれます。

  • 本社(主たる営業所)所在地: 入札に参加する企業の本社(登記上ではなく、建設業法上主たる営業所)が特定の地域内にあること。

  • 営業所の所在地: 地域内に支店等の営業所を設置していること。

  • 一定期間の活動実績: 地域内で一定期間以上の営業実績があること。

地域要件の適用理由

地域要件が設定される理由はいくつかありますが、主なものは以下の通りです。

1. 地域経済の活性化

地域要件を設けることで、地元企業の受注機会を増やし、地域経済の活性化を図ることができます。地元企業が工事を受注することで、地域内での雇用創出や経済循環が促進されます。

2. 災害対応力の強化

地域内に拠点を持つ企業は、緊急時や災害時にも迅速に対応できる体制が整っています。発注者にとっては、緊急事態に対応可能な企業を選定することで、災害対応力を強化することができます。

3. 地域特有の条件への適応

地域ごとに気候や地形、文化などが異なり、それらに適応した施工技術やノウハウが求められます。地域内に拠点を持つ企業は、地元の特有条件に精通しているため、効率的かつ効果的に工事を遂行することが期待されます。

地域要件設定の実情

1. 市区町村発注の工事

市区町村の8割強が地域要件を採用しています。採用していない残り2割については、ほとんどが一般競争入札の実施件数が年5件未満で、大半の工事は指名競争入札が行われています。指名競争入札においては、おそらく指名する会社の地域性も強く考慮しているため、実質的にはほとんどの市区町村が地域要件を設定していると考えて良いでしょう。

市区町村においては、発注者である市区町村内に「本社(主たる営業所)」を置いていることが求められることが多いです。個人的には地方ほどこの傾向が強いのではないかと思います。

ただし、常に地元に本社がある会社だけが参加できるというわけではなく、地元の会社だけでは入札が成り立たないような案件の場合は、その市町村に営業所があること、その市町村がある都道府県内に営業所があることといった感じで、地域要件が緩められることがあります。具体的には以下のような場合です。

  • かなり規模が大きく、地元の業者単独では施工できないような工事(このような場合は、市区町村外の業者は地元の会社JVで参加することになることが多い)

  • 特殊な技術が求められる工事

  • 発注する業種において、地元で営んでいる会社が少ない

2. 都道府県発注の工事

47都道府県のうち46の自治体で地域要件が採用されています。採用してないのはおそらく東京都ではないかと思います。数億円規模の工事が一般競争入札にかけられるため制限していないのだと思います。ここら辺は私の推測です。間違ってたらすみません。

市区町村レベルと比べて、工事の規模も大きくなり、施工できる業者も限られてくるため地域要件については市区町村よりも緩めになる傾向があると思います。本店ではなく、営業所があれば参加可能としている所が多いのではないかと思います。新潟県では、県の出先機関が発注する工事においては、その出先機関の管轄内に営業所があることが求められている場合もあります。

3.国の工事

国の機関においては、およそ半数が地域要件を設定していません。設定例としては、地方整備局等の管内に営業所があることなどです。設定されている場合でもエリア的には十分広いので、これから入札に参加していきたい会社にとっては、事実上地域要件についてはあまり気にしなくてよいかもしれません(エリアが設定されていないとしても日本全国どこでも受注して仕事をするというのはこれから始めたい会社にとっては現実的ではないと思います)。

地域要件で注意しなければいけない点

1.設置が求められているのは建設業法上の営業所

地域要件で営業所と言えば、建設業法上の営業所です。建設業法上の営業所ですから契約権限を持った人がいないといけませんし、専任の技術者もいないといけません。つまり、とりあえず部屋を借りて、誰もいないけど、〇〇建設〇〇支店 と看板を掲げておけば、営業所になるというわけではありません。ちゃんとその営業所で仕事をしている実態が必要というわけです。

2.市町村レベルでは本社がないと厳しい

すでに述べましたが地方ほど、本社がないと入札に参加できないという条件が設定されていると思いますので、入札に参加するために支店を設置したけど意味がなかったということが起こりえます。事前に入札公告を確認し、傾向を把握しましょう。

3.設置だけでなく営業実績が求められることがある

例えば、新潟県村上市では、本社以外の営業所の場合は、設置してから5年以上経ってないと入札に参加できないみたいな要件が設定されていることがあります。市外の業者がとりあえず、営業所を設置して、工事を受注したら営業所は廃止しますみたいなことをさせないために、ちゃんとその営業所で5年間営業していることを求めていると思われます。

まとめ

公共工事の入札参加資格には、さまざまな要件がありますが、その中でも「地域要件」は特に重要です。地域要件とは、特定の地域に拠点を有する企業のみが入札に参加できるようにする制約です。これにより、地元企業の受注機会が増えることなどが期待されます。地域要件の設定と言っても、市区町村や都道府県、国の工事において、それぞれ傾向は異なっていますので注意が必要です。自社が取りたい工事の発注機関の傾向を把握した上で行動していきましょう!

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