【 終末トレイン 滋賀へいく!】 西武新2000系(2両編成) 近江鉄道へ譲渡
終末トレイン “終わんない旅” への第二章
2024年9月9日。2000なんとか…もとい西武新2000系の2両編成2本(2451F・2453F)が、冬に検査を受けたばかりにも関わらず、なぜか武蔵丘車両検修場へ再入場しました。突然かつ謎の入場に疑問を浮かべる鉄道ファンが多く居た中…
9月25日に小手指へ回送され、9月27日には譲渡の際の甲種輸送用と見られる機械が車内に搭載されている姿が目撃されました。
そして、10月16日に(西武車の牽引用車両)新101系 263Fとの連結が確認された後、10月19日未明に(263Fの牽引で)小手指から回送されています。
そして、2451Fに貼り付けられた、甲種鉄道車両輸送表の行き先(着駅)が「近江鉄道(株)彦根車両区」と記されていたことから、近江鉄道へ譲渡されることが正式に判明しました。
近江鉄道ではどの車両を置き換える?
2000系の2両編成の近江鉄道への譲渡が実現しました。2000系の2両編成は10本が在籍しています。
一方で、近江鉄道の800系・820系(2両編成)の本数も10本です。800系・820系は元西武401系で、製造は56〜59年前の1965〜1968年。老朽化が進んでいます。
近江鉄道の2両編成の電車は全部で18本居ますが、そのうち「移動等円滑化基準(車両などを新たに整備・導入したり人を乗せて走らせたりする時に義務として守らなければいけないバリアフリーの内容)」に適合するのは7本で、古くなった電車を置き換える時には基準に適合させたいとも言っていました。
そして、近江鉄道の電車を7本と11本に分類すると、適合する7本が300形+100形、適合しない11本が900形+800・820系と分けられました。900形は近江鉄道へ来てまだ10年ほどなので、置き換えるなら800系・820系の10本が選ばれるでしょう。
ですので、西武2000系の2両編成の10本全てが近江鉄道へ譲渡される可能性もあります。もしも10本全てが譲渡されれば、アニメ「終末トレインどこへいく?」に出てくる電車、“アポジー号” こと2463Fも滋賀県で第二の人生を送ることになります。
当方でも半年前に「西武2000系の2両編成は近江鉄道へ譲渡される、と推測されるだろうということかと思われる」と予想していましたが、鉄道ファンには概ね推察できる内ようにゃうにゃだったようにゃうにゃうにゃ…
「4ドア車」でも、譲渡が実現したワケ
近江鉄道にとっては「待ちかねた…新入り!」と言えるでしょう。しかし、これまで西武鉄道から譲渡された電車は、そのほとんどが地方の中小私鉄に適している3ドア車でした。
近江鉄道800系・820系と同じ改造元の、西武401系(→三岐101系)を譲り受けた、三重県の三岐鉄道では、置き換えのタイミングは同じでありながら、西武2000系ではなく静岡地区で315系へ置き換えられた、JR東海の211系5600番台(3ドア車)を譲り受けています。
ではなぜ、近江鉄道は4ドア車の西武2000系を選んだのでしょうか。それは、近江鉄道が西武グループの系列会社であり、経営再建にあたって鉄道車両の提供を含めた支援を西武鉄道に求めたからです。
ただ、西武鉄道には2000系の他にも、東急や小田急からやってきた「サステナ車両」に置き換えられた、3ドア車の新101系・2ドア車の4000系が居ます。
しかし、担当者がニュースポストセブンの記事で「近江鉄道も含めて他社への譲渡の予定はありません」と否定していました。
そして、他に余っていそうな西武の電車となると、どうしても4ドア車の2000系しか無かったのでしょう。近江鉄道から「比較的若い中古車両が欲しい」と言われても、西武鉄道にとっては「パンが無ければお菓子をお食べ〜」もとい「3ドアが無ければ4ドアをお買い〜」…じゃなくて!まさにこれこそ「背に腹は代えられぬ」ということで、近江鉄道側もこれを受け入れる形で譲り受けたものとみられます。
しかし、どう考えても近江鉄道の需要では4つもドアは要りません。ましてや、近江鉄道では前降り後乗りのワンマン運転を行っており、使うのは前と後ろの2つのドアだけです。
同じ4ドア車で数年前まで渋谷の地下を走っていた、元東急8590系の17480系を譲り受けた富山地方鉄道では、4つのドアのうち中間の2つのドアを撤去し、そこに大きな鉄の板を付けてドアを塞いでいます。しかも広告をつけて宣伝もできて一石二鳥。
近江鉄道へ渡った2000系も中間ドアを塞ぐ手段を取るかもしれません。その暁には中間ドアにゴーヤの蔦を生やしてほしいところ。
チョッパ制御は「見納め」に?…なりませんでした
西武2000系は界磁チョッパ制御装置を搭載しています。しかし、近年は部品の生産終了により搭載車の置き換えが各地で相次いでいて、2000系もその一例に当たっていました。また、2両編成の2000系は、1M1T車(モーターが片方にしか無いの)で非力だったため、一部の回送列車を除き2両単独での走行を避ける傾向がありました。
更に、近江鉄道線鉄道事業再構築実施計画(案)には「VVVF車両の導入検討・中古車両の購入」とあり「VVVF車の譲受 or VVVFへ改造した上で譲受」が見込まれていた中で、非VVVF(チョッパ)車の新2000系…つまり後者が選ばれました…が。
後日、乗りものニュースの取材にてチョッパ制御のまま運用することがわかりました。また(社長のお話も踏まえると)、ワンマン化改造・バリアフリー対応・保線向け観測カメラの導入が改造内容に盛り込まれるようです。観光列車の導入についても研究を開始するとしました。
人は変わる。世界も変わる。電車も変わる。ずっと同じものがあるか?永久や不滅など存在しない。