3029th

広報PR | 映画愛好家 | 横浜国立大学卒。"日本的企業人になるにはおよそ役立たない"フロイト精神分析や映画論などを学んだ、なんちゃってシネフィル。洋画メイン、配信ドラマも貪る。史実や社会課題をテーマにした作品が好き。大卒後はカナダへ遊学。PR会社を経て、現在はとある会社広報。

3029th

広報PR | 映画愛好家 | 横浜国立大学卒。"日本的企業人になるにはおよそ役立たない"フロイト精神分析や映画論などを学んだ、なんちゃってシネフィル。洋画メイン、配信ドラマも貪る。史実や社会課題をテーマにした作品が好き。大卒後はカナダへ遊学。PR会社を経て、現在はとある会社広報。

最近の記事

“外国人”というアイデンティティが自身を”兵器”にする。映画『フィリップ』

『フィリップ』は、60年ものあいだ発禁処分を受けていたポーランドの作家の自伝的小説が基になっている、おそらく”ほぼ実話”の映画だ。 あらすじではさらっと書かれているが、ナチスの女性と寝ることがなぜ”復讐”になるのかというと、当時のナチスドイツでは外国人労働者やユダヤ人と親密になった疑いのある女性は丸刈りにされる法律があった。相手側の外国人は処刑される。銃も毒薬も必要ない、ある意味で法を逆手に取った文字通り身を挺した復讐だ。”外国人”であるというアイデンティティが自分を”兵器

    • 舞台と映画の狭間を楽しむ『追想ジャーニー リエナクト』

      ここ数年、タイムトラベルやタイムリープを使った映画やドラマがグンと増えたように感じる。 『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』(2019年)以降のMCU作品や、Netflix ドラマ『アンブレラ・アカデミー』(2019-2024年)などが顕著な例で、キャラクターが時空を越える=越えた時空の分だけ異なるセットやロケが必要で、資金潤沢な巨大プロダクションがどうしても有利なのではないか、と思っていた。 そんな凝り固まった頭にひらめきを与えるのが、『追想ジャーニー リエナクト』の「映

      • 中道はあっても中立はない。映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』

        『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は、現代アメリカでもし内戦(Civil War)が起こったら?というフィクション映画である。敵対するのは南北ではなく西部とホワイトハウスで、主人公たちはどちらの”側”でもない通信社の報道ジャーナリストだ。 中立な社会派エンターテイメント映画だと思うだろう。そう思って劇場に観に行った。でも観進めるほど頭に浮かんだのは、「中立」なんてそもそもこの世にあるのだろうか?だった。 「Press(報道)」の文字が書かれたベストを着るジャーナリストたち

        • グレタ・リーに恋をする。アジア人大人女性のための”私的な”映画「パスト ライブス/再会」

          北米での封切はわずか4館というスモール・スタートから、アカデミー賞ノミネートまで駆け上がったシンデレラ映画「パスト ライブス/再会」。韓国系カナダ人のセリーヌ・ソン監督による自伝的物語は、自立したアジア人女性たちにとって、きっと”私的な映画”になるに違いない。 12年ごとに綴られるノラとヘソンの交流、縁(イニョン)や運命の概念はとても東洋的だ。ノラはそれらを大切なものとして扱うけれど、振り回されはしない。自分の人生を自分で選んで歩んでいく。そんなノラがあまりにも魅力的すぎて

        • “外国人”というアイデンティティが自身を”兵器”にする。映画『フィリップ』

        • 舞台と映画の狭間を楽しむ『追想ジャーニー リエナクト』

        • 中道はあっても中立はない。映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』

        • グレタ・リーに恋をする。アジア人大人女性のための”私的な”映画「パスト ライブス/再会」

          投資版フランス革命「ダム・マネー」にみるコロナ禍のインフルエンサー論

          "投資版フランス革命"というワードがまさに言い得て妙!個人投資家たちがウォール街のエリート投資家たちにギャフンと言わせた実話をもとにした映画「ダム・マネー ウォール街を狙え!」。 ポール・ダノが赤いハチマキを巻いたオタク全開キャラなティザービジュアルを信じて観た。間違いなかった。 この実話、コロナ禍に起きた出来事だそうだ。たった3年ほど前に海の向こうで実際に起こった事件(革命というべきか)がもう映画化され、字幕までついて日本で公開されるのだから、そのスピード感には恐れ入る。

          投資版フランス革命「ダム・マネー」にみるコロナ禍のインフルエンサー論

          一滴の自尊心さえあれば。「哀れなるものたち」

          手持ち無沙汰な時、ついスマホのパズルゲームを開いてしまう。指定回数でクリアできないとゲームオーバーになって、またはじめからやり直す。ゲームアプリに慣れっこになってしまった日々を過ごす自分に、この映画は「人生ってやり直せないんだよなぁ」と当たり前のことを思い出させた。 人の一生は書いて字の如く、一回しかない。だから、この映画はとことん夢見的で、フィクションの極みだ。エマ・ストーン演じるベラが纏う装飾的な衣装も、エンドロールの最後に至るまで徹底された絵画のようなカラーリングも、

          一滴の自尊心さえあれば。「哀れなるものたち」

          人間は生きているだけで業が深い:「もっと遠くへ行こう。」

          シアーシャ・ローナンと「Aftersun」のポール・メスカルという、映画好きホイホイなキャスティングの「もっと遠くへ行こう。(原題:FOE)」がAmazon Prime Videoで配信開始されたので、さっそく鑑賞。 物語の舞台は、地球環境の悪化により、宇宙への移住計画がなされている2065年の近未来。移住のための調査団の一員として、田舎に住む若夫婦の夫が候補者になってしまう。 「インターステラー」をはじめ、”地球に住めなくなる未来”という設定は、昨今さまざまな映画で用い

          人間は生きているだけで業が深い:「もっと遠くへ行こう。」

          女であることに飽き飽きしたクイアの映画「緑の夜」

          「緑の夜」は、訳あり女2人の逃亡劇であり、女であることに飽き飽きしたクイアの映画だ。 流行っているから観てみようか、と何となしに観始めたNetflix「梨泰院クラス」で、私がどうにも気になってしまったのはパク・ソジュンではなく、水色の髪のトランスジェンダー役をさらりと演じて見せたイ・ジュヨンだった。(過去作品を観るほどにはソジュナももちろん好きになったが) 「なまず」も「ベイビー・ブローカー」も観たけれど、彼女の真骨頂だと思ったのは主演を演じた「野球少女」だ。そこそこの埋

          女であることに飽き飽きしたクイアの映画「緑の夜」