09 ワークシートを考える。その1
題材名、題材の目標、教材研究、生徒の実態などについて述べてきていますが、実際の学びづくりの順序はどのように考えるか?については、下記の順が多いかもしれません。
1~3の内容は、学びづくりを考える上で大前提となるものであり、このシリーズの中の一番最初の記事に書いた「題材名」は、結構後ろに来ていることが分かります。正確に言えば、「題材名」は4番目に挙げたワークシート(以下、WSという。)と同時に考える、もっと正確に言うと、4~6は、同時に、一体的に考えていくものだと思います。
学びの地図としてのWS
以前、ある先生と一緒に、「交響曲第9番(ベートーヴェン作曲)」を扱う鑑賞の題材をつくったことがあります。知識構成型ジグソー法を学習の手立てとして取り入れることをマストとしていたので、ジグソーをどう展開するか?を主眼にして、とにかく学習指導案の指導と評価の計画を二人でガツガツつくっていったのですが、ある時、壁にぶち当たりました。そして、二人で同時に発したことが「普段、授業を考える時って、WSからつくるんですよね~」でした。
そうです!皆さんお分かりのとおり、私達の前に立ちはだかった壁は、ジグソーに重きを置きすぎることにより、生徒不在の授業となっていたことに原因がありました。そこからはWS中心に、つまり生徒の学びの姿(必要となる知識やどんな思考を誘発させるか)を最優先に考え、WSから書き起こした指導案がコチラです。
http://www.nc.music-hsg.gsn.ed.jp/?action=common_download_main&upload_id=66
この経験から、それまで何となく感じていた「学びの地図」としてのWSの役割が、より強く意識されるようになるとともに、教員が学びをつくり、支える際も、非常に大きな役割を果たしていると感じるようになりました。
実際のWSを見てみよう!
「学びの地図」としてのWSの事例を見てみましょう。以下に挙げるWSは、「レ・ミゼラブル」の「夢破れて」を教材として扱う歌唱の題材で使用したものです。研修で活用した際の、学習指導要領の内容(指導事項)や生徒が思考・判断の手がかりとするであろう音楽を形づくっている要素のメモが、クリーム色の付箋で示されています。
このWSから分かることは、ローマ数字で示したそれぞれの学習について、
以上のようなことです。
Ⅰの学びとⅡの学びが合流したところにⅢの学びがあることはもちろんですが、オリジナルの歌詞とすることで、生徒一人一人が真に伝えたい歌詞の内容(ファンテーヌの感情や思い、この楽曲に至るまでのドラマなど)を厳選しています。というのは、英語に比べて日本語は、音符に対するモーラが少ないため、歌詞を優先すると、旋律のリズムが崩れてしまうからです。こうして、歌詞を吟味したり、曲想や楽曲の構造(前半は旋律を、後半は合いの手的な対旋律を歌う)との関係に気付いたりりながら、実際に歌って試しながら思考し、歌唱表現へとつなげていくわけです。
自分のWSをこんな風に解説したことはないので、だいぶ恥ずかしいですね。
とにかく、こんな風にWSから生徒の活動をつくっていくと、学びの段階がスムーズにつながっていき、授業の参観者(例えば、管理職や指導主事(笑))から「前時と本時の学習の連続性はどうですか?」というありがた~い嫌味を頂戴することもなくなります(笑)
ただし、この学習の連続性については、学習者である生徒が一番敏感で、連続性のない学習を経験している時間は「やらされてる感満載!」となり、まったく生徒の学びにはなっていません。むしろ「なんでこんなことやらされてるん?」くらいに思っています(こういう事態はそもそも生徒にとっても教員にとっても不利益だと思うので、積極的に先生と一緒に指導案を考えるようにしています)。
WSについては、その2へと続きます。