時代とともに変わった嫁のあり方
いつも通り、変わりないですと言うことがいかに重要か、日常診療やっていると気づかされる。
元気な患者では毎月通院するのも億劫がる患者もいる。いつもと変わらないはずの患者が突然自分のことを話し始めるようなことが時折経験する。これも地域医療である外来診療の醍醐味がある。
80代女性
既往歴:脳卒中
脳卒中後の患者はその再発予防のため、生活習慣病の管理が非常に重要である。とりわけ高血圧の管理は通常の数値よりも厳しめに管理することが望ましい。
いつも通りの毎月の通院。いつもは変わりないですねと言って血圧手帳を渡してくる。
ただその時はいつもとは雰囲気も違わず、何の前触れもなく突然自分のことを話し始めた。
患者:私、大病をしていてこうやって外来通院していることを息子には行ったことがないんです。
私:そうなんですか、いっといたほうがいいと思いますよ。何かあっても困るだろうし。ご家族は?
患者:いいんです。家族には長男と次男がいます。長男は結婚し子供もいるし、次男は1人もんですが私は誰にも迷惑をかけたくないんです
私:でもいざってときにはやっぱり手助けが必要なんじゃないですか?
患者:先生私、4人の親を世話してあの世に送り出したんです。自分の両親も旦那の両親。4人とも全て何の援助もなく自分のお金で有料老人ホームに入れて最後を看取ったんです。私はそれが嫁だと思っているんです。ただ時代が変わってきてるんです。
私:それは大変でしたね。時代が変わっていると言うのは?
患者:長男の嫁は私にはっきり、うちの家には2人の子供がいるから教育にお金がかかるのでお母さんの面倒は一切見れませんとはっきり言われました。私のときの嫁の価値観、今の嫁の価値観と言うのは全く違うものだということを感じました。そして私はこの人たちに頼ってはいけないんだと思ったんです。だから私は子供には通院していることを使えないんです。誰かに迷惑かけると困るので。
私:私もあなたと同じような価値観で言うことが多いですが確かに現実ではだいぶ変わってるようなことが多いようですね。いろいろ聞くと今のお嫁さん、いや昔からそうなのかもしれませんが、嫁は時としてその親にすごい怖いことを言ったりしますものね。
患者:そうですね、嫁にそう言われたとき私は愕然としました。もう誰も頼れないんだなぁ、旦那も他界しているし。私が4人の親を看取った時は死亡保険金があるとか面倒を見てくれるから小遣いをもらうだとかそういう金銭的な援助は一切ありませんでした。でも嫁に来たと言う事は自分の親を含めて相手の両親を面倒みると思ってお嫁に来ていました私は。今は違う、時代が違うんですね。
私:でも私はそのような考え方をするあなたのことが素敵だと思いますよ。私の亡くなった祖母も同じような感じだったと思います。
感情、特に自分の今の思いを突然誰かに伝えたくなることがある。話の流れや文脈、場所や状況とは関係ない。ただ自分の思いをかかりつけ医である医師に伝えたくなることがある。
なんだか遺言みたいにならないといいなとまた次回の予約日でお会いできることを楽しみにしています。
お大事に。