カーボンファイバープレート
ランニングシューズにおいて話題のカーボンファイバープレート。今回はそんなカーボンの話。
最近の記事ではHOKA ONEONEのカーボンプレートを搭載したシューズの新色が発売との記事をみました。
カーボンとは?
実は、僕は大学でカーボンつまり炭素の研究をしていたのですよ。シューズに使われるようなカーボンプレートの研究ではないですが、もう少しミクロな視点で炭素原子を上手くコントロールして新しい炭素系の材料を開発しようという研究です。
そもそも炭素原子からできる材料は色々な種類があります。
炭素原子がテトラポットのような形に結合するとダイヤモンドになったり。
六角形を作るとグラファイト(黒鉛)になったり。
その他カーボンナノチューブやフラーレンといった新素材も知られています。
またカーボンファイバー(繊維状カーボン)とプラスチックを組み合わせて織り込んだものを炭素繊維強化プラスチック(CFRP)といいます。
これら炭素材料は様々な工業製品に応用されています。
カーボンファイバー
カーボンファイバーとは繊維状のカーボンです。直径が5〜10μmの細い炭素の糸みたいなもので、この直径は髪の毛の10分の1ほどの太さです。
厳密に言えば、炭素原子同士は鉛筆の芯に使用される黒鉛(グラファイト)の結晶構造を作っています。黒鉛の結晶構造は炭素原子が六角網目状に結合した2次元のシート(グラフェン)が積み重なった構造をしています。
少しマニアックな内容になってきましたが、この細いカーボンの糸を束ねることで軽量で高強度なカーボンファイバー製品が作られます。シューズのソールにはプレート状に加工したカーボンファイバープレートが埋め込まれることで、しなやかな反発力を生み出します。
軽くて強い細マッチョ
カーボンファイバーの比重は鉄の約4分の1と非常に軽量です。それでいて比強度(重さあたりの強度)は鉄の約10倍、比弾性率(変形のしにくさ)は約7倍と、軽くて強い材料です。いわば細マッチョ的なイメージでしょうか。
これは多くの工業製品において魅力的な特徴です。重いものは強度に優れる反面、動かすために大きなエネルギーを要します。軽さと強さを両立できるのは理想的な材料と言えるでしょう。
ランニングシューズにおいて軽さはとても重要な要素ですよね。ナイキやHOKAの厚底シューズのすごい所はその軽さだと思います。
シューズの場合も軽さとクッション性がトレードオフの関係にあったものが、厚底にしたりカーボンプレートを入れたりしても、軽さを維持したままクッション性や機能性に優れたシューズであることが革新的なのです。
ここにはシューズを作る様々な技術が組み込まれているのでしょう。このような重量を増やさない技術も今のランニングシューズの進化を支える一つの要因だと思います。