エッセイ:美術館に行ってきた話
先日、美術館に行ってきた。
展示されていた内容について、どこまで詳しく書いて良いかとか、著作権とかがあまりよくわからないので、細かいことは書かないでおく。
昔から、絵を描くのが苦手だ。幼稚園くらいの頃は絵を描くのが好きで、チラシの裏にクーピーでいろいろ描いていた。
しかし、いつからか「自分は絵が下手だ」ということに気付いてしまった。小学校中学年くらいだろうか。誰かに何か言われた、ということはないけれど、たぶん教室の後ろに貼り出された自分の絵とクラスメイトの絵を見て、「あ、そんなに上手くないじゃん」と思ったんだろう。
小学生の頃は、苦手なりに頑張っていれば通知表で「よくできる」をもらえたけれど、中学生ではそうはいかない。美術の成績はいつも5段階中の3だった。
高校生になると、もはや美術を選択しなかった(通っていた高校は、芸術は音楽、美術、書道からひとつ選ぶしくみになっていた。どの高校も同じ?)。
絵を描くことは苦手だが、美術館に行くのは大好きだ。幼い頃から、遊園地やショッピングモールよりも、美術館や植物園に出かけることが多かったからだろうか。
でも、かといって美術がよくわかるわけでもない。いろいろ観たわりに、美術に関する知識は全然身に付いていない。○○派、とか言われても「?」となるし、抽象画を見ると「なんだこれ」と思うし。
以前、感想を求められてとっさに「ああー、なんか、色使いがすごいっすねぇ」なんて薄っぺらい感想をヘラヘラしながら言ったこともある。情けない…。
美術って難しいよね。
美術館は好きだけれど、楽しみ方があんまりわからない。世の中には「あなたの楽しみ方で良いんだよ」と言ってくれる優しい人が多いが、時々「そんなんじゃだめだ!絵に失礼だ!」と憤る人もいるから、注意が必要だ。何を注意するの?って話なんだけど。
さて。先日も、美術はよくわからないなりに楽しんできた。
世間は夏休みということもあり、美術館では子どもも楽しめるような展示をしていた。スタンプラリーもあるようで、男子小学生3人組が「あれがない」「あっちにあった」とか話しながら何かを探していた。いいぞ、頑張れ、少年たち。
小学生や家族連れのお客さんもちらほらいたものの、思ったより混んでいなかった。むしろ空いている。おかげでゆっくり観ることができた。
今回の展示では、子どもも楽しめるよう、作品の解説や作者の説明は低い位置にあり、易しいことばで書かれていた。少し腰を曲げて読まなければならない。それもまた良いな、と思った。
解説をじっくり読みつつ、「でもやっぱわかんねえな」と思いながら絵を観る。作者の説明を読んでいると、多くの画家が元教員だったということがわかった。意外だ。芸術家は教育にはあんまり興味がないイメージを勝手に持っていた。
ふと顔をあげると、他のお客さんもいたはずなのに、いつのまにかひとりになっていた。みんな、先に進んでいたようだ。早いなぁ。
順路にそって進みながら、さあ、次はどんな絵かな。どんな解説が書いてあるのかな、と思う。
あ。
そこで気付く。
絵よりも解説楽しみにしてるじゃん。
思い起こせば、他の美術館でも、博物館でも、水族館でも、展示物ももちろん観るが、解説や説明は必ず読んでいた気がする。
たぶん、読まないと気が済まないのだろう。そこに活字があるのにスルーする、ということができないのだ。文章があると、読みたくなってしまう。
そうか。私は美術だけじゃなくて、その解説を読むのが好きだったんだな。
なんとなくすっきりする。
美術館が好き。絵を観るのも好き。
解説を読むのはもっと好き。
こういう楽しみかたもありなんじゃないかな。
わりとそういう人も多いんじゃないかな。
私は美術館が好きだ。
県内には他にも美術館があるから、時間があったら行きたいなあ、とぼんやり考える。
今度はどんな解説に出会えるかな。
※エッセイ書いてると「で、結局何の話?」になりがち。