「青天を衝け」若き渋沢栄一に学ぶ何者かになりたい人の身のこなし方
2021年の大河ドラマ「青天を衝け」は日本資本主義の父、渋沢栄一を主人公としたドラマです。9月19日の放送で、栄一がついにフランス留学での学びを活かして、武士と商人を巻き込んでコンパニーを作りました。来週からいよいよ渋沢栄一が近代日本の礎を作っていく様が描かれ、物語はクライマックスへと向かっていくと思われます。
さて、ここまでの物語で描かれていたのは、世の中の流れに振り回され挫折を繰り返す栄一の姿でした。その姿は、何者かになりたい若者そのもので、いつの時代にも通ずるような、若者特有の未熟さゆえの勢い、危うさを感じました。
渋沢栄一は埼玉県深谷の近くの血洗島という場所で生まれ、藍を育てる豪農の一家に生まれました。それまでどおりに平和な江戸時代が続いていれば、おそらく栄一そのまま跡を継いでいたでしょう。しかし、まもなく日本は西欧諸国から開国を迫られ、国内では外国への反発心が沸き起こり攘夷運動が盛んになります。
栄一も攘夷思想に傾倒し討幕派の志士となり、尾高惇忠の企てた、70人で蜂起して横浜の外国人居留地を焼き討ちするというテロ計画に賛同します。しかしその計画、一足早く江戸に赴き攘夷運動に加わっていたいとこの長七郎に止められました。長七郎は自身が見聞きしてきた経験から、いかにその計画が無謀なことで、犬死にに終わるだけだということを理解していたのです。
<栄一と一緒に血洗島の仲間(全員親族)>
渋沢喜作 ・・・栄一のいとこ。横浜居留地計画中止後栄一と一緒に江戸に行く。
尾高惇忠 ・・・尾高家の長男。通称あにぃ。みんなのお兄ちゃん的存在で横浜居留地焼き討ち計画を企てる。
尾高長七郎 ・・・尾高家の次男。剣術の達人で一足早く江戸に行き攘夷運動に参加して現実を目の当たりにしたのち故郷へ戻る。
そんなわけで横浜焼き討ち計画を中止した栄一ですが、計画が幕府にバレたため、捕縛を免れるためにいとこの喜作と共に京都へ逃げます。
この計画の中止は栄一1回目の挫折です。
しかしこの狂信的な計画がもし実行されていれば、栄一はただの悪党となるか名も知られぬ人となっていたでしょうから、長七郎グッジョブです。
このあとがすごくて、徳川慶喜の家臣に見いだされて幕臣になってしまうんです。
この手のひら返しは見事なものです。
そして今度は幕府を守るために仕え、パリ留学のチャンスも得ます。
しかしその間に幕府は大政奉還を決意し幕府はなくなってしまいました。
これが2回目の挫折。パリから帰ってきた栄一はもう隠居して農作でもすると言っていました。
私はこうした変わり身の速さや再起する力を見ていて、
「いろいろ動いて、見て学んでみないと自分の道は見えてこない。一回失敗しても別の道を探そう。朝令暮改でも全然OK!」
というメッセージを受け取りました。
若いときの渋沢栄一って、何者かになりたい普通の若者なんだろうなと思います。(商才や人を説得する力長けていたしかなりの強運の持ち主でもあると思いま根っこにあるのは自分にしかできないことで大きな影響力を持って、自分の力を活かしてより良い世の中にしたい。そんな青臭い若者の心だったんじゃないかと。
その目的が叶えられるなら、どう実現するか、つまり倒幕なのか、幕府を守るのかは手段でしかなかったんじゃないかと思います。
最近はキャリア戦略を若いうちから持っておこうとかという話も見聞きしますが、そんなうまいこといかないですよね。だって、やってみなきゃわからないこと、たくさんあるもん。
頭で考えるよりも、目的に向かってとにかく動いてみて、それでだめならこっちだ、というフットワークの軽さや頭の柔軟さも大事だよね、と思うのでした。一旦説得力と実行力なんかは棚に上げちゃっていますけれども、この変化の激しい若者の背中を押してくれる、そんな生き様だなと思ったのでした。