動物には許された安楽死という選択

仕事ばかりの日々で考えることはどうしても動物のことばかり。

昨日は他の先生が診られていた子を安楽死した。

その先生はとても良い先生で、今の病院の中でも数少ない心から尊敬する方。
頭の回転は速く、効率が誰よりも良く、後輩を含め人に対しても自分のプライドに邪魔させることなく公平で、それでいていつも自分の心の声と向き合っている方。

オーナーさんが診察に来られて、指定されていた治療を行なっているとどことなく様子が違った。何か言いたい、けれど言っていいものか、そんな表情でなんと話しかけても黙って聞いていた。
治療が終わり、帰る間際になって今の治療がこの子の負担にならないかと相談された。
いろんな選択肢を話す中で、安楽死に触れた瞬間に顔色が変わった。待っていました、それです。という表情。
よくなる治療ではなくできる限り楽に過ごしてもらう治療を行う中で、その子はこれから今以上の苦しみが待っているかもしれない。
日々衰弱して息をして周囲を見ることしかできない子。
たくさん家で調べた中で辿り着いた安楽死という選択。

まだまだ新人の私は始めのうちは"安楽死"という言葉を出すのが憚られて、"今のうちに、できる限り安らかに逝ってもらう選択肢"と言葉を濁して話していた。それでいて、上の先生が一生懸命治療していた子、ということもありその選択肢について考えてもらい後日担当医がいる日に処置することを提案した。

翌日。
オーナー様がいらっしゃった。家を空ける時間に苦しんで亡くなっていたら後悔する。心は決めました。今日処置をお願いします、という内容だった。
オーナー様の顔を見て、私も逃げちゃいけないなと心を決めた。そして言葉からも逃げてはいけない。いけない選択肢なのではないか、心のどこかでそう考えてしまう患者さんにしっかりと"安楽死"という処置を行うこと。
即決で行うこととなった。

これまでも安楽死を行ったことはあったが、毎度なんとお声がけすべきか悩んでいた。

命を救う治療だけがすべてではない。
安楽死はその子の心を救う選択肢であり、その選択をできるのもあなただけ。

今はこの考えと言葉に尽きると思っている。

みなさんいろんな意見の分かれる安楽死ではあるけれど、動物も人も救わなければいけない現場にいて、処置を終えた後に安らかな動物の顔とすっきりとした人の表情を見ることができた日には私の心も救われる。

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