07 「生徒の実態」の実態とは?
仕事柄、学習指導案を読むことが多く、多い時には4〜5本の指導案を同時に検討して、先生方に気付いた点をお伝えしています。
ただし、島田がずっと心がけてきているのは、授業を拝見するだいぶ前から、先生のお話を聞いて、ほぼ一緒に指導案を作っていく(というか題材構成、つまり「学びづくり」を行なっていく)ことです。高校の教員は、なかなか指導案を書く機会もなく、教育委員会の訪問があったり、研究会の公開授業者になったりしない限りは、学習指導要領さえ開くこともないかもしれません。それでも、ステップアップのチャンス!と思って、みなさんが書いてくれるので、ありがたいことですし、しっかりサポートしたいと思っています。授業当日にいただいた指導案に対して指導するというのは、ただケチをつけるようで、本当の意味での指導主事の仕事ではないと思っているからです。
そんな感じなので、メールや電話、LINEなど使って先生方の思いを確認したり、最近はGoogleのドキュメントを使ったりして、一緒に指導案を作成していきますが、どうしても島田には書けない項目があります。それは、
「生徒の実態」
です。これは、実際に生徒とともに時間や空間を共有している先生にしか分からん!「島田には分からん!だから、ココだけはどうにか書いてくれ〜!」と、早朝から護摩を焚く比叡山のお坊さんのように手を合わせてお願いするばかり。
どんなに言い訳されても、マジで分からんからなっ!
ってことを伝えるしかないのです。
かくして、「生徒の実態」を書いてもらうわけですが、その実態は以下の2パターンに大別されます。
① エビデンス型
年度当初の授業開きの際に実施したアンケートや、年度途中の学校評価アンケートの結果に裏付けられた「知的な」生徒の実態。例えば・・・
う~ん、めっちゃ知的。5人への手立てを頑張ろうぜ!って思える。んで、もう一つは
② 観察・情緒型
普段の授業の様子をもりもり盛り込んだり、生徒全体の印象を教師の視点で述べる「感覚的な」生徒の実態。こっちの方が多いかもしれない。
生徒のいいところをしっかり見てくれていて、うれしいな~って思います!
でもね、学びづくり(指導案作成)の視点では、①も②も不十分なんですよ!
その理由は、何のための「生徒の実態」か?を考えれば自ずと分かるはず。
「生徒の実態」の実態とは何か?
生徒の実態とは、
次の学びの手立てを講ずるために
(指導と評価の一体化の観点から)評価の観点ごとに
これまでの学びの状況を記すものである
と考えています。
つまり、生徒の実態は、授業を参観する人が「へ~、こんな集団なんだね」って思うためでもなく、教師の感覚的(主観的)な生徒の捉えでもなく、生徒自身の意識調査の結果でもないのです。もう少し具体的に言えば、
不断の授業改善の観点から、生徒の学びが充実したものとなるよう、
その手立てや工夫を講ずることに向けたものであり、
本題材に関連したこれまでの学習の状況を、
客観的な視点としての評価の観点ごとに整理しておくこと
だと考えます。ということは、
この3つの観点で、本題材に関連する学習(例えば、歌唱の題材であれば、既に実施した歌唱の題材)における生徒の実態を記述するということです。
あ、もちろん、エビデンスを軽視するわけでも、観察を軽視するわけでもありません。
でも、生徒の実態は、授業改善の手立てとなるべきものですし、そうでなければ、生徒の実態っていつも「生徒の多くが音楽の授業を肯定的に捉えている」「明るく積極的なクラスである」となってしまいますし、何の授業改善も図れません。授業改善が図れなければ、先生方が目指している「音楽好きになってほしいな~」「人生のよき伴走者としての音楽を見つけてほしい!」みたいな目標の達成はないでしょう。
というわけで、「授業改善への第一歩は生徒の実態から!」というお話でした。