19 ワークシートを考える。その3
過去、2回、ワークシートについて書いた記事があります。
今回は、これまでの2回と内容的に重複する部分がないよう、またそれらを総括する意味で「その3」の記事を書いていこうと思います。
思考・判断・表現を見取る「ワークシート」の好事例や作成方法について、小学校の先生からご質問をいただきました。
ワークシートをめぐる現実
ワークシートに考えをまとめたり、他者の参考となる意見を書き留めたりする時間を確保しようとすると、ともすると音楽室や教室から音や音楽が消えてしまいがちです。質問にあるように、音や音楽が溢れている状況をつくるという視点はとても大切にしたいことです。一方で、記録がないと評価につなげにくいのも現実です。そうした点では、ワークシートは必要かつ十分にコンパクトにしたいものです。また、思考力、判断力、表現力等の事項は「知識や技能を得たり生かしたりしながら」と示されていることから、それらが実現できるよう、子どもたちの思考を導く(促す)ものであってほしいと考えています。
好事例ということではないのですが、実際に授業で使っていた2つのワークシートから、ワークシートの作成方法について考えていきましょう。
思考・判断の材料を示すワークシート
こちらは、能楽、文楽、歌舞伎の音楽を聞き比べ、声や楽器の音色とそれらが生み出す雰囲気について整理する場面で用いたワークシートです。ABCには、それぞれ能楽、文楽、歌舞伎が、その下にある( )のなかには、それらの芸能が花開いた地域やその芸能の中心となった人々を書き入れます。
こうして得た事実的な知識と、聴き取った楽器の音色や雰囲気とを結びつけ、子どもたちは、
という仮説を立てることとなります。このように、子どもたちが思考・判断できるだけの必要な材料が、提示できているか?というのは、ワークシートの一番の要素だと考えます。
思考を促し、整理するワークシート
こちらは、義務教育段階で学習した『赤とんぼ』を導入の教材として、『この道』を歌唱し、『からたちの花』を観賞するという山田耕筰の歌曲を扱った題材におけるワークシートです。
I のワークシートでは、『赤とんぼ』の曲想とそれを生み出している特徴を整理しますが、口頭での説明なしで、何をどこに書けばいいかわかるか?が分かると、省いた説明の時間で、子どもたちが思考する時間を確保でき、また取組の状況を観察することも可能となります。
また、ローマ数字のⅡでは、『この道』の歌詞を朗読し、その抑揚を図示することで、歌詞と旋律との関係について気付きを促します。このようにワークシートに記入することで、思考を促したり、次の学びにつながる、思考の整理がなされたりすることも、効果的なワークシートづくり、ひいては、音や音楽に触れる意味を感じさせたりその時間を確保したりすることにつながります。
以上を参考としながら、子どもたちが音楽に関わる時間、その音楽について思考する時間、思考したことを音楽を通して確かめる時間、どれもが子どもたちにとって必要な時間と思えるワークシートとなることをお祈りしています!