📖仕事ができるとはどういうことか？

文化祭が終わったということは、読書シーズンです！
読者の秋、芸術の秋！ということで、私の一押し哲学者である山口周さんが、楠木健さんと対談形式で仕事ができるについて語っている本について紹介します。

『ストーリーとしての競争戦略』で知られる一橋ビジネススクール教授の楠木建氏と、2017年に出版し17万部を超えるヒットとなった『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』?の著者、山口周氏による初の対談本。なぜ日本では「スキル」が偏重され、「センス」が見向きされないのか。「仕事ができる」をテーマに、世界に遅れをとる日本のビジネスの現状と、仕事において本当に必要なことを語り尽くす。2019年発売の同名単行本の新書化。

Amazonより引用

スキルとセンスの違い

センスがいいって褒め言葉ですが、スキルがいいってあんまり言わないですよね。何ででしょう。
本書ではスキルとセンスについて以下のように定義しています。

スキルはエビデンスとして言語化数値化して示すことができるということですね。一方でセンスのエビデンスは言語化数値化が難しい。(中略)
スキルには習得の方法が用意されている。スキルを開発するための標準的な教科書や教育プログラムが用意されている。これがセンスやアートとなると、じゃあどうすればいいんだという話になる。センスを身につけるための定型的標準的な方法はないわけで。

20ページより引用

以前センスを磨くタイプの本を読みましたが、センスってすごくもやっとした言葉ですよね。
尺度がないものってすごく難しい。尺度があるっていうことは、客観的で、各々がそれぞれ同じような評価を下すことができるっていうありがたいものです。
一方で、尺度がないセンスって、なんとなくなんですよね。そんな感じがするみたいな。だからこそ、鍛える方法も明示化されていない。
でも確実にセンスというものは存在するのは確かである。存在しないものに言葉なんてないから。しかも非常に大きな褒め言葉。どういうことなんでしょうね。

事後性のジレンマ

学校教育には「やればできる」という発想が蔓延っています。一方、やったのにできなかった……と思う生徒も少なくありません。
そこには、勉強の達成ってものがセンスと同様に、先見的に費用対効果があるものだったり、予定調和的なものではないからです。
勉強したものとテストとの親和性がたかくなかったり、そもそも科目との相性(引いては担当教員)興味が壊滅的な場合もあります。

面白いのは、努力の投入量がすごく大きいから大変だということじゃないんですよ。
ものすごい量の投入努力が必要だとしても、それが手段としてこういう成果なり、結果をもたらしてくれる因果関係が事前にわかれば、人は努力できるし、時間的にも耐えられるというか、続けられるんです。
事後性というのは、そうした因果関係を事前にわからないということです。

82ページより引用

試験というはいかに予定調和性を高められるか、に近しいと思います。
教員が何を重要と感じ、それを汲み取り、身につけるというプロセスですね。
それが読み取れないと、とんでもない点数を取る。期待する能力の獲得や提示は大人になっても非常に重要な役割を占めています。
だからこそ、基礎の徹底ですよね。基礎なくして成長なし。基礎って広範に渡るものだからこそ、汎用性が高いんですよね。
応用ばっかりやってる人は伸びません。特殊能力だけ高めないように。
不確実性を避けるのに必要なのは徹底した地盤です。

ワークライフバランスという流行り言葉

昨今、就職活動する学生が意識するワードが、ワークライフバランスです。
簡単に言うと、仕事と私生活のバランスを保って生きていくみたいな感じですね。残業残業みたいな働き方を否定する概念です。
私もワークライフバランスって大切だなぁと思って、修論のテーマの一つに選んだんですが、この本で面白い言及があったので、引用させていただきます。

ワークライフバランスと言いますが、ワークとライフを対立したものとして提示するという語感がある。
これはちょっと変で本来はwork as a part of lifeですよね、仕事の上位に自分のライフがある。
仕事ができる人には仕事人である以前に、1人の人間、生活者であるという意識が伝わってくる人が多いように思います。

149ページより引用

優先順位は自分の生活なんですよね。まず、ライフが先行していて、その下にワークがある感じ。
だから私も教師として働いていますが、仕事は人生の一部のように感じています。
決して人生の全てではない。今は比較的生徒と年齢も近いので、親しみを持って接してもらっていますが、もう少し年齢を重ねていくと、もっともっと距離が生まれてくるように思います。
そうすると、教員という仕事にもしかしたら魅力を感じなくなるかもしれません。
生徒の成長を助けていくという目的が達成出来れば、他の仕事でもいいかもしれないですし、それが仕事は生活の一部でしかないっていうところにも近しい何かだと思います。