プロジェクトに意味を見出す仕事とは -301 CEO 大谷省悟インタビュー| WHAT IS 301 PRODUCER #1
301コミュニティの立ち上げから今日に至るまでの様々なシーンで、プロデューサーとしてプロジェクトを導き、CEOとして会社全体を牽引し続ける大谷。今回は彼に、301らしいプロデューサーとは何か?仕事の仕方や心構えを聞きました。
ーー今日はプロデューサーとしての大谷さんにインタビューしたいと思います。単刀直入に大谷さんがプロデューサーとして、していることって何でしょうか?
大谷 最近腑に落ちた言葉なんだけど。 “意味の共有” 、これにつきると思ってます。
ーー “意味の共有” ?
大谷 うん。プロデューサーとして僕ができるのは仲間を巻き込むこと。そして大切なのは、一緒にプロジェクトを進めて行く仲間の力をいかに引き出せるかだと思っていて。僕にとって、『なぜこのプロジェクトをやるのか』『それが自分や一緒に仕事をする相手の人生の中でどんな意味があるのか』『それは社会にとってどんな意味があるのか』、その価値観を共有することが全て。その作業に “意味の共有” という言葉がピッタリきたんだよね。
ーーいきなり真髄にぶつかった感じがしていますが、それって具体的な仕事としてはどんなことですか?
大谷 プロジェクトをみんなの力を借りて実行していくためにどうすればいいか、を日々考えること。起点は誰かの「やりたい!」という思い、あるいは自分自身の「やりたい!」です。でもそれは、周りの人たちをエゴイスティックに巻き込んで行くのではなく、一人一人が何に興味があるか、人生に対してどんなテーマを持っているか、ということを知った上で、その人のどんな目標をプロジェクトの中に設計できたら「やりたい」と思ってもらえるだろう、と想像できるところまで突き詰める。相手の視点に立って、プロジェクトについて考え、そこにそのコンテクストを練りこんでいく。そうすると、自分がその人になりきって「このプロジェクトをやりたい!」と思っている状態だから、ちゃんと伝えることができれば巻き込んでいけるという確信が持てます。
ーープレゼンや仕事を依頼するシーンでも同じですか?
大谷 そうだね。相手を “説得する” というつもりはないかな。この人の立場に立った時、何がやりたいだろう?どんなことが気になるだろう?と自分の中で仮説を立ててみる。創業当時は仮説の精度が低くてうまくいかないこともあった。
だからこの仮説立てにはある程度の経験が必要な部分もあるかもしれないね。その人の視点にぐるっと回ってみてどこがいいなと思えるポイントかという論理構造を話す前に作っておくことが重要だと考えてます。それが考えられれば、最後に行き着くべき論点に向けて順番を組み立てて話すだけ。80~90%結論が見えている中で相談してるから。準備の段階で、既に相手が「やりたい」と言ってくれるのがわかってる感じ。
ーーどうやってその仮説は立てるんですか?
大谷 地道だけど、ひたすら考えるしかない。相手の立場に立って、今起きていることが「いいな」と思える瞬間が描けるまでシュミレーションをする。そのイメージを見るまで。相手の視点に憑依して、「こういう論理構造であればいいなって思えるな」と納得できるところまで考えて、その順番で相手に情報を伝えていきます。
ーーなるほど。先ほどおっしゃっていた、“仮説の精度” を上げていくには?
大谷 元々、プレゼンは僕自身も決して得意な訳ではなかった。だけどやっぱり、相手の立場だとそれがどう見えるのかを考える以外にないんだよね。
実はこれ、日常のコミュニケーションでみんなやっているはず。誰かと話す時に、「今、相手が嫌だと思ったんじゃないか?」「じゃあ柔らかい言い方にしよう」「話題を一旦変えて違う順序で話そう」みたいなことを考えるよね?
プロジェクトを進めるにあたり、これが2段階、3段階、5段階と少し複雑になってきた場合、その場、その瞬間ではできないから、考える時間をとってシュミレーションを重ねておく。こういう風に考えていったらこの人はいいと思うだろうな、その為には何から話を始めればいいのか、落とし所、最後に背中を押すポイントはどこなのか、みたいなのを何段階かつくっておく。こうやって伝えれば、こう感じていくよね、こうやって気分が変化していくよね、で、ここに行き着くよね、って。
ーーその思考方法はどこからスタートするんでしょうか?
大谷 まずは、自分が何かをみて「これいいな」と思うことを論理的に分解していくというステップがある。最初こういうことに興味を持った、こういう人との出会いがあった、こういう発見があった、自分にもそれを実行するこういう機会があった、だからやろうと思った。それを分解して、自分が普段感じていることを論理構造としてつくっておくトレーニングをしていれば、他に置き換えることができる。多少やりやすくなるんじゃないかな。
僕が今、ミーティングやプレゼンで他の人よりうまくいくことがあるとすれば、それを普段から考え続けているからだと思う。ミーティングもトレーニングの場だと思ってアドリブを試してみる。実際、301を立ち上げてからその頻度は高かったから、トレーニングされて、瞬発力もついた。筋力と同じで。
僕にとって、プレゼン能力という具体的なスキルと、プロデューサーとしての価値観はかけ離れてないです。相手と “意味の共有” をどうやってするか、が根底に流れているから。
ーー「301らしい」 プロデューサーというのはどこにあらわれますか?
大谷 プレゼンスキルとか具体的に話したようなことは、他社のプロデューサーももちろん取り組んでるから。その中で “301らしさ” とはスキルと価値観のブリッジ部分にあります。誰かがやりたいことをプロジェクトにして人を巻き込み、チームを作り、社会にインストールしていくためには、説得する、騙す、誤魔化す、ではない。納得してもらう、という価値観の問題。そうすると、どうしても関わる全ての人がそれぞれ何をやりたいと思っているのかを知らないとできない。つまり、相手を知らないと “意味の共有” ができず、その人が人生を通してやりたいことの文脈をプロジェクトに練りこむことができないんだよね。なので、この価値観を丁寧に繋げていける人こそが “301らしい” プロデューサーです。使っているスキルが同じだとしても。
301で ”クライアント” という関係が存在していない理由は、最初に話した『一人一人が何に興味があるか、人生に対してどんなテーマを持っているか』というところを知っているからこそ、対等に会話ができるから。仮に、まだそこまで語り合えていない段階で仕事をスタートすることになったとしても、やるべきことは同じです。だから、一緒にチームを組む人に必ず聞くのは「あなたは何がやりたいですか?」ということ。
このプロジェクトをやる “意味” をテーブルの真ん中に置いて、関わる全ての人それぞれがやりたいと思うこと、コアにあることとすり合わせていく。一緒にやりたい!と思えるところまで導く。それが301らしさ。
その上で301のプロデューサーに必要なスキルは、相手側の視点に立って、論理的にステップ分けして、やりたいと思えるところまで落としていく考え方。それを伝える話し方。そして、プロジェクトをやる意味を自分自身の価値観と橋渡しできる人は301での仕事を楽しめると思います。
次回は、多くのプロジェクトを共にしてきたイベントプロデューサー 榛葉友輔さんと301 CEO 大谷の対談をお届け予定です。普段2人が一緒に仕事をする中で得た実感や築き上げてきた関係性から浮かび上がる、301のプロデューサー像とは?
お楽しみに。
301では、夏の新拠点立ち上げに向けて、クリエイティブ組織の常識を超え、飲食業界の常識を超えていく、新しい仲間を募集しています。詳細は301のHPをご覧ください。